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注目される米国の自動車追加関税措置

2019/02/19

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米商務省が自動車関税報告書を大統領に提出

2月17日に米国商務省は、自動車関税に関する報告書をトランプ大統領に提出した。この報告書には、米国の輸入自動車・自動車部品への追加関税措置の 是非についての商務省の見解や、選択肢が記述されていると見られる。同報告では、「追加関税措置が妥当」とする見解が示された可能性が高い。

しかし、トランプ政権は、中国との貿易協議などの優先課題に集中するために、当面は発動の是非を含むこの報告書の内容を公表しない方針だ。ただし、最終的には、トランプ政権は、輸入自動車・自動車部品への追加関税措置を決める可能性は、相応に高いものと考えられる。そうなれば、日本、欧州、そして米国の自動車関連産業、経済にとって大きな打撃となる。

トランプ政権は昨年の5月23日に、米通商拡大法232条に基づいて、自動車・自動車部品の輸入が米国の安全保障を脅かしていないかを調査するよう、商務省に指示した。商務省は、270日以内に調査を終えることが求められており、2月17日がちょうどその期限に当たっていたのである。

さらに、トランプ大統領は、この商務省の報告書を受け取ってから、90日以内に追加関税などの輸入制限措置をとるかどうか判断をすることになっている。期限ぎりぎりまで待ってから、トランプ大統領がその判断を示す場合には、それは5月中旬となる。そこに向けて、トランプ政権の貿易政策を巡る世界の関心は再び高まりそうだ。 同報告には、全輸入車に対して最高25%の関税を課す、また、電気自動車や先進技術を使った部品などに対象を絞った追加関税措置とする、などの選択肢が含まれているとの見方が多い。ただし、大統領の裁量権は幅広く、この報告書で示された選択肢以外でも、自らが適切と判断すればどんな対策でも発動することが可能である。

日本は適用外というのは楽観的過ぎる

米国は、3月1日の一時停戦の期限に向けて、現在、中国との貿易協議を進めているが、今後については、日本と欧州との貿易協議を控えている。トランプ大統領は、自動車・自動車部品への追加関税措置の導入を交渉材料、いわば脅しに使うことで、日本と欧州から大きな譲歩を引き出す戦略であろう。

日米貿易協議の開始を決めた、昨年9月の日米首脳会談で、「日米貿易協議中は、日本には自動車・自動車部品への追加関税措置は適用されない」との言質をトランプ政権から取った、と日本政府は説明していた。しかし、これについては、明文化もされておらず、何の保証もない。

また、追加関税措置が実施された場合、仮に日本がその適用外になるとしても、それ以上に厳しい条件が、日米協議の中で日本に示される可能性も十分に考えられる。

貿易協議は5月に山場を迎えるか

3月1日の一時停戦の期限に向けて、米中貿易協議が、現在進められている。貿易不均衡の是正に関しては、中国政府は米国に対して大幅に譲歩する姿勢だ。しかし一方で、米国政府が求める、中国企業の知的所有権侵害問題に関する中国政府の姿勢の見直し、あるいは強力な産業政策である「中国製造2025」で、巨額の政府補助金などを大幅に見直すこと等については、中国政府は譲っていない。それは、中国の政治・経済体制の修正を意味し、米国からの要請でそれを実施すれば、国内政治体制の弱体化に繋がりかねないためだ。

そうした中、期限までに米中が貿易協議で合意できる可能性はかなり低く、一時停戦が再び延長されて、協議継続となる可能性が高まっている。報道によれば、トランプ政権内では、60日間の延長が検討されているという。2月27日からベトナムのハノイで開かれる米朝首脳会談が終わり、米中貿易協議が延長されれば、トランプ政権はいよいよ3月頃から、日米貿易協議に注力し始めるだろう。

一方、日米両政府は、トランプ大統領の来日について、5月26日から28日の日程を軸に調整していると報じられている。トランプ大統領は、5月1日の新天皇即位後、最初に会見する国賓となる見通しだ。それを通じて、強固な日米同盟を国際社会に示す狙いが日本政府にはあるとみられる。来日に合わせ、日米首脳会談も開かれる。

トランプ政権は、この5月下旬の日米首脳会談までには、日米貿易協議をかなり進展させておくことを目指すだろう。そのため、3月から5月の短期間に、日本に対して対米自動車輸出の削減など、具体的措置の約束を強く迫る可能性がある。そして、トランプ政権は5月中旬までには、米国の輸入自動車・自動車部品への追加関税措置についての判断を示すことになるのである。場合によっては、5月初めに、米中貿易戦争は再び一時停戦期限を迎える可能性もある。

こうした日程を見ると、トランプ政権の対外的な貿易政策、特に対日強硬姿勢は、5月頃に山場を迎えると考えることができる。

執筆者情報

  • 木内登英

    木内 登英

    金融ITイノベーション事業本部
    エグゼクティブ・エコノミスト

    金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト

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