株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、2011年6月に、全国の大手企業3,000社を対象に、「震災後のBCP(事業継続計画)※1に関するアンケート」を実施しました。岩手、宮城、福島、茨城の各県に本社を置く企業は、対象から除いています。有効回答は、423社(14%)から得ています。

今回の主な調査結果は、以下のとおりです。

【26%の企業において重要な業務が停止している】

回答した企業(423社)の被害状況を見ると、「本社」への被害があったという回答は16%(大半が3日以内に復旧)と比較的少ないものの、「支社・支店・営業所」(55%)や「工場」(43%)に何らかの被害が生じた企業が約半数に上っています。復旧に1カ月以上の時間を要した拠点を持つ企業が、「支社・支店・営業所」で12%、「工場」で12%、発生しています。(以上、該当拠点を持つ企業で集計)(図1)

また、26%の企業が「重要な業務が停止した」と答えており、「一部(重要でない)業務が停止した」(29%)を含めると、55%の企業で何らかの業務停止が発生しています(図2)。重要な業務が停止した企業のうち、21%に当たる企業では、停止期間が「1カ月以上」に及ぶとしており、影響の深刻さが見て取れます(図3)。

重要な業務が停止した理由として、多くの企業は「停電のため」(62%)、「業務に必要な生産拠点が利用できなかったため」(45%)、「取引先の業務停止などにより、必要な調達・供給が行えなかったため」(44%)を挙げています。停電および自社工場や取引先を含めたサプライチェーンに関連する機能の寸断が重要業務を停止させた大きな原因であると認識されています。(図4)

【BCP策定済みの企業は増えたが、取組レベルにより有効性の評価は分かれる】

2007年10月に実施したNRIのアンケート調査によると、その時点においてBCP策定済み企業は29%、策定中の企業は36%でした。今回の調査では、東日本大震災発生の時点でBCPを「策定済みだった」(49%)、「策定中だった」(17%)となっており、企業の3分の2は概ね準備を終えつつあったと言えます。しかし、BCPの「策定を予定していたが、未着手」および「策定は予定していなかった」という企業が合計して32%あることが分かりました。(図5)

一方、今回の震災でBCPが機能したかどうかを質問したところ、「十分機能した」と答えた企業は7%に留まっています。「概ね機能したが、一部に問題があった」と回答した企業が78%を占め、「ほとんど機能しなかった」と答えた企業が15%ありました(BCPの対象となる被害のあった企業で集計、以下同様)(図6)。

ただし、その内訳を見てみると、BCPの品質を決める重要な3要素である、「重要な業務・サービスの絞り込み」※2「重要な業務・サービスの目標復旧時間の設定」※2「国・自治体等の想定被害を踏まえた、事業停止時間の想定」※3を、それぞれ検討を実施していた場合と実施していなかった場合では、その評価が大きく変わることも分かりました。例えば、「重要な業務・サービスの絞り込み」を実施していた企業では、「十分機能した」、「概ね機能したが、一部問題があった」と回答した企業が約9割あったのに対し、「重要業務・サービスの絞り込み」を実施していなかった企業の場合は、その割合は大幅に小さくなっています。(図7)

今回の調査では、「発災直後の安否確認のルール」「重要拠点が被災した際のバックアップの確保」「バックアップのデータセンターの確保」「取引先が被災した場合の代替調達先の確保」「継続的なBCPの更新」など、BCPの項目ごとの評価も聞いていますが、多くの項目で「見直しが必要」または「項目の追加を検討したい」という回答が寄せられています。

【サプライチェーンの再構築など様々な課題が顕在化】

震災から見えてきた、事業継続のための今後の取り組み課題については、「サプライチェーンの再構築」(42%)、「社員の安否確認システムの導入」(39%)、「システムに関する防災対策」(38%)の3つが特に多く挙げられ、次いで「リモートオフィス環境の整備」(27%)、「本社などオフィス分散」(20%)が上位にきています(図8)。

これらの調査結果から見て、多くの企業ではBCPの策定・見直しが急務であることが明らかになりました。今後、東海・東南海・南海地震などの広域大震災が想定される中、BCPは重要な経営課題の一つになっています。

NRIは、今後予想される広域型大震災の被害想定に基づいたBCPに関する課題や解決策について検討を実施しています。

※1
BCP (Business Continuity Plan):事業継続計画。 地震などによる具体的な被災影響を想定し、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能とするための方法等を事前に策定しておく計画。
※2
重要業務・サービスの絞り込み/目標復旧時間の設定:いずれもビジネスインパクト分析(BIA)の重要な要素。BIAは、災害などの危機発生時に企業が事業を停止した場合、その事業停止が企業に与える影響度を定量的に分析するもの。危機発生時に優先的に実施すべき重要業務を絞り込み、企業存続と社会的責任の観点から最大限許容できる範囲で目標復旧時間を設定する。
※3
事業停止時間の想定:事業継続の脅威となる対象リスク(地震、水害、パンデミックなど)を特定し、自社の重要リソース(本社・店舗、工場、データセンターなど)の現状(耐震性など)を評価した上で、リスク発生時の事業停止時間を想定する。

【ニュースリリースに関するお問い合わせ】

株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 小沼、中山
TEL:03-6270-8100 E-mail:

【本調査担当】

株式会社野村総合研究所 経営革新コンサルティング部 山田、三嶋 、岡野

【ご参考】

■ 調査概要

調査名: 「震災後のBCP(事業継続計画)に関するアンケート」
実施時期: 2011年6月3日~6月15日
調査方法: 郵送法(アンケート票を郵送し、郵送またはWeb入力により回答を得た)
調査対象および
回答状況:
全国の証券取引所一部・二部に上場する企業および資本金額が上位の未上場企業3,000社。ただし、岩手、宮城、福島、茨城の各県に本社を置く企業は除外した。対象企業の14%にあたる423社から有効回答を得た。
図1:東日本大震災による拠点の被害状況(該当拠点を持つ企業で集計)
図1:東日本大震災による拠点の被害状況(該当拠点を持つ企業で集計)
図2:重要業務の停止状況
図2:重要業務の停止状況
図3:重要業務の停止期間 (重要な業務が停止した企業で集計)
図3:重要業務の停止期間
図4:重要業務が停止した理由(重要な業務が停止した企業で集計)(複数回答)
図4:重要業務が停止した理由(複数回答)

拡大図

図5:東日本大震災発生時点でのBCPの策定状況
図5:東日本大震災発生時点でのBCPの策定状況
図6:自社のBCPに対する評価(BCPの対象となる被害のあった企業で集計)
図6:自社のBCPに対する評価(BCPの対象となる被害のあった企業で集計)
図7:自社のBCPに対する検討項目別の評価(BCPの対象となる被害のあった企業で集計)
図7:自社のBCPに対する検討項目別の評価(BCPの対象となる被害のあった企業で集計)(注)未回答企業を除いているため、検討項目毎の合計は175社(図6の社数)とはなっていない

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図8:事業継続に関する今後の取り組み課題(複数回答)
図8:事業継続に関する今後の取り組み課題(複数回答)

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