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未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

ポイント会員向けのサービスはどこまで進化するのか

ICT・メディア産業コンサルティング部 安岡 寛道

#デジタルマーケティング

2017/02/13

コンビニやスーパー、飲食店などで、私たちが支払いをすれば、必ずといってよいほど付いてくるポイント。「あって当たり前」になりつつあるポイントサービスは、より複雑に進化しています。

ポイント発行額は2020年に1兆円超

買物をすれば、商品・サービスの値引きや引き換え、電子マネーなどへの交換に使えるポイント。飲食店のスタンプカードから、業種の異なる複数のお店でもらえる共通ポイントまで、私たちは毎日さまざまなポイントサービスに触れています。

NRIの調査によれば、主要企業の年間最少ポイント発行額は、2014年度で8,495億円。2017年度には9,399億円に、そして2020年度にはおよそ1兆1,000億円にまでなると予測しています。ポイント発行額を業界別に見ると、一番多いのは「クレジットカード」。次いで「家電量販店」「携帯電話」。2020年度までには「クレジットカード」「インターネット通販」「コンビニエンスストア」のポイント発行額が大きく伸びる見込みです。

表:2014年度の国内11業界のポイント・マイレージ年間最少発行額

始まりは「顧客を囲い込む」会員制サービス

長年、企業のポイントサービスを見続けてきたNRIの安岡寛道は「ポイントサービスは、事業者が顧客を囲い込む会員制サービスとして始まったもの。それが今日大きく進化した」と言います。安岡によれば、もともとポイントサービス導入の目的は、事業者目線で段階的に、(1)顧客囲い込み、(2)優良顧客化(購買意欲促進)、(3)新規顧客獲得、(4)相互送客、の4つでした。

「すでに、Tポイントに代表される共通ポイントによって、相互送客も達成してきました。もはやポイントは、あることが当たり前のサービスになっています。個々の事業者が個別に導入・提供していたポイントは、Tポイント、Ponta、楽天ポイントのような共通ポイント事業者と組んで提供することが多い時代に移っています」

ポイントサービスから決済・金融サービスへ

今後、共通ポイント事業者が目指すのは、マーケティングの基盤のみならず、金融のビジネス領域だと安岡は言います。

「まずは決済です。例えばTポイントはTマネー、PontaはおさいふPontaを、楽天は電子マネーEdyを買収して楽天Edyとしてすでに発行しています。LINEもLINE Payの提供を初めました。すべて決済とセットになったサービスです。銀行口座などに紐付く顧客の情報を抑えることで、顧客が持っているお金をより使いやすくする。その先に見ているのは、さらにお金を使ってもらう、貸金などの金融サービスです。楽天がイーバンクを買収して楽天銀行を始めたように、他社もこれからは金融に絡んだサービスを展開していくと思います」

こうしたポイント事業者は、顧客の個人情報はもとより、購買履歴、移動履歴、資産情報など、さまざまな情報を取得ています。マーケティング関連のみならず、さらに進めば、本人確認代行などの認証サービスにも発展していくのではないかと安岡は考えています。

顧客へのインセンティブ提供と顧客情報の取得

顧客情報を抑えて、いずれは金融の領域に――。そのため、共通ポイント事業者による、それぞれの「ポイント経済圏」拡大に向けた複雑な覇権争いの時代に入っていると安岡は見ています。ポイントは「あって当たり前」になり、かつ、主要な共通ポイント事業者が「経済圏」を抑えつつある時代に、個々の事業者はポイントサービスにどう向き合っていけばよいのでしょうか。

「ポイントサービスが複雑に発展してわかりにくくなっていますが、ポイントサービスの本質は会員制サービスです。その目的は、顧客の囲い込みと、顧客の情報を取ることであって、大切なのは、顧客にインセンティブを提供するポイントと、顧客を識別し、情報となるIDの取得を分けて考えることだと思います。IDは、キーとなる識別子と、カードから生体までの認証媒体を踏まえ、取得情報と他の情報とのマッチング、AI技術の進化などによって、今後は様々な対応ができるようになるでしょう」

自社の顧客戦略において、会員制サービスをする必要があるのか。それで何が得たいのか。実は、この点をあまり考えず、大手の共通ポイント事業者と提携してすべて任せてしまい、本来なら自社に集まるべき顧客情報が、共通ポイント事業者に取られている企業は意外と多いと安岡は言います。ポイント付与によって多くの顧客を呼び込むことが目的の事業者ならそのままでもよいでしょう。しかし、自社の優良顧客把握や、新規顧客向けにいずれはプロモーションや商品開発などを展開したいと考える事業者ならば、そのまま丸投げではポイントサービスを提供しているメリットは得られないでしょう。

さて、ここまでは事業者の視点でポイントサービスを見てきました。最後に、ポイントを付与される消費者の立場から見た、賢いポイントサービスの利用方法は?

「日常の行動範囲、動線上において、利用するお店やサービスを集約すること。会社の近くのコンビニならあそこ、家の近くのドラッグストアならここ、というように、よく行くお店を絞り込んでリピートする。そのほうがポイントもたまりやすく、リアルにもデータ上でも優良顧客として見てもらえるようになります」

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