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NRI Solutions
中国進出企業の人材マネジメント支援
 中国の人たちが主役となって働ける組織づくりをサポート
	第1話 “China's Ajinomoto”実現に向けて
1990年代から、中国事業を積極的に展開してきた味の素株式会社(以下「味の素」)。中国に生産・販売拠点を次々と誕生させ、調味料、食品、飼料用のリジンや医療用のアミノ酸など、味の素の製品を中国に浸透させていきました。2004年に中国事業の責任者になった味の素常務執行役員中国本部長の前田宏一氏は、事業のさらなる飛躍を図って、各拠点ごとにばらばらだった動きを一つに統括するとともに、中国の人たちに経営を任せていく制度改革を進めていきました。
その国の人が「働きたい」と思える 会社でなければビジネスは成功しない
味の素株式会社 常務執行役員中国本部長 前田宏一氏
味の素株式会社
常務執行役員中国本部長
前田宏一氏

入社したばかりの若い頃、工場に勤務していた前田氏は、現場の人たちが問題意識を持って働いていること、一生懸命働ければ報われる、希望の抱ける職場が必要であることを身を持って知っている。それはどの国であろうと変わらない。だから「人事制度改革を行うには、どんな制度にするかという以前に、現場の人たちと目線を一緒にして練り上げていくことが必要」と語る。
 目指すは “China's Ajinomoto”。中国にある日本の企業“Ajinomoto in China”ではなく、中国の人たちが「私たちの会社」と心から思える企業にしていく――。2004年に味の素の中国事業の責任者になった前田氏はこのような方針を立てて、中国における味の素の「現地化」に取り組んでいきました。
 「中国の人たちが、主人公意識を持って運営していける会社にしたかったのです。味の素グループはグローバルカンパニーであり、“世界の人々に信頼される、個性ある企業”を目標に掲げています。加えて、そもそもその国の人たちが一生懸命に働きたいと思える会社にしなければ、ビジネスは成功しないのです」
 1991年から十数年以上を、中国(北京)、シンガポール、ベトナム、ブラジルに駐在して各国の従業員と過ごしてきた前田氏は、それぞれの国でのビジネスを順調に進めていく上で力を最大限に発揮するのも、そして、何か問題が起きたときに会社を守ってくれるのも現地の従業員であること、また彼らの力を最大限に発揮するためには、日本人が現地の従業員たちと目線を一つにしながら共に汗を流す必要があることを、身を持って経験してきました。
 「だから、中国の人たちが、働けばその分きちんと報われる、そして将来に夢の抱ける会社にしたいと考えました」


本社の課長に処遇、次いで人事部長に抜擢
 しかし、それをどのように実現していけばいいのか。前田氏がまず行ったのは、組織を変えるための人事制度改革でした。最初に、北京で1991年から93年まで事務所長をしていたときに採用して現地従業員たちに信頼されていた中国人の男性を、日本の本社に出向させ課長として処遇しました。彼に本社で1年間、人事制度について学んでもらってから、その後、中国拠点の人事部長に抜擢。以降、「中国人が主人公となる人事制度」づくりを彼が中心になって進めていきました。
 「“China's Ajinomoto”にしていくのだと言っても、中国の従業員から見れば半信半疑でしょう。ですから、中国の人たちが『本当にわれわれのために考えてくれている』『頑張ればこうやってステップアップできる』と納得できるかたちを次々に見せていくことが必要でした」
 人事制度づくりというのは、新たな枠組みを策定して、それを現場にそのままポンとはめ込めば済むものでありません。何より大切なのは「現場の社員たちが、つくり上げるプロセスにかかわること」であり、それによって初めて「魂が入った制度として機能していく」と前田氏は考えています。
 「そのために、現場の社員たちとは、相当、会話のキャッチボールをする必要があります。どんな会社にしていきたいのか、そのためにどんな制度が望ましいのか。そんな議論を、1年半ほどかけて中国の各拠点を回りながら行いました」
 ところで、信頼される人事制度改革を進めていくには、「第三者に入ってもらい、われわれと従業員とのすり合わせを行う必要」がありました。そこで前田氏が支援を頼んだのが、NRI上海の田浦里香でした。
 「田浦さんにお願いしたのは、私どもの改革に取り組もうとされる情熱が、たいへん強く感じられたからです」


大切なのは、一緒に練り上げていく過程
 当時、前田氏は中国における人事制度づくりに実績のある何名もの人事コンサルタントから、話を聞く機会はあったといいます。けれど「人事制度に対するハウツーを語る人が多かった」。新たな人事制度をつくるには、ハウツーを導入するのではなく、組織にかかわる人たちが会話を重ねながら一緒に練り上げていくプロセスが大事だと、前田氏は考えていました。
 「NRIの田浦さんなら、われわれとキャッチボールができると思ったのです。実際に、田浦さんは、現場の意見をよく聞いて、中国人と日本人の接着剤の役割を果たしてくれました」
中国的な要素を取り入れた人事制度を提案してもらい完成できたのも、田浦のひたむきな情熱が大きな力になったと前田氏は評価します。
 NRIの支援は2005年1月から始まり、翌年1月には一段落しました。しかし、中国味の素の改革は現在も継続しています。副社長、支店長、マーケティング部長、工場長など、中国人社員の幹部登用は進み、「中国人が主人公となる人事制度」は、順調に機能し始めているようです。
 「2007年2月に“味来天計画”をスタートさせました。中国味の素で働く人たちにとって、本当に目指したい会社を実現させるための具体的な事業目標を掲げた活動です」
 中国味の素の社員が育ち、リーダーとなって会社を大きくしていく。それが中国社会に貢献することにつながると前田氏は考えています。

味の素 中国製品


※本文中の組織名、職名、構成図は公開当時のものです (2007/11/12公開)
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