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ドローンロジスティクスで便利になる未来社会

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近年さまざまな領域で、ドローンの利用が急速に進んでいます。ドローンの存在が世の中に浸透したのはここ数年のことですが、実は日本における産業利用の歴史は意外に長く、1980年代後半にはすでにヤマハ発動機が小型無人ヘリコプターを開発し、これは主に水田の農薬散布に利用されてきました。やがて、バッテリーや飛行を制御するソフトウェアの性能の向上によって、比較的簡単に操縦できる小型のドローンが多く開発されました。2010年代後半には、中国のDJI社の安価で高性能な空撮用ドローンが世界市場を席巻し、「空飛ぶカメラセンサー」として設備点検や測量現場での利用が一気に進みました。
また、ここ数年はドローンを使った物流(ドローンロジスティクス)に関するニュースを目にすることも多くなりました。では、これまでの技術開発や実証実験のトレンドから、「モノを運ぶ」という用途において、ドローンで可能になる未来を見ていきたいと思います。

2025年頃までに成立する近未来――遠隔地の生活の利便性が向上

「運ぶモノ」という視点から、比較的短期で成立しそうな用途を考察してみます。バッテリーで稼働するドローンが離陸できる重量(最大離陸可能重量)には制限があるため、軽くて物品価格の高いものが最初の輸送対象となるでしょう。例えば、医療関連物資の輸送で、遠隔地の診療所で患者から採取した血液検体を設備の整った医療機関へドローンで輸送し、迅速に検査する、といった未来はそう遠くないと考えられます。
次に、「今の輸送手段との比較」という視点も重要です。国内外における山間部や離島は陸路・海路による輸送に時間とコストがかかることから、ドローンに対する期待が高く、各地で実証実験が実施されています。輸送の対象は幅広く、手紙や医薬品といった緊急性の高いものから日用品や食料品まで含まれます。ドローンロジスティクスが定常的に運航されれば、人里離れた環境で利便性を享受できる生活様式を作り出せるため、地域社会の活性化につながる技術として期待されます。

2030年頃に成立する未来――人がドローンで移動する時代に

今後10年間でドローンの飛行性能がさらに向上し、自律飛行する複数の機体を遠隔で管理できるようになれば、都市部上空をドローンが多数飛び交う未来が実現します。民家の軒先やマンションのベランダにドローンが離着陸できる小さなスペースを整備すれば、ラストワンマイルの輸送手段として利用できるでしょう。アマゾンや楽天の配送オプションに、「特急ドローン便(1時間後)」といったオプションが追加される日が来るかもしれません。
また、機体を大型化することでモノではなくヒトを乗せて飛ぶドローンの開発が、日本を含む世界中で進んでいます。電池とモーターで稼働するドローンは機体制御が容易で騒音も小さいため、ヘリコプターと比較して都市部での導入のハードルが低いとされています。空港と都心の間の移動などで「空飛ぶタクシー」が利用される日は、そう遠くないと思われます。

ドローンロジスティクスの発展に向けて――乗り越えるべき課題も

ドローンが定常的にモノを運ぶためには、風雨が伴う環境でも飛行できる耐環境機能や、ドローンの最大離陸可能重量を増やす動力源、墜落を防ぐ安全装置など多くの技術的課題が存在します。墜落事故は大きな被害を伴うため、運航者の安全基準など機体以外にも整備が必要なルールが多く、実現への道のりは険しいでしょう。
日本にはドローンロジスティクスが最初に導入される山岳地帯や離島に加え、輸送回数が多く市場として魅力的な都市部もあり、実装環境が豊富です。また日本企業はバッテリーやセンサーといった要素技術でも優れているといわれており、ドローンロジスティクスが世界に先駆けて実装される可能性は十分にあると考えています。ドローンによって我々の生活様式がどのように便利になってゆくのか、引き続き注視したいと思います。

執筆者


名武 大智

名武 大智

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部


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