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コラム 井上哲也のReview on Central Banking

12月FOMCのMinutes-Data dependent

2019/01/10

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はじめに

12月FOMCのMinuteに示された議論の内容は、先般のパウエル議長による講演やコメントの内容とむしろ整合的であり、従ってその公表自体が金融市場に大きなインパクトを与えることは考えにくい。一方で、12月FOMC直後のパウエル議長による記者会見のトーンとは異なる印象を与えるものである。その点も念頭に置きながら、いつものように内容を検討したい。

景気と物価の判断

FOMCメンバーは、足許までは実体経済が堅調に拡大していることを確認しており、その点では執行部による報告と一致している。ただし、そのことと、金融市場や企業経営者が表明した先行きへの不安との乖離も明確に認識している(8ページ左段)。

需要項目別(8ページ右段以降)には、個人消費については従来の好材料に加えて、エネルギー価格の下落による実質購買力の増加もあって強気な見方が維持されている一方、住宅投資は明確に減速していることを確認している。設備投資も、堅調ではあるが、貿易摩擦の深刻化や減税効果の減衰、金融市場の不安定化等によって、前回(11月)FOMC時点よりもスタンスが慎重化したことが、多くの地区連銀から報告されている。

この間、FOMCメンバーは雇用のタイト化が継続するとの見方を維持し、労働参加率の改善の継続については意見が分かれている(9ページ左段)。ただし、地区連銀の総裁も、労働力の確保が困難化する傾向を認めつつ、賃金以外の雇用条件による対応がみられる点を指摘しているほか、多く(many)のメンバーはマクロの賃金上昇率が生産性上昇と整合的である点を確認している。

物価についても、FOMCメンバーは2%のインフレ目標と整合的な動きを示すとの見方で概ね(generally)一致している(9ページ左段)。なお、金融市場で(TIPSの利回りやイールドカーブの形状が示唆する)インフレ期待の低下に関しては、サーベイベースのインフレ期待が安定している点からみて、懸念すべき動きではないとの評価を示している。

金融環境とリスクバランス

12月FOMCでの議論が注目された金融環境についても、前回(11月)FOMC以降にタイト化した点を確認している(9ページ右段)。現象面では、株価の下落やクレジット・スプレッドの拡大、イールドカーブのフラット化が挙げられているが、興味深いことにドル相場への言及はみられない。

その上で、2名(a couple of)のメンバーが、金融環境のタイト化が継続した場合には個人消費や設備投資を下押しするとしつつも、現時点では影響は明確でないと指摘し、FOMCとして実体経済への影響を注視することでメンバーの意見が一致している。

また、リスクバランスについては、パウエル議長が記者会見で説明したように景気と物価とも中立で据え置いた(9ページ右段以降)。

双方にとっての下方要因としては、世界経済の予想以上の減速や、減税効果の減衰、貿易摩擦の深刻化や金融環境のタイト化に加えて、利上げ継続に伴う予想以上の影響といった金融市場で共有されている内容が挙げられている。

一方、景気に関する上方要因としては減税効果の予想以上の実現と貿易摩擦の不透明性の解消、物価については経済資源の稼働率が高い下で、企業がコスト上昇を価格に反映させやすい環境が挙げられている。

政策運営

これらの議論を踏まえて、12月FOMCは25bpの追加利上げを全会一致で決定した訳であるが、数名(a few)のメンバーが利上げに対する慎重論を示している(10ページ左段)。その理由としては、インフレ圧力の高まりが欠如していることと、金融市場のボラティリティの上昇や景気の先行きの不透明化が経済に与える影響を見極めるべきことが挙げられている。

こうした慎重なトーンは、今後の政策運営に関する議論において、より明確になっている(10ページ左段)。つまり、FOMCメンバーは、政策金利が既に中立値の推計値の下限に達する中で、金融市場のボラティリティの上昇や世界経済の先行きに対する懸念の増加によって、今後の利上げのタイミングや程度が従来よりも不透明になったとの考えを示している。

従って、FOMCとしては今後の利上げについてpatientでありうるとし、多く(a number of)のFOMCメンバーは、利上げを決定する前に、明確になりつるあるリスクがどのように顕現化し、経済にどのような影響を与えるのか、金融緩和の解除がどのような影響を与えているかを評価することが重要であると述べた。

さらに、FOMCメンバーは、新たに公表される経済指標が経済見通しに対してもつ意味合いに基づいて、今後の政策を運営する方針を確認するとともに、今後の利上げペースも利上げの最高到達点もともに、予め定められている訳ではないことも確認している。

そして、data-dependentな政策運営の方針と、現時点では追加利上げの余地が少ないとの判断を明確に示すため、12月FOMCの声明文では、「緩やかな利上げの継続を予想する」という表現を、「数回の利上げが適切と判断する」に改めたとしている。

コミュニケーション

このように今回公表されたMinutesは、12月FOMCで今後の政策運営に関して慎重な線での議論が行われたことを示唆している。その意味では、仮にBOEのようにMinutesを直ちに公表すれば、金融市場の不安定化を多少は抑止できたかもしれない。また、先に見たように、下方要因の顕著な台頭を確認しながら、リスクバランスを中立に維持したことの妥当性を問うことも可能であろう。

一方で、12月FOMCの時点では、少なくともハードデータの悪化は住宅投資などに限定されていただけに、経済見通しの明確な下方修正や、その結果としての利上げ見通しの大きな変更は難しかった面もあろう。この点はdata-dependentな政策運営を標榜する限り、特に市場との理解の共有において今後も課題になろう。

実は、今回のMinutesの冒頭にも、金融政策の長期的な運営方針に関する議論が収録されている。焦点は短期金利の上昇圧力が高い下でのIOERの運営である(機会を改めて検討したい)が、バランスシートの規模や内容に関する議論が行われたことも窺われる。先般のパウエル議長によるバランスシート運営の柔軟化に関する発言も、FOMCにおけるこうした議論の文脈で捉えるべき意味合いのものかもしれない。

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