株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、2017年度までの『位置情報の活用による顧客・生活者向けサービスの進化と、そのインパクト』を予測した「ITロードマップ」※1をとりまとめました。昨今のスマートフォンの急速な普及によって、生活者が位置情報を活用しやすくなったことや、SNS(ソーシャルネットワークサービス)上で位置情報を共有する行動が増え始めたことにより、社会・産業分野においても位置情報サービスの価値が高まっています。

生活者が「今いる場所」や「置かれた状況」によって、これまでにない“その場に応じたおもてなし”を享受することが可能になります。具体的には、サービス会員の居場所やニーズに合わせて、最寄りの実店舗やサービスの情報を手に入れることができたり、初めての旅行先でも、スマートフォンを通じて自分の好みに合ったサービスや価値を利用できるようになっていくことが予測されます。

ただし、高度な位置情報サービスの活用や普及を実現するためには、位置情報と他の情報(生活者の属性や購買履歴、SNSへの投稿履歴など)を企業が活用する際に、不要なプライバシー情報を取得しないといった配慮と、生活者の利便性のために本当に役立つサービスの開発・提供を行うという、企業側の姿勢も重要になってきます。

【生活者と実店舗・サービスとを結びつける手段として、位置情報の活用が拡大】
スマートフォンを利用する生活者にとって、「ナビゲーションサービス」等、位置情報を活用したサービスの利便性が高まっています。GoogleやAppleを代表とするOS等のプラットフォーム提供企業が、自社独自の地図を提供したり、地図の3D(3次元)表示や地図と連動したナビゲーションサービスを追加したりするなど、位置情報サービスをさまざまな企業が提供し、新たな市場が生まれています。
位置情報の活用は、上述のようなOS等のプラットフォーム提供企業や地図データ事業者にとどまらず、小売業やサービス業などにも広がっていくと考えられます。例えば、自社店舗に近い特定のエリアに一定時間滞在しているサービス会員に対して、スマートフォンを通じて“その場限定”のクーポンを送ったり、実際に店舗に来店したことをGPS(Global Positioning System)や無線LANを用いて検知し、ポイントを提供したりするなど、O2O ※2サービスが始まっています。
さらに、測位技術の進化によって、GPSが利用可能な屋外だけではなく、GPSの利用が困難なビルや商業施設などの屋内でも、正確で最適な情報提供やナビゲーションサービスが実現していくと予測されます。
位置情報の活用による企業の顧客・生活者に向けたサービスの高度化は、具体的には、以下のように展開されると予想しています。
【位置情報の活用による顧客・生活者向けサービスの進化のロードマップ】
位置情報の活用による顧客・生活者向けサービスの進化のロードマップ
2012~2013年度:位置情報連動クーポンを中心とした実店舗への誘導サービスの始まり
先進的な小売業では、会員が持ち歩くスマートフォンに内蔵されたGPSセンサーを活用して、位置連動クーポンの配布サービスを開始し始めています。foursquareなど、利用者同士が位置を共有するSNSや、スマートフォン向けクーポンアプリケーションを介して、会員が入店する際に「チェックイン(訪問したことを宣言)」してもらい、その場でしか得られないクーポンを提供するサービスが始まります。
これまで、生活者の位置を把握する方法は、GPSや携帯電話基地局を用いた測位に限られていました。しかし、これらの測位方法では、誤差が数百メートル~数キロにわたることがあり、正確に位置を把握するには限界がありました。そのため、サービス会員が店舗の前まで来たのか、店舗に入店したのか、特定の売り場を訪れたのかといった、具体的な実店舗への導線の過程や状況を把握することはできませんでした。
最近では無線LANの電波や、超音波などを用いて、サービス会員のスマートフォンが特定の場所に「近づいたことを検知」する技術が登場しています。また、既にGoogle Mapsなどでは、大都市圏の駅・大型商業施設などで屋内の地図が作成されています。これにより、サービス会員が店舗の近くに来たり、店舗の特定の陳列棚に「近づいたことを検知」し、来店クーポンや入店ポイントなどを提供するといったサービスが可能になりつつあります。
2014~2015年度:ジオフェンシング(チェックインの自動化)による位置情報活用の高度化
生活者が自ら位置情報を取得・発信し、近くの店舗の最新情報やクーポンを入手するためには、スマートフォンのアプリケーションを起動して、操作を行う必要があります。そのため、現状では、企業がサービス会員に届けたいクーポンやメッセージがあっても、最適なタイミングで気づいてもらえない、という制約があります。
このような制約を克服する次世代の位置情報サービスとして、サービス会員が事前に設定された特定のエリアに近づくと自動的に最新情報やクーポンを企業側からプッシュ配信する、「ジオフェンシング(チェックインの自動化)」というサービスが普及し始めます。地図上に仮想のフェンスで囲んだエリアを設定し、会員のスマートフォンがそのエリアに入ったかどうかを確認することで、より生活者の置かれた状況に応じて、自動的に最適な情報やサービスを提供することが可能になります。
さらに、位置情報の活用はGPSの利用が困難な屋内へと広がっていきます。2014年に本格的な運用が予定されている日本の準天頂衛星を用いた測位システムでは、屋内にGPS衛星と同じ位置特定用の電波を送信する送信機を設置するしくみ(IMES:Indoor Message Service)の実現が予定されており、GPSの利用が困難な地下やビル内でも、正確な位置を特定できるようになります。
IMESのような屋内ナビゲーションのための技術を用いて、屋外のみならず屋内でもサービス会員の位置を正確に把握し、建物内の店舗へのナビゲーションや、探している商品が置かれている陳列棚への誘導、関連する商品の推奨などが実現可能になります。ただしこのためには、屋内の地図データの作成や、商品の棚割データと屋内の地図データとの連携といった仕組みが必要となります。
2016~2017年度:ロケーション・インテリジェンスの実現
位置情報を活用したO2Oサービスの実現と他の様々なサービスの普及を通じて、多くの生活者の位置データが蓄積されていくことにより、生活者の位置データを他のデータと組み合わせて分析・活用する「ロケーション・インテリジェンス」が新たな価値を生み出す段階に至ります。
例えば、ある都市において、生活者の移動の軌跡を統計的に解析することで、時間帯ごとにどのようなエリアに人が集中するのかが可視化できるようになります。このデータと位置情報以外のデータ(天候・気温、その時間帯のイベント情報や、そのエリアに展開する店舗での売上データなど)とを組み合わせて分析することで、複雑な環境条件に合わせた予測も可能になります。企業にとって、これまでにない、データに基づいた商圏分析やサービス展開の計画が可能になったり、公共分野においては都市計画の高度化や、防災計画などに活用することが可能になります。
また、生活者にとっては、ロケーション・インテリジェンスによる分析結果と自分の日常の購買履歴やネットの閲覧・検索履歴、SNSへの投稿などと合わせて活用することで、これまでにない“その場に応じたおもてなし”を享受することが可能になります。
例えば、旅行で初めての場所を訪れた際に、興味の対象や日常の行動が自分と同じような人がよく行く観光地やレストランなどを案内されたり、関心を持ちそうな商品がある店舗の紹介を受ける、というコンシェルジュのようなサービスが実現されます。
なお、位置情報サービスを含む、様々な分野の情報技術に関するITロードマップに関しては、東洋経済新報社より12月(予定)に発売される単行本 『ITロードマップ2013年版~情報通信技術は5年後こう変わる!~』に掲載される予定です。
※1
ITロードマップ:NRIイノベーション開発部(旧技術調査部)が半期ごとに公表している、5年先までの情報技術の動向や予測をとりまとめたもの
※2
O2O:Online to Offlineの略。オンライン(インターネット)の情報がオフライン(実際の店舗等)の購買活動に影響を与えたり、オンラインからオフラインへと生活者の行動を促すマーケティング施策を伴うビジネスモデルやサービス

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