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デジタルによって変わる交通インフラの維持管理

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2021/06/01

いま、道路やトンネル、橋梁など日本の交通インフラの深刻な老朽化が懸念されています。 日本の交通インフラは、戦後の高度経済成長期である1960―70年代に集中的に整備されました。一般に交通インフラ設備の耐用年数は50年とされていますが、2020年代を迎えたいま、建設後50年以上を経過する設備の割合が加速度的に高まっており、2030年には日本の交通インフラの半数以上が建設後50年を超える見込みです。老朽化が進むと、2012年に起こった中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故や、2016年に起こったJR博多駅前の道路陥没事故のような重大な事故に至る危険性があるため、老朽化するインフラの維持管理・更新が社会課題となっています。
インフラの維持管理・更新には、専門的な知識を有する技術者による点検と補修が必要となります。しかし、地方自治体の管理の現場では人員も費用も限られており、膨大な老朽インフラの全てに対応するのには限界があります。このため、デジタル技術を活用した点検・補修の自動化・省力化に期待が寄せられています。

AIの活用で進む点検作業の自動化・省力化

これまで点検作業は技術者による目視確認を中心に行われてきましたが、センサー・カメラ技術とAI技術の組み合わせによる自動化・省力化が実現され始めています。具体的には、自動車やドローンに搭載した高性能なカメラやセンサーで道路や橋梁などの損傷状態のデータを取得し、これらのデータをAIで自動解析することで、路面やトンネルのひび割れや空洞、橋梁のさびなどを検出します。これにより従来の1割程度の時間で点検を完了できるようになった事例も出てきています。また、カメラ技術やAI技術の進化により、従来の目視点検では見つけられなかった微細なひびの検知が可能となっているほか、ドローンの活用により、従来は人が立ち入れなかった危険箇所の点検が可能となってきており、点検内容そのものの高度化も期待されています。

高機能素材の開発による補修の自動化・省力化の可能性

点検の自動化が進み、補修の緊急度が高い道路やトンネルが特定されるようになっても、タイムリーに補修できなければ重大な事故は防げません。このため、点検に関する技術だけでなく、コンクリートやアスファルトといった素材そのものに関する技術開発も注目されています。例えばその一つが、自己治癒型のコンクリートやアスファルトの素材技術です。これらはコンクリートと同じ成分を生成する微生物や、劣化したアスファルトを再活性化させる素材により、ひび割れや劣化を自己修復するもので、商用化に向けた取り組みが進められています。
このように、点検だけでなく交通インフラの補修そのものの自動化も視野に入りつつあり、より安心安全な交通インフラ環境が実現されようとしています。

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