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NRI JOURNAL

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NRI合併30周年――Quantumな飛躍に挑む

取締役会長 嶋本 正

#経営

2018/01/04

1988年1月4日、旧野村総合研究所と野村コンピュータシステムが合併して、新生野村総合研究所(NRI)が発足した。今年がちょうど30周年に当たる。

 

ナビゲーション&ソリューションによる企業価値の最大化

 

両社の合併は、新しい情報化時代に向けて、社会や産業界の課題を発見し対策案を提示するコンサルティングの機能と、課題解決に必要とされる情報システムを提供するITソリューションの機能を重ね合わせることで、飛躍的な成長を目指すことを意図していた。そして、2001年12月の東証一部上場に向けて、前年3月に企業理念を制定したが、その中でも、「ナビゲーション&ソリューションにより、企業価値の最大化を目指す」ことが経営目標であるとうたっている。現在、IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)などを核にした新たな産業革命が進み始めており、NRIはあらためて合併の真価が問われている。

 

爆発的に膨張するデータから最適な答えを導き出す

 

新たな産業革命の進展に伴い、モバイル端末やセンサーなどのIoT機器から集まる膨大なデータが蓄積されつつある。ソーシャルデータの量は、2000年当時の一年分が今では一日分に、2020年には、たった一時間分にしか相当しなくなるほか、センサーの数は2020年には世界で1兆個に達するともいわれている。これらの多様で微細なデータをうまく活用することができれば、社会や産業界の実態をより詳細に把握できるとともに、データの分析や処理を通じて、迅速・的確な課題解決にもつなげられるとの期待が膨らむ。

爆発的に膨張するデータ量の中から、有用な情報を見つけ出し活用するには、それをスムーズに処理できる能力が欠かせない。ムーアの法則に沿って、CPUの計算能力が指数関数的に伸びてきてはいるが、スーパーコンピュータをもってしても処理し切れないほど、データ量の膨張が進んでいる。そこで、注目され出しているのが、量子コンピュータである。この量子コンピュータがいよいよ実用化の段階に入り、膨大な選択肢から最適な答えを導き出す「組み合わせ最適化問題」では、実績を出し始めている。

 

「量子コンピュータ」が可能にする世界とは

 

さて、量子コンピュータとはいったいどのようなコンピュータで、従来のコンピュータと何が違うのだろうか。それは、相対性理論と並び、20世紀に出現した最高峰の科学技術である量子力学の上に成り立っている。われわれの身の回りにある物理法則(ニュートン力学や電磁気学)が通用しない「量子の振る舞い」を活用することで、従来のコンピュータの能力を大幅に凌駕する並列処理を実現しているとのことである。量子とは、物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っているさらに小さな電子・中性子・陽子といったもので、光と同様に「粒子」と「波動」の性質を併せ持つ。粒子とは、存在するかしないかがはっきりしている物質のことであり、数えることのできる「デジタル」なものである。

一方、波動は、連続して切れ目のない状態を表しており、数えることのできない「アナログ」なものである。「量子」とはこのデジタルとアナログの双方の性質を持つものといえよう。従来のコンピュータは、よく知られているように「デジタル」な0か1を表すビットが処理の基本単位になっており、その計算能力の向上により大量で高速の処理を実現してきた。これに対し、量子コンピュータは、さらに量子の「アナログ」な性質を重ね合わせることで、0と1のそれぞれの「状態」をも処理の基本単位とすることを可能にした。これにより基本単位を大幅に拡大することで、極めて高い処理能力を獲得できるようになる。

 

「デジタル」と「アナログ」の性質を重ねて「量子的」な飛躍を目指す

 

この「デジタル」と「アナログ」の性質を重ね合わせて飛躍的な処理能力を獲得できるということは、当社のケイパビリティ強化を検討する上でも、示唆に富む。当社の事業の大半を占めるITソリューション事業は「デジタル」な性質である一方、コンサルティング事業は「アナログ」な性質を持つといえる。前者は、まさしく従来のコンピュータを活用した情報システムにかかわる事業である。情報システムは正しい処理結果を導き出すのがその使命であり、0か1かがはっきりしている。一方、コンサルティングは、政策や経営課題など、必ずしも正解が明確でなく、0か1かをシンプルに判断できない世界が対象であり「アナログ」な対応が欠かせない。

今までの当社の成長は、情報化が進展する中で、「デジタル」なITソリューション事業が牽引してきた。しかし、新たな産業革命の時代に入り、環境変化が激しく多様性がますます拡大する中で、社会や産業界の課題は大きく膨らみ、その解決には、従来の「デジタル」な方法に磨きをかけていくやり方では、もはや対応仕切れなくなりつつある。NRI合併30周年に当たり、コンサルティングの「アナログ」の力を従来以上に密接に重ね合わせることで、量子的(Quantumな)飛躍を目指したい。

 

(「知的資産創造」2018年新春号 MESSAGE)

ナレッジ・インサイト 知的資産創造

特集:「NRI未来創発フォーラム2017」より デジタルが拓く近未来

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