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日本銀行は保有国債の平均残存期間短期化を進める見通し

2018/09/03

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日本銀行は9月の長期国債買入れ予定を修正

日本銀行は7月31日の政策修正の実施以降、市場の予想に反して、長期国債買入れオペの減額を見送ってきた。しかし8月31日に公表した9月の国債買入れ計画では、1年超5年以下、5年超10年以下の長期国債の月間買入れオペの回数を前回8月の6回から5回へと減少させた。

これは、長期国債の買入れ額をさらに縮小させていくこと示唆している可能性がある一方、9月はオペ実施に適した日数が少なかったという技術的な要因によるものである可能性もあり、現時点ではどちらであるかは判然としていない。

他方、1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下の1回あたりの買入れ額のレンジについては上限を引き上げた。買入れ回数を減らす一方で1回当りの買入れ額を増額して、トータルの買入れ額を維持する意図と読むことも可能だ。

保有する長期国債の平均残存期間の短期化が見込まれる

しかし、仮に今回の修正が技術的な要因によるものだとしても、この先日本銀行は、長期国債の買入れ額をさらに縮小させ、7月に新たに変動許容レンジの上限を引き上げた10年国債利回りの上昇を容認することが見込まれる。それに加えて、日本銀行が新規に買入れる長期国債の平均残存期間、そして保有長期国債の平均残存期間を短期化していくのではないかと筆者は予想している。

保有国債の平均残存期間の短期化は、①イールドカーブをスティープ化させることから、金融緩和効果を減じる正常化の一環と理解できる。さらに、この措置は、②償還見合いで、将来の保有国債残高の縮小をより迅速にさせる、③日本銀行が将来、短期金利を引上げる場合に、保有する国債からの利子所得の増加を助け、日本銀行の財務悪化のリスクを軽減する、という大きなプラス効果があり、この面からも、保有国債の平均残存期間の短期化は、重要な正常化策の一環と理解できる。

保有国債の平均残存期間の短期化は「事実上の正常化3.0」か

保有国債の平均残存期間は、日本銀行が量的・質的金融緩和を始める直前には4年未満だったが、その後は上昇を続け、2016年には7.5年程度に達した。

ただし、2016年9月のイールドカーブ・コントロール(YCC)導入以降、長期国債の買入れ増加額のペースを縮小させていく中でも、平均残存期間はほぼ横ばい傾向を辿ってきたと見られる。筆者の推計によると、8月20日時点での保有国債の平均残存期間は7.6年とほぼ2年前と同水準である。

しかし今後は、日本銀行は、正常化の一環である平均残存期間の短期化を進めていくのではないか。その過程では10年国債利回りにさらに上昇圧力が掛かると共に、超長期の利回りも上昇し、イールドカーブはさらにスティープ化しよう。

日本銀行は、正常化策を実施していることを正式には認めていないが、YCC導入以降の長期国債買入れ増加ペースの減額(ステルス・テーパリング)は、「事実上の正常化1.0」、先般実施した、YCCの修正による長期金利の上昇容認(ステルス・利上げ)は「事実上の正常化2.0」、そして保有国債の平均残存期間の短期化は、「事実上の正常化3.0」と言えるのではないか。長期国債買い入れ増加ペースの削減が相応に進んだことから、今度は保有国債の構成を変えていくという、「量」から「質」へと事実上の正常化の比重を移していくとも解釈できるだろう。

日本銀行は、既に述べたような、保有国債の平均残存期間の短期化がもたらす大きなメリットを熟知しているはずだ。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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