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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

春節商戦でデジタル戦略

2019/02/06

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春節商戦への期待と不安

中国の春節(旧正月)の休みが2月4日から始まった。10日までの期間中、前年より50万人多い約700万人の中国人が、出国すると見込まれている。これは前年比+7.7%であり、心配された中国経済減速の悪影響はここには顕著に見られない。春節の休みで最も人気のある渡航先は、1位がタイ、2位が日本だ。

春節の中国からの観光客増加に期待して、4日には安倍首相が中国人向けに「新年のあいさつ」のビデオメッセージを発表するなど、異例の対応をしている。人民日報は、SNSアカウントを通じて、その動画と記事を掲載した。人民日報は、「日本の安倍首相が真心を込めて新春の祝賀」、「日本の現役首相が動画により中国人民に新年のあいさつをしたのは初めて」などとこれを好意的に紹介している。さらに、4日晩には東京タワーを「中国紅(チャイナ・レッド)」に染めるライトアップの点灯式が行われ、両国関係者や大勢の子どもが参加するなど歓迎ムードが演出された。人民日報はこれも報じている。

日中関係が改善されたことや、今年1月に中国人への訪日ビザの発給要件が緩和されたことから、今年の春節期間の売り上げ増加に期待する日本の小売店も少なくない。

しかし、他方で、今年の春節では中国人向け売上が伸び悩むことを心配する向きもあり、日本の小売店は、実際には期待と不安が入り混じった状況だ。心配されているのは、既に年明け後からインバウンド消費に陰りが見られることだ。

大手百貨店の1月の売上高速報で、伊勢丹新宿本店の免税売上高が前年同月比約15%減、高島屋大阪店は約20%減となった。中国経済の減速の影響だけでなく、中国で1月に施行された電子商取引に関する新法によって、ネット通販事業者が政府への登録を義務付けられたことの影響も指摘されている。この新制度のもとでは、転売を目的に中国国外で商品を購入する「代理購入」が制限されるためだ。かつて日本で見られた中国人観光客の爆買いには、中国でネット販売する目的で大量に商品を購入するケースが多く見られたが、それは既に過去のものとなっている。

消費者の利便性向上を図る

さらに、中国人観光客一人当たりの日本での支出額も、既に減少傾向にある。2018年の中国人旅行者数は前年比22%増の647万人となったが、1人当たりの支出は同3%減だった。

中国人観光客の爆買いが一巡する中、リピーターの取り込みなどで日本の小売店は新たに知恵を絞っているが、そのポイントとなるのは、商品そのものよりも商品の選択や購入に関わる消費者の利便性を高めるためにデジタル技術を活用することと言えるのではないか。

例えば、ある百貨店は、春節の特設サイトを昨年よりも約1か月早めて開設した。また、春節を前に、中国のSNSで影響力を持つ「インフルエンサー」の若い女性を招いて売り場で化粧品を使う様子を撮影し、その動画をインフルエンサーが中国のSNSで紹介した百貨店もある。春節商戦は、春節休みが始まる大分以前から、ネット上では既に始まっていたのである。他方、ラオックスは、中国の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の会員向けに、帰国後もクーポンや売れ筋を発信している。リピーター確保のためには、アフターケアも重要だ。

また、中国で普及する電子決済「アリペイ」で買い物した客に、少額を還元している百貨店もある。ファミリーマートは1月末に、中国系のスマホ決済を導入した。アリペイとテンセントの「微信支付(ウィーチャットペイ)」を全1万7千店で利用できるようにしたのである。

このように、デジタル技術を活用して、中国人訪日客の利便性向上に働きかける今年の戦略が、どの程度の効果を挙げたのかは、今後明らかになるだろうが、こうした戦略には、将来の日本人の顧客拡大にもつながるヒントが隠されているのではないか。

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