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―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(後編)

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日本企業は強さを発揮できるのか?
―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(後編)

ICT・メディア産業コンサルティング部 佐藤 将史

2017/10/04

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欧米に比べて、宇宙ビジネスで水を空けられてきた日本ですが、2016年11月に宇宙2法(宇宙活動法、リモートセンシング法)が成立し、2017年5月には内閣府から「宇宙産業ビジョン2030」が発表されました。ベンチャーの育成支援を強化し、2030年代までに現在の1.2兆円産業を倍増させることを目指しています。ICT・メディア産業コンサルティング部の佐藤将史に、日本の競争力や政府の支援策などについて聞きました。

 

技術力とユニークさでチャンスはある!

 

――宇宙ビジネスにおける日本の競争力をどのように見ていますか。

 

軌道と周波数の競争では、ハードウエアの信頼性と安全性を早期に確立し、大量に打ち上げられるプレーヤーが有利になります。この領域で突出しているのが欧米企業です。米OneWeb社は通信衛星650機、米Planet社はリモートセンシング衛星200機と、1社単独で政府を超えるレベルの打ち上げ計画を発表しています。

 

こうした物量面ではかないませんが、技術力では日本も負けていません。たとえば、「みちびき」は従来の衛星利用測位システム(GPS)では測定誤差10メートル程度のところを数センチのレベルの誤差で位置情報を提供することで、移動体を正確に遠隔操作できるなど高精度測位が可能です。アメリカ企業がカバーしている全領域やそれ以外にも、日本企業が必ず1~2社食い込んでいるところもユニークです。

 

寿命の尽きた衛星など「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」を処理するベンチャーは世界に数社だけですが、その1つ、日本のアストロスケールは最近28億円を調達するなど、非常に有望視されています。競争が一番激烈な衛星製造やデータ提供ビジネスでも、東大発ベンチャーのアクセルスペースがビジネスを拡大しています。こうした企業が各分野でエッジの効いた価値を提供できれば、存在感は出せると思います。

 

アンカーテナンシーでベンチャーを育成

 

――国としては、どのような支援が求められていますか。

 

いわゆるオールジャパン的な発想はベンチャーの文化に合いません。しかし、宇宙は国策的な部分もあり、政府が顧客になってくれることも大切です。

 

実はアメリカのベンチャーがこの分野で先行するようになったのも、米航空宇宙局(NASA)の方向転換がきっかけです。スペースシャトル退役後に予算が減らされる中、すべて自力で行うよりも、民間の力を活用した宇宙開発を目指そうと、産業振興策に力を入れ始めたのです。さらに、「アンカーテナンシー」の考えに立ってNASAが率先して顧客になったことで恩恵を受けたベンチャーが複数あり、スペースX社はその代表例です。

 

日本政府も現在、内閣府を中心に産業振興に努めています。賞金コンテストなどを開催したり、ベンチャー界や経済界の大物をメンターに起用するなど、ベンチャーの育成支援へと大きく舵を切りました。

 

 

――法律制定やビジョン発表などには、どのような効果が期待できますか。

 

法規制はベンチャーにとって窮屈で、自由な活動が阻害されるという側面がある一方で、一定の基準を示す役割も果たします。安全・安心な運用に向けて一定のルールを守っていることがわかれば、投資家や大企業はベンチャーへの出資や連携がしやすくなります。実際に2法が成立した後、メディア報道が増えて注目度が上がり、民間企業からの投資増にもつながっていると思います。

 

「宇宙産業ビジョン2030」では、今後の方向性が明確に打ち出されました。これまで漠然としたイメージしか持てなかった人にも、どのようなプレーヤーが参入可能で、どのようにビジネスとして成立するかというシナリオが明らかになりました。ルールとシナリオがそろったので、あとは実現に向けた活動とお金が動くのを待つばかりです。

 

ICT・メディア産業コンサルティング部 佐藤 将史

 

 

宇宙ビジネスを一緒に盛り上げたい

 

――ところで、NRIがこの分野に関わったきっかけはなんでしょう

 

私が個人的な興味からこの世界に単身で飛び込みました。最初はボランティアでしたが、その後、JAXAや国が絡む大きな話になってきたので、NRIとして仕事を請けることになったのです。われわれの知見やスキルを総動員して、政府の法規制やビジョン策定支援、プレーヤーの振興育成、顧客企業とベンチャーのマッチングなどに携わってきましたが、コンサルティングというよりも、社内外の仲間と一緒に産業創造に参加しているというのが実感です。

 

衛星データの活用領域は物流、都市計画、観光など幅広いのですが、大切なのは、ビジネスのどの部分で衛星データが活用できるかを見極めること。たとえば、石油タンクの画像解析データが金融サービスに役立つとしても、それに気づく人がいなければ実現しません。顧客企業も宇宙ベンチャーも互いのビジネスを知らないことが多いので、NRIがその橋渡し役になれたらと思っています。

 


  • アンカーテナンシー(anchor tenancy):民間の産業活動において政府が一定の調達を補償することにより、産業基盤の安定等を図ること

 

前編記事はこちら

憧れの宇宙に誰もが挑戦できる時代が到来!―変わる宇宙開発、拡大する宇宙ビジネス(前編)

 

 

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