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デジタル時代のCX/UX実現のアプローチ

システムデザインコンサルティング部 高井 厚子

#DX

#経営

#CX

2018/07/09

デジタル化が進む中で、CX(カスタマー・エクスペリエンス)やUX(ユーザー・エクスペリエンス)といった「体験価値(エクスペリエンス)」が重視されるようになってきました。体験価値の実現には「お客様やユーザーの本質的な問題を捉えて価値を創出するデザインシンキングの手法が欠かせない」と、野村総合研究所(NRI)の高井厚子は言います。よりよいCX/UXを実現するための留意点について聞きました。

 

CX/UXが差別化の鍵

 

――なぜCX/UXが注目されるのでしょうか。

 

これまでのように、技術重視の製品・サービス改善を続けていては、市場での競争に勝つことはできません。お客様にどうすれば価値を届けられるかに着目し、他社では得られない体験によって差別化することが重要になっているのです。

 

――CX/UXとは、UI(ユーザー・インターフェース)改善の延長線上にあるものでしょうか。

 

UIの使いやすさの品質はUXに影響しますが、UXはインターフェースに限定せず、製品やサービスを利用した際の体験を指します。UXではお客様に心地よい体験を提供することを重視します。たとえば、ウェブサイト上での検索や発注、商品の配送、コールセンターへの問い合わせなど、お客様と企業の接点はいろいろとあります。その中で一貫性のあるトータルの体験をCX。サイトでの関わり方、コールセンターでの関わり方など、個別接点での体験をUXと呼ぶことが多いと思います。

 

UXの対象はお客様だけでなく、営業担当者や店舗の販売員、コールセンターのオペレーターなどの従業員も含まれます。従業員のUXは接客対応の質を上げ、最終的にCXの向上につながるからです。また、人材の流動性が高くなり、パートやアルバイト、外国人などを活用しなくてはならない中で、UXは業務品質や教育コストにも影響を及ぼします。

 

共創型アプローチで新しい価値を創出

 

――日本企業の取り組み状況は進んでいるのでしょうか。

 

個人的な印象としては、デジタル技術で何か新しいことをやらなければと思うものの、何をどう活用したら成果につながるかがわからず、模索している企業が多いようです。そこで、お客様の抱える本質的な課題やニーズを解決するための手法である「デザインシンキング」を取り入れようとする企業が増えていますが、言葉だけが先行し、「これだ」という成功事例はまだ少ないと思います。

 

――体験価値を実現するために、具体的にどのように進めればいいのでしょうか。

 

従来であれば、事業環境や市場動向、技術動向の分析から入りましたが、CX/UXのデザインは、お客様のニーズ、サースやシステムから得られる価値、問題の本質を突き詰めてみることから始めます。不確かで、従来の延長線上にない新しいアイデアを考えるので、デザインシンキングを用いたプロセスが適しています。

 

デザインシンキングでは、ユーザーの気持ちや行動に共感しつつ観察を行い、いつ、どのようにユーザーが体験価値を得られるかという仮説やシナリオを作成します。それに沿って、どんな機能やサービスを提供するかアイデアを広げたり絞ったりしながら、さまざまなプロトタイプを作ってエンドユーザーに試してもらいながら評価を行います。この過程でコンセプトを固めていきます。

 

こうしたプロジェクトは多様な人を巻き込む共創型アプローチを用いることが多く、「ユーザーの体験価値を可視化・定量化すること」、「それを関係者間で共有し合意形成を図ること」、「短いサイクルで継続的に検証を重ねること」がポイントとなります。

 

 

共通ゴールを持つために、顧客起点のマインド醸成が必要

 

――一連のプロセスの中で、特に重要なことは?

 

最初に、どのお客様を対象とし、どのような体験価値を届けたいかという共通のゴールを関係組織間でしっかりと合意するところです。たとえば、既存システムに問題を感じている企業でお話を伺うと、新規顧客への訴求力を高めたい、コールセンター向けウェブの使いにくさを解消したい、既存顧客の継続利用が大切だなどと、部門ごとに想いやお客様像がバラバラで、合意形成が難しいことがよくあるそうです。ですが、どの部門も直接的・間接的に体験価値に関わるので、1つのゴールを設定すれば、副次的に他の目的も達成できることが多いのです。

 

それぞれの顧客接点の最適化ではなく、接点と接点を結んで一貫性を持たせた体験価値の実現をトータルな「面」で考えなくてはなりません。たとえばアマゾンは、ウェブ上の買い物体験だけでなく、ロジスティクスの工夫により迅速に商品が届き利用することができる体験まで、全体として消費行動における体験価値を実現しています。

 

――一面で考えるために、日本企業が強化すべきことはありますか。

 

お客様を起点に考えていく風土・マインドを醸成すること。それから、利害関係のある複数部門を統括して、全体として顧客接点のあり方を見ていく組織も必要になるでしょう。そのお役に立てればと、NRIではマインド醸成を促すデジタルシンキング研修を行っています。お客様と一緒に共創型アプローチで、コンセプト化からソリューションへの落とし込み、開発までトータルでご支援ができればと思っています。

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