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NRI トップ NRI JOURNAL 投資や決済手段だけではない――ビットコインの可能性

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投資や決済手段だけではない――ビットコインの可能性

ICT・メディア産業コンサルティング部 田中 大輔

#Fintech

2017/09/20

2017年夏、ビットコインの分裂が大きな話題となりましたが、分裂後は大きな混乱もなく、むしろ価格は上昇しました。市場をみると、新たにビットコイン決済を試験導入する企業も増えつつあり、ビットコインに代表される仮想通貨への期待感は高まっています。しかし、仮想通貨の不確実性は依然大きく、規制の整備もまだ十分ではありません。ICT・メディア産業コンサルティング部の田中大輔に、分裂騒動や今後の展望、仮想通貨の活用可能性について聞きました。

 

分裂騒動とは何だったのか

 

――分裂騒動で注目を集めたビットコインですが、世界では、そもそもどのような使い方がされていますか。

 

日本も含めて、全世界的に投資対象として盛り上がっています。中国人などが日常的な生活資金としてビットコインを使っているとも言われますが、ごく限定的です。

 

――投資ブームで急激に増えた流通量が原因で問題がおこりはじめ、その対応をめぐって今回の騒動が起こったわけですね。

 

そうです。ビットコインはブロックチェーンという過去からの取引を記録する仕組みで作られています。送金などの手続きはこの記録を付け加える作業が必要です。しかし、急激に流通量が増えたため、この作業に遅延が生じ、送金に時間がかかるなどの問題が目立ち始めました。新しい仮想通貨であればゼロから仕組みを導入できます。しかし、ビットコインの場合、すでにある仕組みでどう対応すべきかを考える必要がありました。過去の記録との連続性を維持するか、互換性をなくすかで、意見が異なる集団ができ、最終的にビットコインは分裂。分離したビットコイン・キャッシュは実質的に別の仮想通貨として進むことで落ち着きました。結果的には、一番混乱の少ない分かれ方となったと思います。

 

しかし、今後も仮想通貨をめぐってはいろいろな動きが出てくる可能性があり、ビットコインについても、再度分裂の可能性も出てきています。情報が交錯するので、仮想通貨の状況を正しく理解するためには、利用中の取引所が発信する情報に加えて、他の取引所からの情報も複数確認することが求められます。

 

価値があると信じるかどうかは各自に委ねられている

 

――仮想通貨に興味のある人は何に注意すべきですか。

 

社債や株式の場合、事前にさまざまな審査を経てから発行されますが、仮想通貨は現在、きちんとした裏付けがなくても誰でも発行できます。にもかかわらず、発行をすると巨額のお金が集まることもあるため、詐欺まがいの話も出てきています。

 

2017年4月に資金決済法が改正され、取引所に資金の保全、消費者保護、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を義務付けるなど仮想通貨に関する新制度ができました。「取引所(法律上は「仮想通貨交換業者」)が取り扱う対象となる仮想通貨」が指定されることになるので、お墨付きがつくかどうかを見ながら取引することが、仮想通貨を使ってみたい人にとっての入り口になるでしょう。もちろん、それで価値が保証されるわけではなく、各自でリスクをとる必要があります。

 

仮想通貨の「転々流通性」を活かした新たな仕組み

 

――仮想通貨は結局、投資目的の使い方にとどまるのでしょうか。

 

仮想通貨を「価値を持ったデータ」として捉えれば、活用方法はもっと広がります。ブロックチェーンをベースに、取引の証明が残り、誰がどのくらい権利を持つかがわかるので、効率的で透明性の高い取引の仕組みとなりうるのです。例えば、株式や借入証書の代わりとしても使用できますし、絵画や不動産の所有権、あるいは特定日時に部屋を利用する権利などを個人から個人へと転々流通させることも可能になります。現在は、さまざまなサービスで試験導入しながら、課題を洗い出している段階です。これから数年かけて、どこを効率化し、どこにブロックチェーンが適応できるかを見極めつつ、適切な形態を特定し、制度や仕組みを設計していくのだろうと思います。

しかし、規制を過度にかけることはイノベーションを阻害します。社会で流通させるには、既存の仕組みや法制度の在り方も含めて柔軟な対応を求め、整合性を図る必要があると考えます。企業単独ではできないので、役所や業界も交えて議論していかなくてはなりません。

 

――そのときに用いる仮想通貨として、ビットコインが選ばれるのでしょうか。

 

グローバルに使われている仮想通貨のベースにブロックチェーンがあります。すでに多くのブロックチェーンが動いていますが、外から攻撃されても、比較的安定して動いているのはビットコインです。イーサリアムも候補の一つとしては考えられます。しかしどちらも社会基盤として十分な仕組みとは言えません。セキュリティやガバナンス、データ管理などの問題を1つ1つ解決しながら、場合によっては新しいブロックチェーンを採用する必要もあるのではないかと考えています。

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