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NRI Solutions
中国日系企業の幹部社員研修プロジェクト
真の現地化を進めるための人材育成をサポート
第1話 YKK精神を実践する社員を育てていく
ジッパーに代表されるファスニング事業や、窓サッシなどの建材事業を中国で拡大させてきた中国YKKグループ。急速に事業拡大する中で、事業統括会社であるYKK(中国)投資有限公司の総経理・俣野隆氏は、2004年から経営現地化に向けた取り組みを始めます。その一つ、人材マネジメント基盤の整備にあたって、俣野氏はYKK精神の浸透を最重視しました。
事業規模は急拡大
日本人のマネジメントでは限界
YKK(中国)投資有限公司 総経理 俣野 隆 氏
YKK(中国)投資有限公司
総経理
俣野 隆 氏

2002年12月から2008年3月まで中国・上海に駐在。この間の心に残る大きな出来事は、YKK中国の事業を急拡大させたこと、上海市書記(当時)の習近平さんはじめ政府関係者とのパイプづくりができたこと、上海市白玉蘭栄誉賞を授賞したこと、など。「これから発展していく中国で、いろいろ苦労はあったけれど、現場の仕事ができた。さらに、60歳まで元気にがんばれた」ことにも満足している。

 最近は会議で中国人の幹部社員からはっとさせられるような指摘が頻繁に出るようになったと、YKK(中国)投資有限公司の総経理・俣野隆氏は感じています。
 「先日も、上海YKKジッパー社をYKK本社社長の吉田忠裕が訪れた際に、中国の社員たちは経営に関する自分たちの考え方を臆することなくぶつけていました。こんなふうに本社の経営層と議論できるようになったということは、それだけ彼らがYKKという会社の精神や理念に基づいて仕事をするようになったのだと思います」
 これは、俣野氏には嬉しいことです。中国YKKグループが目指す経営現地化が確実に進んでいると実感できるからです。
 1990年代にジッパーに代表されるファスニング事業、2000年代に入ってからは窓サッシなどの建材事業を中国で拡大させてきたYKKは、中国におけるYKK法人各社の連携と経営強化を図るため、2002年に事業統括会社としてYKK(中国)投資有限公司を設立しました。ここに社長として就任したのが、カナダ・アメリカで13年の事業経験がある俣野氏でした。
 「海外事業は通常、時間をかけて広がっていくものですが、中国の場合は事業規模が急速に拡大していました。今後も中国のYKKグループが成長しながら安定した収益を上げていくには、日本人駐在員に頼ったマネジメント体制では限界がありました。そこで2004年に、われわれは経営現地化を最大の課題としたのです」


『善の巡環』精神のもとで
仕事ができる人を育てていく
 俣野氏は2005年に経営現地化推進委員会を立ち上げて、現地化に向けた取り組みを始めます。その一つが、YKK各社を統括するグループ人事制度づくりと中国幹部人材の育成でした。
 現地化を目指す企業なら、中国人幹部登用の仕組みをつくったり、幹部研修を実施したりするのは珍しくはありません。俣野氏が独特だったのは、最初に「YKKの精神や理念を理解し、これに基づいて仕事ができる人を育てていく」「YKKの人間であることを社員が誇りに思えるようにしていく」ことを明確に打ち出し、これをベースとして、新しい人事制度や幹部育成のための内容を組み立てていった点でした。
 「YKKの精神は『善の巡環』です。創業者である吉田忠雄の言葉で、“他人の利益を図らずして自らの繁栄はない”ということです。中国でならば、例えばファスニング事業を広げることで中国の縫製業界の発展に貢献する、建材事業を通じて中国の住環境の質的向上を目指すなどがあげられます。自分のためだけの幸せではなく、中国の社会や中国人の幸せを追求する。このように考える社員なら、自分の仕事にも会社にも誇りが持てるでしょう。またそんな社員が支える組織になれば、YKKは中国社会に受け入れられ、発展を続けていけます」
 同じ中国とはいえ、出身地域によって言葉や文化が異なる中国人社員たち。日本人も含めてバックボーンが異なる社員をまとめるには、会社の精神や理念を社員の心の拠りどこにする必要があるとも俣野氏は考えていました。
 しかし、会社の精神や理念の浸透を図っても、お題目に終わる企業は少なくありません。俣野氏は「これに沿えば『善の巡環』を実現できる」具体的な行動内容を「YKKグループ行動準則」としてまとめ、社員が社内外で仕事をするときの規範としました。


NRIからの提案は
すべての社員の力の底上げ
YKK(中国)投資有限公司 総経理 俣野 隆 氏
 新しい人事の仕組みができ、行動準則もできてから、いよいよその運用として、2006年から幹部社員の研修が始まりました。中国YKKグループ各社から幹部社員を集め、3年間で全6回、「論理的思考」「マネジャーとは」「コミュニケーションスキル」「経営分析」などを学ぶ内容です。2007年からは、日本人駐在員を対象に、中国人幹部研修と同じ6回の研修も開始。現地化に伴って役割が高度化する駐在員の能力の底上げも図っていきました。
 こうした幹部研修のコース設計を任されたのがNRI上海の人材マネジメント・コンサルティングチームでした。NRIが支援した背景を俣野氏は次のように話します。
 「NRI上海とは古くからつきあいがありましたが、人材マネジメントに関しては中国事業に従事する日本人社員のための行動規範づくりを手伝ってもらったのが始まりです。もともと信頼していたこともありますが、研修をお願いしたのは、提案いただいた内容が幹部社員すべての力の底上げを目指すものだったからです。具体的には能力のない者を切り捨てる考え方ではなかった。われわれの創業者は人にやさしい、人を信じる組織を作ってきました。NRIの考え方は、YKKの『善の巡環』に近かったためです」
 研修は現在も継続しており、今年は、第三期生の幹部社員の研修が始まる予定です。中国のYKK各社における幹部登用も進んでおり、2004年には日本人駐在員で占められていた幹部ポストは、2008年には現地社員が半数を占めるまでになりました。
 「少なくとも、相当の責任ある仕事が任せられて、経営についても語れる中国人幹部社員が現在およそ100人います。これは、世界のYKKグループの中で最多の数です。売上も5倍になりました」
 このように、中国YKKグループの経営現地化の取り組みは、毎年確実に成果を上げてきています。


※本文中の組織名、職名、構成図は公開当時のものです (2008/6/16公開)
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