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企業のガバナンス改革は少しずつ始まっています

経営コンサルティング部 内藤 琢磨

#経営

2017/03/27

2015年6月に、東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」の適用を開始しました。これを機に、日本の上場企業はグローバルスタンダードを見据えながらも自社にとって相応しいコーポレートガバナンス改革に動き始めていると、NRI経営コンサルティング部の内藤琢磨は感じています。「コード」とは何なのか、そして企業のガバナンス改革の現状はどうなっているのかを聞きました。

ガバナンス改革を行うためのチェックポイント

――そもそもコーポレートガバナンス・コードとは何でしょうか?

簡単に言えば、企業がガバナンス改革を行うためのチェックポイントです。コーポレートガバナンスは、経営や組織運営、情報開示のあり方など、企業を統制する仕組みのこと。特にグローバル市場で勝負する日本企業は、グローバルスタンダードを見据えたガバナンスが求められています。そのようななか、自社はコーポレートガバナンスに対してどのような考えを持ち、どんな取り組みをすべきか、その際の確認の目安となるのがコーポレートガバナンス・コードだととらえています。現在、73項目が設定されています。

――日本企業は、コードを活用して改革に取り組んでいるのでしょうか?

もともとコーポレートガバナンス・コードは、安倍内閣の「日本再興戦略」の一環として策定されました。コード適用に強制力はなく、ガバナンス改革に取り組むかどうかは、各社が置かれた状況で判断することが求められています。しかし、グローバルな資本市場で勝負していく企業なら、自社はどうしたいのか、少なくともコーポレートガバナンスに対する基本的な考え方の意思表明は必要です。

過去のガバナンス改革は「守り」中心、これからは「攻め」

――日本企業は過去にもガバナンス改革に取り組んではいませんか?

確かに、過去にもガバナンス改革に取り組んだ企業はあります。2004年には東京証券取引所も「コーポレートガバナンス原則」を策定しています。しかし、過去のガバナンスは「法令遵守」や「リスク回避」のための、いわば「守りのガバナンス」が中心でした。株主が間違いを犯したり暴走したりする経営者を交代できる体制を構築し、企業の持続的成長を図る発想でした。

――これからのガバナンス改革は、従来とは異なるのですか?

大きく異なります。ひと言でいえば「攻めのガバナンス」です。策定されたコーポレートガバナンス・コードをうまく活用することで、経営者の積極的なリスクテイクを促し、日本企業の「稼ぐ力」を強化していく改革です。海外で売上を伸ばしたり、新しく商品・サービスを開発したりするには、従来とは企業価値の生み出し方を変えなければならない。そのために、会社のあり方自体も見直し、自律的に成長・進化していく体制にしていこうという考え方です。

独立社外取締役導入が8割に

――コード適用から1年以上たちますが、企業に変化は起きましたか?

コードが適用された2015年6月以降、東証上場企業は、コードの73項目のうち11項目について、総会後6ヶ月以内に自社の立場を開示する必要がありました。これをきっかけに改革に向けて動きが始めていると実感しています。顕著な変化としては、独立社外取締役を2名以上選任した企業が、1年前の2割から8割に増えたことでしょう。経営戦略やビジネスモデルの意思決定を行う場に、社長に否を出せる議決権を持つ役員が2人以上いる会社が8割に及ぶ状況は、今後のガバナンス改革に影響していくと思います。

コードの適用でガバナンスの潮目が変わりつつあることは確かである一方で企業価値向上に向けた取組は「まだこれからの状況」

(※1)日銀資金循環統計(2015)よりNRI試算

(※2)2015/1~2015/6にて中期経営計画を公表した企業121社のうちROE目標を公表した企業割合

※1,2以外の出所:2016年1月20日東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」

――ガバナンス改革によって、具体的には何が変わりますか?

例えば、2003年に公的資金を注入された株式会社りそなホールディングスでは、経営者や経営層を大幅刷新して「金融サービス業」への業態転換を図り、「平日17時までの営業」「24時間対応のコールセンター」など顧客の利便性を追求したサービスを実現、親しみやすい「金融サービス業」としての銀行グループに生まれ変わりました。2015年には注入された公的資金も早期完済しています。この改革実現には、他業界から着任した新しい経営者の手腕と、製造業・小売業・サービス業出身の元経営陣を社外取締役に選任した体制が、大きく貢献していると見ています。このケースはガバナンス改革による「新たなビジネスモデルへの転換」「企業価値創造」の好例ではないでしょうか。

新しい企業価値の創造には必須

――ガバナンス改革には時間がかかりますね。

そこが難しいところです。コーポレートガバナンス改革は、すぐに成果が表れないうえに、経営者や社外取締役を含めた経営層にはかなりの労力とコミットメントが求められます。いづれにしても新たな企業価値を生み出すには経営陣の当事者意識が必須となります。

――その際に、コーポレートガバナンス・コードの視点が役に立つと?

そうです。コード適用を機に、自社におけるガバナンスの総点検を行い、何から着手するのか優先順位をつける。例えば、10年後に海外売上比を50%台まで拡大させようとするなら、そうしたビジネスモデルの実現のために現在のガバナンス上の課題は何なのか、コードを参考にすれば改革の視点が整理しやすくなります。まずは社外取締役を含めた当事者が「ガバナンスの基本的な考え方」を議論する場づくりが、すべての出発点になると思います。

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