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NRI トップ NRI JOURNAL AI脅威論から「あなたの暮らしのためのAI」への移行に向けて

NRI JOURNAL

未来へのヒントが見つかるイノベーションマガジン

クラウドの潮流――進化するクラウド・サービスと変化する企業の意識

AI脅威論から「あなたの暮らしのためのAI」への移行に向けて

コンサルティング事業本部 プリンシパル 安岡寛道、コンサルタント 松村直樹

#AI

2017/06/14

来店した人を案内するロボットや質問に返事をくれる携帯電話、医療の現場で治療方針を提案するなど、さまざまな分野で活用される人工知能(AI)。でもどこか遠い話に聞こえる人や、自分の仕事が奪われるのでは、と不安に思う人も少なくありません。AIが本当に社会に浸透していくには、何が課題なのでしょうか。

 

 

AIの本来果たすべき役割を再考

 

AIと聞くと「効率化」「AIは人の仕事を奪う」といった思いを抱く人がいます。ですが、AIが本来果たすべき役割は「人の意思・行動を決定するためのサポート」です。最終決定は人が行い、AIを活用することで社会全体が豊かになっていく、という意識を一人ひとりが持つことが大切です。

 

AI活用に必要なものは「ユーザー視点」「データ連携」「中長期」

 

近年、日本でもさまざまな企業がAI活用を検討・実施していますが、社会に広く普及しているものはあまりありません。多くの場合、具体的にどうAIを活用するかが定まらなかったり、データの蓄積やユーザーが使うための技術改良を行う段階で停滞してしまっています。

 

うまく進まない、その主な原因はAI活用に取り組む方法にあります。多くの企業は個別にAI活用を進めているため、活用方針はサービスを提供する企業の視点に偏りがちです。結果、実験ではうまくいっても、社会に展開する段階でユーザーに拒否されてしまうことがあります。本来はユーザーの視点でどういったAIが必要か検討すべきです。また、企業1社での開発や展開には限界があります。AIは機械学習といって多くの情報を処理することで、より確かな選択肢を人に提供することができるようになります。たとえばAIで自動車を運転するためには自動車の情報だけでなく、保険、道路交通情報などさまざまな情報が必要ですが、膨大なデータを収集するには業界をこえた連携が必要となってきます。こうした連携が進まないこともAIの活用推進に影響します。また、短期的な費用対効果を求めすぎることで、将来を見越した中長期的な開発、投資が難しくなってしまうケースもあります。

 

 

暮らしに広がるAI

 

NRIは、産業技術総合研究所(AIST)の人工知能研究センター(AI研究センター)とともに、AIが普及した社会の調査・研究を行っています。そこでは、AIがどのように生活と関わっていくかを紹介したコンセプトムービーを作成し、AISTが公開しています。

 

2023年を想定したAIを活用した生活・日常のコンセプトムービー

 

※NEDO委託事業「人間と相互理解できる次世代人工知能技術の研究開発」による制作

 

近い将来、AIが生活をあらゆる面でサポートするように

 

コンセプトムービーでは、ある家族の1日の暮らしをAIがどのようにサポートしているのかを表現しています。例えばAIは子どもが熱を出した場合、感染症の流行具合、子どもが保育園を休んだ際の影響を考慮した上で、おすすめのベビーシッターの紹介まで行います。親はAIから提供された情報を参考に、子どもを休ませるかどうか、どのベビーシッターに依頼するかなどを決めていきます。ムービーでも、物事の最終決定は人が行い、AIはその決定をサポートする点を明確に伝えています。そのほかにも、買い物、宅配、美容サービス、旅行などさまざまな場面でAIが活用されている様子が紹介されています。

 

AIによる市場は数十兆円規模にも

 

NRIの調査によると、今回のムービーに登場した生活サービスの市場だけで現状約80兆円になります。AIの活用が進むことで、これらの市場に新たなビジネスが生まれることになります。

 

表:コンセプトムービーに登場したサービスの市場合計

 

 

さらに、介護や育児など、これまで主に行政が担ってきた領域で民間との連携・AI活用が進むことで新たな数十兆円規模の市場が創出される可能性もあります。

 

現在、産業技術総合研究所では異業種間の連携強化のため、「産業技術総合研究所AI技術コンソーシアム」を活動しており、NRIも協力しています。

今後、こうした企業・業界を超えた活動が進むことで、AIが一人ひとりの生活をあらゆる場面でサポートし、生活が便利になるだけでなく、より人と人との関係性が重視される社会が訪れることが期待されます。

関連資料

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