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デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた経営層の役割

野村総合研究所(NRI)経営役 コンサルティング事業本部 副本部長 森沢 伊智郎

2019/09/03

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デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが、多くの企業で活発化している。その一方で、顧客からは自社のDXが必ずしも順調に進んでいないという相談も増えている。典型的なものは、事業単位で進めてきた取り組みを実現しようとすると、他部門との調整が難しく、スタックしてしまうというものである。DXを推進していく上で、「デジタル」ではなく「トランスフォーメーション(変革)」の部分で、さまざまな課題が発生しているのである。
DXは、さまざまな取り組みによって構成される長期・大規模プロジェクトとしての側面を持つ。こういったプロジェクトを完遂するためにはいくつかの定石があるが、主なものとしては、大義の設定、個々のプロジェクトの整合性の担保、ゴールと実現に向けた責任・権限の明確化が挙げられる。今後、DXの実現に向けて、特に経営層において何が求められるかを、この定石の観点から考えてみたい。

日本企業が行ってきた変革の経験がDXの足かせとなる場合がある

企業を変革していくためには、何のために変革するのかという大義が必要である。これまで日本企業が行ってきた変革は、その大半がホラーストーリー(考え得る最悪の事態)から大義を導いてきた。DXにおいてもこの傾向は続いているが、必ずしも適切ではない。
コスト構造改革のような目標、手段、期限が明確な変革においては、ホラーストーリーがリアルであるほどその必要性が明確になり、変革をスムーズに進めることができる。しかし、 DXのように目標や手段が状況に応じて変化し、長期的かつ継続的取り組みが求められる変革では、時間の経過や事業環境の変化により大義そのものが色あせるリスクがある。また、幾度となく繰り返されたことによって、日本企業の現場はホラーストーリーを大義とした変革そのものに、ある種の慣れと疲れを感じている。
このような環境下で経営層に求められることは、危機感の醸成だけでなく、時間の経過や環境の変化に左右されない普遍的な大義を設定し、全社への浸透を図ることである。具体的には、ミッション、ビジョン、バリューといった企業理念に基づく大義の設定が有効だと考える。

全社レベルでのDXの取り組みにはグランドデザインの策定が重要となる

DXの実現に向けては、事業部門が主導する個々の取り組みだけでなく、組織改編や制度の設計・導入、既存システムの刷新など多様な取り組みが並行して実施される。現場でスピードを追求すべきものだけでなく、全社的視点から対応すべき取り組みも存在するし、個々の取り組みの時間軸はおのずと異なってくる。そのため、そのすべてを把握して整合性を担保していかなければ、不整合が発生し進捗は滞る。
しかし、DXへの取り組みは極めて急速に立ち上がってきたため、事業部門の取り組みが全社の取り組みに先行する傾向がある。さらに、スピード重視という風潮が強く、現場への配慮から全社としての統制を強めることを躊躇する傾向も強い。その結果、全社レベルでの横串を通すためのビジョンや枠組みの提示が後手に回り、個々の取り組みが孤立する事態が発生しているのである。
このような事態の収拾には、全社レベルの方針を定めたグランドデザインが極めて重要になるが、DXに関するグランドデザインの策定は後手に回っている。策定していない企業は、早急に取り組むべきである。全社で行われている個々の取り組みを把握し、その関連を整理し、全社として統制をかけていかなければならないものを明確にする。特にほかの取り組みへの影響が大きいものについては、コーポレート部門の直轄でその進捗を厳格に管理していくことが求められる。

DXへの取り組みは、総じて事業部門が先行する。その結果、それぞれの取り組みのゴールや実現に向けた責任・権限が全社レベルでは曖昧なまま放置されているケースが散見される。取り組みが事業部主導で進められること自体には何の問題もない。しかし多くの場合、その実現には全社レベルでの調整が必要な局面が発生するため、その調整がスムーズに行える環境を用意しておくことが必要となる。
こうした状況の解決に向けては、前述したグランドデザインの策定を契機としてそれぞれの取り組みのゴールと責任・権限を再設定することが有効である。事業部門の裁量を奪うのではなく、あくまでもスムーズな進捗を全社レベルで支援するための手段として位置づけることも重要である。

DXは事業部門がその担い手となることが多い。それゆえに全社レベルのボトルネックがその進捗を阻害してしまうのである。ボトルネックの解消は経営層の責任である。並行して実施される多様な取り組みの成果を着実に刈り取りながら、結果としてよりよい方向に変わり続ける企業風土に結実させるために、全社としての方向付けと横串を通すための舵取りについては、経営層自らが強いリーダーシップを持って取り組んでいくことが求められる。

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