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生活者はFinTech関連サービスをどう見ているのか?

金融コンサルティング部 阿部 夏希

#Fintech

2017/09/06

NRIは2016年に「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」を実施しました。世の中で話題となっているFinTechですが、調査結果からは、生活者がFinTech関連サービスをいま一つ利用できていない様子が見えてきました。

 

まだ身近ではないFinTech関連サービス

 

NRIでは、日本人の金融意識や行動がどのように変化しているかを探る目的で、2010年から3年おきに「NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)」を実施しています。2016年の調査では、新たにデジタル化の進展やネットサービスの動きに注目し、それらの利用実態を把握する項目を追加しています。となると、ここ1~2年話題になっているFinTech関連サービスの利用状況が気になるところ。生活者のFinTech利用は進んでいるのでしょうか。調査では、以下の8つの関連サービスを取り上げて、利用経験や関心の有無を尋ねています。

 

FinTech関連サービスの利用と関心度

 

8つのFinTech関連サービス

 家計簿アプリ  スマートフォンの家計簿アプリや家計管理ソフト
 テレマティクス保険  車載機器で取得した運転情報に応じた保険料設定の自動車保険
 アカウントアグリゲーション  複数金融機関の口座の残高などを一覧できるサービス
 ロボ・アドバイザー・サービス  営業・窓口担当者などによる資産運用アドバイスではなく、ネット上で質問に答えることで、投資診断や投資対象の選定などを自動で行うサービス
 クラウドファンディング  ネットなどを通じた人・組織などへの出資
 ウエアラブル保険  ウエアラブル端末で取得した健康情報に応じた保険料設定の生命保険
 仮想通貨  ビットコインなど、中央銀行が介在せず、実物資産の裏付けのない決済手段
 P2P融資  ネットなどを通じた個人間金融の媒介



調査を担当したNRIの阿部夏希は言います。「ほとんどのサービスは、現状まだ利用されていない段階にあります。唯一、利用が目立つ家計簿アプリも、実態はお小遣い帳アプリをスマホに入れているという程度のものだと思われます。FinTechに対する関心の度合いも低く、世の中で話題になっているわりには、生活者の身近なサービスとして広がっていないことを実感しました」

 

金融コンサルティング部 阿部 夏希

 

一方、金融業界ではFinTech関連サービスの提供を広げるために各社でさまざまなサービスの検討が進められています。今後、FinTechは金融サービスに大きな変化をもたらすのではないかと考えられています。3年前までほとんど聞くことがなかったFinTechですが、現在はそこここで耳にするようになっています。この動きが今後どのように生活者に広がっていくかは注目されます。

 

生活者の不安や操作の煩わしさの払拭と、金融リテラシーの向上が普及の鍵

 

生活者のFinTech関連サービスの利用があまり進んでいない背景には「セキュリティに対する不安」、「パスワード入力などの面倒さ」があると阿部は言います。ただ、セキュリティの強化と操作の面倒さの解消は相反する関係にあり、簡単に乗り越えるのは難しいのが現状です。

 

また、FinTech関連サービスの普及にもう一つ効果的であると考えられるのは、生活者の金融リテラシーの向上です。

 

「金融リテラシーが高い人ほど、FinTech関連サービスへの関心率や利用率がより高い傾向が現れています。金融リテラシーを高めることでサービスそのものへの理解が進み、FinTechに限らず、新しい金融サービスを受け入れてもらいやすくなるからだと考えられます」

 

私たちにごく当たり前のサービスとなった電子マネーも2000年代初めから始まったサービスです。FinTech関連サービスがこのような一般的なサービスとして広まるまでには、まだもう少し時間がかかりそうです。

 

FinTech関連サービスが、人々にもっと身近で利用しやすいものとなるためには、生活者自身の金融リテラシーが向上していくことと併せ、金融機関もまた、サービスをどんどん出していくだけではなく、生活者に対してそれらサービスの説明や理解を進めるための取り組みを行うなどの工夫を施すとともに、中長期的に生活者の金融リテラシーを上げていくための施策を講じる必要があると阿部は考えています。

 

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