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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

イタリアの銀行の苦境が高まる

2018/11/30

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イタリアで欧州債務問題が再燃

財政政策を巡るポピュリスト連立政権と欧州連合(EU)との間の対立が続くなど、イタリアの政治情勢に不透明感が高まっている。それが、イタリア国債の利回り上昇を招き、さらにイタリアの銀行の財務環境を悪化させている。欧州債務問題が再燃しているかのようだ。

経済協力開発機構(OECD)の分析(General Assessment of The Macroeconomic Situation, November 2018)によれば、イタリア国債の利回りは、足もとで過去3年間の平均水準を1%以上上回っている。この利回り上昇(価格下落)は、イタリア国債を大量に保有するイタリアの銀行に損失をもたらし、また資金調達コストの上昇を通じて、先行きの経営環境への不安を高めている。その結果、2018年4月末以降、イタリアの銀行の株価は35%程度下落し、破綻リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、一気に2倍程度にまで高まった。欧州債務問題が深刻化した時と同様に、財政と銀行システムの間で相乗的な悪化のリスクが、イタリアで再燃している。

イタリアの銀行の財務環境は、一時期に比べれば改善している。自己資本比率(Tier1ベース)は、足もとで14.6%と、この10年間で2倍の水準まで高まった。また、不良債権の削減も進んできた。ただし、貸出に占める不良債権の比率は9%程度とまだ高い水準にある。さらにイタリア経済に対する、先行きの不透明感から、不良債権処理も滞ってきたのが現状だ。

OECDの分析によると、イタリア国債の利回り上昇、自己資本比率の低下、不良債権比率の上昇の3つが、イタリアの銀行の貸出金利を、先行き上昇させる傾向にあるという。このうち既にイタリア国債の利回り上昇は顕著となっている。今後、それが貸出金利上昇を通じて経済活動に悪影響を与えれば、それがイタリアの銀行の収益を損ねることや、貸出の焦げ付きを通じて不良債権比率の上昇、自己資本比率の低下をもたらす。それらが、さらなる貸出金利の上昇へとつながっていく可能性がある。その場合、イタリアの銀行の財務環境の悪化と経済環境の悪化が、相乗的に高まる事態となるだろう。

銀行の財務環境と経済環境の相乗的な悪化の連鎖

2020年6月から2021年3月の間に、イタリアの銀行は、欧州中央銀行(ECB)から、長期資金供給オペレーション(TLTRO)を通じて借入れた700億ユーロの返済期限を迎える。これは、総負債額の7%にも達する規模だ。イタリアの銀行は、その債務返済のために新たに資金調達を強いられ、それは資金調達コストを一段と高めることになるだろう。

イタリアの銀行が保有するイタリア国債の規模は、平均で自己資本(Tier1ベース)の70%近くにも達している。こうしたもとで、政治・経済情勢の不透明感からイタリアの国債利回りがさらに上昇(価格が下落)すれば、イタリアの銀行に損失が生じ、自己資本比率は低下していく。そこで、自己資本比率を高めるために増資を行えば、イタリアの銀行の株価はさらに下がってしまうだろう。それを回避しつつ自己資本比率を高めるためには、貸出を中心にリスク資産の削減を進めることが必要となるが、それはイタリア経済を一段と悪化させ、再びイタリアの銀行の財務環境を悪化させてしまうだろう。

このように、イタリアの銀行問題は、容易には出口を見いだせない、厳しい状況に陥っている。

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