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NRI トップ NRI JOURNAL 憧れの宇宙に誰もが挑戦できる時代が到来!
―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(前編)

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憧れの宇宙に誰もが挑戦できる時代が到来!
―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(前編)

ICT・メディア産業コンサルティング部 佐藤 将史

2017/09/27

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)による準天頂衛星「みちびき」の打ち上げや、ベンチャー企業のロケット開発など、最近、宇宙関連のニュースをよく見かけるようになりました。今、世界の大勢は国家プロジェクトとしての宇宙開発から、民間主体の宇宙ビジネスへと変化しているのです。宇宙産業の創造・支援に携わってきたICT・メディア産業コンサルティング部の佐藤将史に、最前線の動向について聞きました。

 

世界のトレンドは民間主導モデル

 

――宇宙ビジネスでは、具体的にどのようなことを行うのですか。

 

宇宙ビジネスは大きく3タイプに分かれます。ロケット打ち上げや人工衛星の利活用を中心とした「地上系」ビジネス。有人宇宙旅行や宇宙の微重力下で実験や製造などの活動を行う「宇宙空間系」ビジネス。レアメタルなど資源を探索する「天体系」ビジネスです。

 

現在一番注目されているのが、地上系ビジネスです。衛星放送用の通信衛星、カメラ等を用いて地球の撮像や観測を行うリモートセンシング衛星、そして、ゲーム「ポケモンGO」の世界的ヒットに一役買った位置情報衛星を使ったビジネスです。

 

日本で話題となった「みちびき」は行政主体で位置情報衛星を打ち上げ、民間がサービスを展開する従来型のビジネスモデルでしたが、いま特に米国では、民間主導で通信衛星やリモートセンシング衛星を打ち上げて、インフラ整備からサービス化まですべて行うモデルにシフトしています。

 

 

ベンチャーが大企業の生産ラインを使う時代へ

 

――なぜ民間企業が参入しやすくなったのでしょうか。

 

ロケットや衛星の小型化と低コスト化が進んだからです。かつての衛星は1機の重さが数百キロ~数トンし、製造から打ち上げまで数百億円の費用を要していました。それが、イノベーションの結果、今では数十~数百キロ程度の小型衛星を億円単位で打ち上げ可能になりました。半導体や一般機械が飛躍的に進歩し、「ほとんどの部品はアマゾンでクリックすれば手に入る」と語るベンチャーの方もいるほどです。コンピュータサイエンスや機械工学などの知識や技術も活かせるので、宇宙分野で経験を積んでこなかった人でも宇宙にトライできる状況になってきました。

 

――『下町ロケット』のような話も増えそうですね。

 

『下町ロケット』は町工場が大企業に部品を納入する話でしたが、アメリカでは、大企業とベンチャーの立場が逆転している状況も見られます。たとえば、通信衛星ベンチャーの米OneWeb社は小型衛星を約650機打ち上げ、全世界を光ファイバーレベルの通信インフラ網でカバーする構想を掲げています。この650機の衛星の設計・生産は航空機製造のエアバスと提携をして進めることが発表されています。コンセプトや技術力があっても、ベンチャー単独では短期間で何百機も製造できません。そこで、大手に力を借りながら実現を目指しているのです。

 

こうした欧米での流れに呼応して、日本の宇宙ベンチャーも続々と登場しています。たとえば、堀江貴文さん出資のインターステラテクノロジズは、完全に民間の宇宙開発企業として、小型衛星を大量に打ち上げ、エンターテインメント産業などを巻き込みながら、新しい小型衛星の利用シーンを拡大したいと、意欲的に取り組んでいます。

 

キーワードは、AI技術と「宇宙×○○産業」

 

――今後の宇宙ビジネスの発展において、特に注目される技術はありますか。

 

AI技術が最も活かせる分野だと思います。ロケットの生産ライン管理、衛星の発射・管制、取得した情報の分析などに可能性があります。

 

従来のロケットが超高性能のスポーツカーだとすれば、現在求められているのは量産車の製造です。AIを使って生産ラインを管理し、自動化、無人化、効率化できれば、人手の乏しいベンチャーには朗報です。また、衛星分野では、管制室に何十人も詰めるのではなく、自動発射や自動管制で安心・安全に少人数で運用・管理しようと追求している企業もあります。

 

情報分析の分野でもAIの活用が可能です。今では1日1~複数回、衛星画像が入手できるうえ、アーカイブ化されるので、AIを活用したビッグデータ解析も可能です。たとえば「これは車である」という画像認証アルゴリズムを創れば、地球全体のデータで国を問わず車の交通量や密度を調べられるので、大きなビジネスチャンスになります。

 

――応用範囲はかなり広そうですね。

 

シリコンバレー発ベンチャーのOrbital Insight社は、リモートセンシング画像を用いて、金融、農業、物流、海運、小売業などにサービスを提供しています。車や農作物、船舶、オイルタンクなど、地球上のさまざまな情報を解析することで、金融取引やマーケティング戦略にも役立つデータとなるのです。そこで重要になるのが、「宇宙×○○産業」をどう発見・開拓するか。日本は世界3位の経済大国ですから、掛け算するフィールドは多く、さまざまな産業に可能性が眠っていると思います。

 


  • 準天頂衛星 日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ人工衛星

後編記事はこちら

日本企業は強さを発揮できるのか?―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(後編)

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