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コラム 神宮健のFocus on 中国金融経済

2年ぶりの人民銀行の利下げについて

2014/11/25

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資金調達難の緩和を狙う

人民銀行は11月21日に、22日より金融機関の人民元貸出・預金基準金利を引下げると発表した。1年物の貸出金利は6.0%から5.6%に引下げられ、1年物預金金利は3%から2.75%に引下げられた(表参照)。また、預金金利の変動上限を、基準金利の1.1倍から1.2倍へと引上げた。さらに、期間毎に基準金利が定められているが、その満期構成が簡素化された。具体的には、6ヵ月と1年が1年以内となり、1年~3年と3年~5年が1~5年になり、5年超については今後基準金利を設定しないことになった(各行が独自に決定できる)。

人民銀行の発表によれば、第一に、今回の利下げは実質金利の合理的水準への回帰を促すもので、これにより企業の資金調達コスト高という顕著な問題の緩和に注力するものである。足元で経済成長への下押し圧力が強い中で、特に小企業・零細企業の資金調達コストの受容能力が低下していることが指摘されている。

今回は、貸出金利の下げ幅が預金金利の下げ幅より大きい、いわゆる「非対称的」な措置である。貸出金利については、基準金利を中心とした変動の上下限が既に撤廃されており(2013年)、事実上自由化されているが、貸出基準金利にはなお金利交渉の際などにおけるガイド的な意義が残っている。一方、預金金利の下げ幅は比較的小さく、実質金利をプラスに保つという消費者に対する配慮があると見られる。

また、人民銀行の発表は、今回の利下げは政策上ニュートラルであり、穏健な金融政策に変化はないとしている。テクニカルには、インフレ率が低下しており(期待インフレも低下しているはずなので)名目金利を下げられるとの判断と見られる。また、現在、中国経済には強い経済刺激は必要ないとしている。この背景には、リーマンショック時の際に採られた4兆元の超大型刺激策の後遺症(具体的には、地方政府債務問題や不動産バブル)に悩まされる今日、政策当局者やシンクタンクのエコノミストの間に漂う過度な景気刺激策に対する強い反省がある。

最近の金融政策を振り返ると、昨年からマクロレベルでは流動性が十分されているものの必要な分野(中小零細企業等)に資金がうまく流れていないことが問題であることから、銀行のオフバランス取引(シャドーバンキング)への規制を強化する一方で、ターゲットを決めた(いわゆる「定向」)緩和措置により、資金の流れの構成を改善しようとしてきた。足元では、景気減速がさらにはっきりする中で、最近の国務院常務会議では銀行融資を出しやすくする方針が確認されたと報道されている(「新融十条」。預貸比率規制等の緩和等が含まれている模様)。中小企業の資金調達難がさらに深刻化しつつあることが推察される。こうした中で採られた今回の利下げ効果がどの程度かは現時点で不明であるが、一連の動きを見ると、金融当局は、大きな緩和には依然慎重ではあるものの、中小企業等の資金調達難を緩和し景気下支えに動いていることがはっきりしてきた。

金利自由化の推進

今回の金利自由化への動き、具体的には預金金利の変動上限拡大については、金融機関のガバナンス構造が不断に改善し、また自主的に価格(金利)を決定する能力やリスクコントロール能力がはっきりと向上していることが背景として挙げられている。ただしし実際は、昨年の「余額宝」に続いて今年P2P金融が話題になるなど、ネット金融を中心に自由金利の金融が市場主導で次々と現れており、こうした動きに金利自由化を催促されている感は否めない。

預金金利の上限が拡大したため、預金金利水準を今回の利下げ前の水準に保つことも可能である。実際には、引下げ前の基準金利の水準に設定している銀行が見られる。また、5年物の預金金利は実際に各行が独自に決めている(報道によれば、4大銀行の場合、3ヵ月、6ヵ月、1年物の預金金利は利下げ前の基準金利と同じ。基準金利が発表されなくなった5年物の預金金利は4.25%。5年物については、4大銀行以外ではより高いところもある)。人民銀行は、こうした動きを、将来の預金金利上限規制の撤廃にむけた基礎固めとみなしている。

人民銀行の発表は、今後、適時に企業・個人向けの大口預金等を導入するとしており、今後、金利自由化はこれまでの予定通り大口預金からさらに進んでいくことが示唆されている。

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