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RPAの効果的な導入と失敗しない運用のポイント

産業ITコンサルティング部 市原 雄太

#DX

#AI

2017/11/01

国を挙げて働き方改革が進む中、業務の効率化や自動化に対する要請はますます高まっていくと考えられます。そこで、いま着目されているのが、RPA(Robotic Process Automation)という人間が行った実際の操作を記録して再現する、いわば業務をロボット化(自動化)するソフトウェアです。

 

あらゆる業界に普及するRPA

 

RPAの得意な領域は、システムからのデータの取得、システムへの入力作業、正誤チェックなどの単純業務です。操作を記録するという点はMicrosoft Excelのマクロ機能に似ていますが、マクロ機能は1つのアプリケーションソフト内に閉じられた処理であるのに対して、RPAでは複数のシステムやアプリケーションをまたいだ処理の自動化が可能です 。

 

 

導入のために留意するべき3つのポイント

 

生産性向上を目的としてRPAに期待する企業が増えていますが、導入や管理の仕方がわからないという声も多いのが現状です。RPAを導入するうえで留意するべき3つのポイントが、野村総合研究所(NRI)がさまざまな企業と行ったPoC(Proof of Concept:概念検証)から見えてきました。

 

①PoCによる効果検証

ビジネスIT(事業拡大を目的とするIT)の開発では、プロジェクト全体の構想策定時に、その実現可能性を簡易なモデルによって確認するためのPoCを行うことが多いです。RPAの導入でも、まずPoCとして部署や業務を限定して簡易なロボットを作成し、その効果を確かめながら適用範囲を広げていくべきです。PoCで効果が明らかになれば、導入範囲を拡大するための経営層の承認も得やすいという効果もあります。

 

②業務の標準化と利用部門の参加

RPAによって業務を自動化するためには、業務のルールやロジックが明確であることが望ましいのです。しかし、実際には、担当者ごとに判断基準が異なり、マニュアルがなく標準化もされていないケースも多くみられます。その場合、利用部門のプロジェクトへの関与度を高め、業務の標準化の必要性を理解してもらうことが重要なポイントの1つになります。

 

③注意深いツール選定

導入に当たってどのツールを活用するかも重要です。ベンダーの資料やデモだけに頼ると、複雑なロジックも容易に自動化できてしまう印象を受けがちです。多くのツールは、PoCという位置づけであれば1~2カ月は無料で利用できますので、実際に自分で触れてみて比較することが望ましいです。

 

RPAを効果的に運用し続けるための4つのポイント

 

RPAの活用に必要なもう一つの要素は、導入後の運用について、ガバナンスやマネジメントを通常のシステムと同様にしっかりと検討するということです。ここでのポイントは4つ挙げられます。

 

①各組織の役割分担

ロボット導入における主なタスクとしては、導入自体の意思決定、開発、開発後の運用監視、インフラ整備であり、どこまでを利用部門が行うのかを決定する必要があります。現実的には導入の意思決定や開発を利用部門が行い、開発後の運用やインフラ面は情報システム部門が担当する事が多いです。

 

②ルール整備

ルールを決めずに導入すると利用部門が自由にロボットを作りかねません。そのような場合、既存システムに負荷をかけるようなロボットを作成してしまったり、担当者がいなくなってブラックボックス化してしまったりするリスクが考えられます。導入時の判断ルールやドキュメント化ルール等のルール整備が重要です。

 

③開発生産性を高め続ける仕組みづくり

RPAは通常のシステムよりも簡易とはいえ、ある程度の習熟が必要になります。そのための教育方法や資料の整備や教育者の育成も必要です。さらに、技術知識がないと実装が難しい場合もあるため、頻度が高く詰まりやすい処理については、処理部分のパーツをライブラリ化することが有効です。随時追加・共有する事で、同じ箇所で別の人がつまずくのを防ぐ事ができ、開発の生産性は大きく向上します。

 

④障害対応を見据えたロボット化

RPAを適用した業務についても、通常のシステムと同様に障害対応ルールも必要になってきます。障害対応の体制が取れないのであれば、RPAの適用自体を避けた方が良い場合もあります。

 

RPAがビジネスを変えていく可能性

 

現状、RPAはルールが明確な業務への適用が主になりますが、将来的にはAI等と組み合わせる事で複雑な判断もこなせるロボットの実現が可能だと考えています。実際、ある企業との共同研究の中では、複雑な判断を要する業務において、AIが非定型なデータを学習し、RPAが得意な定型の形に加工する仕組みを検討しています。RPAは簡易である一方でそれだけでは限界がありますが、その他の技術との組み合わせで、より広範囲の業務自動化を実現し、競争力を生む仕組みとして期待が寄せられます。

 

 

ナレッジ・インサイト ITソリューションフロンティア

特集:デジタル化に向けて企業が取り組むべき3つの課題

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