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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

政府統計の信頼性をどう回復するか

2019/01/28

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政府統計の合理化も進めるべき

1月28日に通常国会が召集された。そこで、与野党間での大きな論戦のテーマとなっているのは、厚生労働省による毎月勤労統計の不適切調査の問題だ。問題発覚後にも、同統計に基づいた雇用・労災保険などで過小給付になっていることが明らかになった。そのため、政府は19年度予算案に追加給付費を盛り込み、閣議決定をやり直すなど、異例の対応を強いられた。また、不適切調査の問題に関する第3者委員会の調査で、厚生労働省の職員が報告書作成に関与し、また省幹部が第3者委員会による職員へのヒアリングに同席していたこと、などが明らかになった。また、問題を受けて各省庁で実施された調査で、政府の基幹統計全体の4割で、誤りがあったことが確認された。

昨年末の問題発覚から既に1か月が経過したが、その間にも、このように問題はさらに拡大する傾向を見せたのである。これらを受けて、日本経済新聞が28日に公表した世論調査では、政府統計を信頼できないとの回答が、79%にも達している。

問題を受けて、政策立案や社会保障給付にも影響する政府統計の重要性について、担当職員の意識の低さが強く批判されている。それは全くその通りだ。しかし、今回の問題をきっかけに、政府統計の精度を高める方向での見直しばかりではなく、合理化、効率化を進めることもまた重要となるではないか。政府統計の作成に充てることができる、予算面、人材面でのリソースは限られている。精度の高さばかり求めていては、コストは無限大に高まってしまう。

政府統計の統廃合と民間統計の活用

例えば、日本銀行の短観(全国企業短期経済観測調査)の回答率は99%以上と驚異的な水準を誇っている。企業景況感サーベイとしては、世界一の精度と言って良いだろう。しかし、回答する企業は、日本銀行からの調査依頼にみな喜んで回答している訳ではない。日本銀行の本店、支店の職員が、日頃から面談などを通じて対象企業との良好な関係を作り、さらに、調査開始後には個別に電話で回答をお願いするなどの対応をとっているがゆえに、これほどの高い回答率になっている。

また、回答について、入力ミスなどの疑いがあれば、職員から企業に別途電話で確認するなどのきめの細かい対応もしている。さらに、対象企業に対して、経済情勢の説明などのサービスも経常的に行っている。すべての政府統計でこれほどの丁寧な対応をしていれば、もっと精度の高い統計になっているはずだ。しかし、リソースが限られる中でそれは難しいだろう。

そこで、重要な統計とそうでない統計とを分けて、重要な統計にリソースを投入していくといった、メリハリの利いた対応をもっと考えていくべきではないか。例えば、内閣府と財務省が四半期毎に公表している「法人企業景気予測調査」は、もともと両省が別々に公表していた調査を統合したものだ。それでも、日本銀行の「短観」があれば、この調査は停止しても良いのではないか。

重複する統計の統合がなかなか進まない背景には、自らが作成する統計を守りたいという、各省間での縄張り争いもあるだろう。一方、政策立案に利用されるというよりも、主に業界の利用のために作成されているような業界統計は、各産業の協会のような民間組織に移管することも合理化の一環となろう。また、例えば、米国GDP統計の個人消費の推計に、民間の統計が基礎統計として多く使われていること等も参考にして、政府が、民間統計を今まで以上に活用していく余地もあるのではないか。

こうした点を踏まえて、すべての政府統計の存在意義をもう一度ゼロから洗い直すことが重要だ。さらに、政府統計全体を見直す際には、統計の統廃合の決定などで総務省の権限をより高め、また、総務省が各省で適切な統計作成がされているかチェックする機能を強化していくことも一案となるのではないか。

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