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変革の流儀 信頼によるマネジメント

知的資産創造7月号 MESSAGE

#経営

2018/09/03

これからの日本企業のマネジメントは、従来とは比較にならないくらい難しいものになるだろう。その要因を大別すると4つある。
第一に、デジタル化の影響で産業構造変化のスピードが著しく加速していることである。業界の垣根がなくなり、ある日突然、考えてもいなかった競争相手が登場するようになっている。IT業界ならこの後5年、10年で、グーグルを歯牙にもかけない新たな企業が異業種から出てくるかもしれない。
第二に、国内市場が少子高齢化の影響で成熟し、かつ慢性的な人手不足という環境下で企業活動を行わなければならないことである。
第三に、新興国台頭のスピードが非常に速いことである。競争相手としても提携相手としても市場としても、新興国を無視できない状態になっている。今時、「新興国は人件費が安い」などと日本との優劣や遅速を比較する意味はなく、すべて対等なライバルやパートナーとしての存在になってくる。
第四に、上記の理由から、従来にも増して「グローバル・オペレーション」が必須になり、そのうち「グローバルな組織」が当たり前の時代になるということである。
まとめると、これからはまさにグローバルに最適なエコシステムに則したマネジメントが必要になるのである。

過去の成功体験を捨てることがこれからの日本企業に求められる

環境変化が穏やかであれば、ボトムアップもしくはミドルダウンといわれる日本的経営は、現場の動機付けにおいて優れた方法である。それが日本企業の成功体験になり、競争力の源泉ともなった。しかし環境変化が速くなり、また不確実性が拡大してくると、長期的な戦略を俯瞰的な立場から見通しつつ、全体最適で俊敏な意思決定を行い続けることが必要になる。
それは「現場」だけでは難しい。可能なのは、俊敏な意思決定に責任が取れるマネジメントだけである。マネジメントの意思決定すなわちリーダーシップでは、たとえ短期的な業績を犠牲にしても、長期的な視点から環境変化に適応するための事業構造の改革、M&Aなどを実行することが不可欠である。進化する時には常に「産みの苦しみ」が伴う。しかし、その苦しみがマネジメントの意思決定、リーダーシップにおいては極めて重要なのである。

これまで日本企業は、優れた現場力を最大限活用することで成功してきた。このことに異議を唱える方は少数派だと思う。かつて野村総合研究所(NRI)も、まさに現場力を最大限活用してきたからこそ伸びてきた会社である。そして欧米企業は、日本人の勤勉さに舌を巻いていた。
だが、ここに致命的な落とし穴が存在するとしたらどうだろうか。
日本企業におけるこうした議論には、経営学でよく引用される「成功の逆襲」というバイアスがあるのではないだろうか。それは、たとえば「うちは匠の技があるから大丈夫」「日本は現場での改善活動を主体にしたモノづくりで強みを持つ。欧米の真似や後追いでは日本の競争優位は維持できない」といった根拠のない自信を耳にするたびに、過去の成功体験に酔って判断を誤ってしまうということだ。
真のグローバル企業になるためには、思考実験としても「日本をいったん捨てる」ことが必要だと思う。日本人だけの、いわゆる「あうん」の呼吸での経営は、いつまで経ってもグローバル展開には活用できない。それどころか、グローバル展開の足かせになっているといわれても仕方がないだろう。
大切なことは、経営ノウハウの形式知化、組織知化、システム化である。マネジメントにおいて、それらによって円滑なグローバル・オペレーションが初めて確立される。このことは強調してもし過ぎることはない。

信頼関係を築くことで、組織、そしてマネジメントの変革が進む

メディアでは、第4次産業革命、IoT、AI、働き方改革、生産性革新、事業承継、人手不足、ベンチャー投資などの問題が、それぞれ個別のイシュー(論点)として議論されている。しかし、企業にとってこれらの解決策はおそらく一つしかない。限界費用ゼロのソフトウエアという経営資源を活用し、事業を多角化できる体質に進化して人間の創造性を最大限に引き出し、世界のさまざまな問題解決に貢献していけるグローバル企業として市民権を得ることである。
それはすなわち、生産性を高める「創造性に富んだ知恵」というソフトウエアは、無限の可能性を秘めているので、考えに考え抜いて知恵を引き出し続けよう、ということである。
そして、組織のマネジメントとは、さまざまな知恵を持った人材との信頼関係に基づいて初めて実現できるものだ。これこそ「ミューチャル・リスペクト=相互尊重」である。そして、その信頼があってこそ組織は変革でき、またマネジメントそのものも変革し得る。「変革の流儀」とは、そのように「組織に築かれた信頼関係に基づいた変革のマネジメント」ということに尽きるのである。

知的資産創造7月号 MESSAGE

NRIオピニオン 知的資産創造

特集:AIの「民主化」とデジタル変革

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