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DXに失敗しないために

専務執行役員DX担当 兼 NRIデジタル 会長・CEO 増谷 洋

DX

2021/07/19

コロナ禍を一つのきっかけとして、世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが非常に活発化している。ところが、経済産業省(METI)の「DXレポート2」(2020年12月28日発行)によると、日本企業の9割以上が、自社は「DX未着手企業(DXについて知らない)」か「DX途上企業(DXを進めたいが、散発的な実施にとどまっている)」であると回答している。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)と野村総合研究所(NRI)の共同調査(2020年5月「デジタル化の取り組みに関する調査」)からも、多くの企業がデジタル化推進のための活動に本格着手できていないと考えていることが分かっている。日本企業がこうした状況では、ますます世界から遅れをとり、「デジタル後進国日本」の汚名を返上することがかなわない。これは由々しき問題である。
ところで、そもそもDXとは何なのだろうか。筆者が定義するDXとは、「企業が既存の強みを活かし、デジタル時代に対応したビジネスモデルと組織能力の変革を通じて、競争優位を獲得・確立していくこと」となる。キーワードは「変革」である。DXへの取り組みがなかなか進展しないと考えている企業は、この変革を自らの手で進められないからであると思う。

日本企業のDX推進における「総合的価値の共有」の重要性

DXと企業変革のことを考察するに当たって、組織論の古典的名著である『失敗の本質』(野中郁次郎、他)をあらためて読み返してみた。同書の要点をごく簡単に述べると、旧日本軍は自らの戦略と組織を環境変化に適応させることに失敗した、つまり「自己革新」に失敗したことが崩壊の原因であるということだ。そして同書は、組織が継続的に環境に適応していくための条件として、「自己革新組織」の原則を列挙している。自己革新能力のある組織にとって必要な条件には、①不均衡の創造、②自律性の確保、③創造的破壊による突出、④異端・偶然との共存、⑤知識の淘汰と蓄積、⑥総合的価値の共有、の6つがある。
筆者は、日本企業がDXを推進するに当たって、これらの中で「⑥総合的価値の共有」が最も重要だと考えている。「総合的価値」は「ビジョン」と言い換えてもよいかもしれない。日本企業はビジョンなきままボトムアップ活動の集合体になりやすく、改善活動にとどまってしまう傾向がある。総合力を発揮し、変革につなげるためには、組織全体の方向性をビジョンという形で全員に理解させなければならない。
前述のJUASとNRIの共同調査によると、DX推進のトップランナーとセカンドランナーおよびフォロワーとの間では、「デジタルビジネスに関する戦略」策定状況の差が非常に大きいという結果が出ている。デジタル戦略への対応というのは、動きの速いデジタル技術の進歩や環境変化に、いかに迅速に適応できるかが勝敗を分ける。デジタル化の最前線で臨機応変、スピーディに変化へ対応するためには、戦略やビジョン、さらには世界観まで企業内でしっかりと共有しておく必要がある。

デジタル化への対応に必要な組織の自己変革能力

マサチューセッツ工科大学情報システム研究センター(MIT CISR)によると、「(企業)変革が進まないのは、確立した習慣(企業文化)を変えるのが難しいから」ということが最大の理由だという。確かに日本の従来型大企業では、さまざまなしがらみが実に多く、長年にわたって培われた企業文化を変えるのは容易なことではないだろう。そのため、企業変革を進めるに当たって重要なことは、企業文化を全面的に見直すのではなく、個々の習慣を徐々に変えていくことであり、最善の方法は核となる行動様式を新たに取り入れていくことだと思う。したがって、従来型大企業がDXを推進していくためには、これまでから見れば「異端」とも思われる価値観や人材を受け入れながら、新たなデジタルサービスを提供する事業のみを再デザインすることに集中すればよい。

NRIはデジタル戦略策定やデジタル組織変革、人材育成のコンサルティングを依頼される機会は多いが、コンサルティングやシステム開発にとどまらず、お客様と一緒に「変革」を実現することを目指している。そのために、お客様と各種のジョイントベンチャーなども組成して、同じ船に必要な双方の人材を乗せ、迅速に変化対応しながら価値共創に取り組んでいる。そして、「異端・偶然との共存」を進めるため、筆者が会長・CEOを務めるグループ会社のNRIデジタルとともに、お客様に伴走していきたい。
日本的企業・組織はデジタル化という新たな環境変化に対応し、自分自身を変革していくために、自己革新能力を創造できるかどうかが問われているのである。自己革新能力を高め、今こそ「デジタル後進国日本」という汚名を返上しようではないか。NRIグループは、微力ながらそのお役に立てるよう鋭意努力していくつもりである。そして今後は、企業のビジネスモデルの変革にとどまらず、社会課題解決を実現するためのデジタル社会資本創出につなげていきたい。

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株式会社野村総合研究所
コーポレートコミュニケーション部
E-mail: kouhou@nri.co.jp

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