デジタル時代の企業の品質管理
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2017年12月04日

デジタル時代の企業の品質管理 執行役員 品質監理本部長 西本 進

デジタル時代といわれて数年が経つが、最近は新聞でもIoT、AI関連の記事を目にしない日はない。一方で、働き方改革や人口減に対する議論も盛んである。このような時代に、企業が提供するサービスの品質を維持、向上していくためにIT関連で留意すべきポイントについて考えてみたい。

重要性が増す情報セキュリティ管理

インターネットが本格的に普及して以降、最も激変したのが情報セキュリティ対応である。ネット上で個人情報を扱うようになり、個人情報保護法が施行され、企業でも情報の漏洩対策が強化されてきた。スマートフォンの普及やIoTの進展により、漏洩リスクがさらに増大している。
また、企業システムや個人を狙ったサイバー攻撃は年を追うごとに増加し、最近は身代金を要求されるケースも発生している。2020年の東京五輪・パラリンピック開催を控え、さらなる増加が予想される。ひとたび情報セキュリティ事故を起こしたりサイバー攻撃に遭ったりすると、企業活動の根幹が揺るがされるため、情報セキュリティ管理の重要性はいっそう増している。

品質維持のため、IT人材の育成が重要課題

一方で、技術革新も年を追うごとに進んでいる。企業が提供するサービスを支える情報システムは、メインフレームからオープン、Web化の流れを経て、クラウド、モバイル化と変遷してきた。最近話題になっているデジタル化は、企業の情報システムの主な領域である基幹業務系ではなく、売上拡大のためにITを活用するビジネスITの領域で適用すべきといわれている。
そもそも基幹業務系システムは、規模が大きい反面、大幅な業務の見直しが少ない。このため、システムを再構築する機会が限られており、IT人材の育成が停滞している。スキルアップや準備が不足したままビジネスITの領域に取り組んでしまうと、業務や技術などの新規性が高い場合、品質リスクが高まってしまう。その反面、基幹業務系システムで障害を発生させることなく安定稼働するためのIT人材を維持、確保し続けることも重要な課題となっている。
そんな中での働き方改革、人口減問題である。一昔前であれば、サービスの品質を維持するために人手や時間をかけて解決していたが、今やそれが困難になっている。労務環境を改善しない限り、優秀な人材の確保もままならない。これまでより一層、下請法の遵守が求められている。では国内の生産年齢人口が減少の一途をたどる中、企業が高品質なサービスを提供し続けるためには、どんなことに留意すべきなのだろうか。

自らの問題と捉え、情報セキュリティと技術革新に取り組む

まず、情報セキュリティ対応については専門家任せにせず、企業や社員が自らの問題と捉え、意識を高く持つことが最も重要である。有効な技術的仕組みを導入することはもちろん、対策ソフトは常に最新化する、不審なメールは開かないなど、日頃から徹底、啓蒙すべきである。サイバー攻撃の発生が報道されているような場合は、自社への影響に対する感度を高める必要がある。業界ごとに設置されている団体から事前に攻撃予告情報を入手して備えることも可能である。万が一、サイバー攻撃を受けてしまった場合に備え、影響を最小限に食い止めるために想定した訓練を行うなど、防御態勢を整備しておくべきである。

技術革新に対しては2 つの対応が考えられる。まず、基幹業務系や非競争領域のシステムについては、外部の標準的なサービスやERPなどによる代替を検討すべきである。これにより一定の品質を確保することが可能となる。もしくは、これらのシステムを開発、維持してきたベテランのIT人材のノウハウを活用して、人材育成を目的にシステムを再構築すべきである。一方、競争領域であるビジネスIT分野については、新技術活用のリスクが高いため事前検証を行い、段階的に適用範囲を広げていくべきである。
なお、いずれの領域においてもシステムの品質を担保するためには、業務のプロセス化、標準化、手順化が非常に重要である。優秀な人材に依存することからの脱却、属人化の排除という観点でも有効である。今後は限られたリソース、時間の中で品質を担保するための活動を行っていくことが避けられない。社員やリソースの有効活用という観点でも、このような取り組みは働き方改革にもつなげることが可能となるだろう。

野村総合研究所(NRI)は数年前より、「情報セキュリティ」「働く環境」「情報システム構築」「稼働システム」「データセンター運営」の5つの品質について維持向上活動を強化している。これらは時代の流れに合わせて常に見直す必要があるが、デジタル化がいかに進展しても、日本企業の良き文化ともいえる品質へのこだわりは忘れないようにしたい。

(知的資産創造10月号 MESSAGE)

NRIオピニオン 知的資産創造

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