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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

英国のEU離脱日は延期の方向に

2019/02/28

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メイ首相が離脱日延期に初めて言及

英国のメイ首相は2月26日の議会演説で、3月29日に設定されている英国のEU(欧州連合)離脱日の延期が選択肢の一つであることに、初めて言及した。メイ首相は、「合意なき離脱」を行うのは、議会の明確な同意があった場合だけだとし、時間切れでなし崩し的に合意なき離脱に追い込まれてしまう可能性を否定した。これによって、合意なき離脱が少なくとも当面は回避される可能性はかなり高まった、と考えられる。

メイ首相は、3段階の採決を想定している。第1に、3月12日までに英国とEUとの間で現在協議されている、修正合意案の議会採決を行う。第2に、同案が否決された場合には、遅くとも3月13日に、合意なき離脱の是非について議会採決を行う。第3に、これが否決されれば、合意なき離脱の選択肢は排除され、3月29日の離脱日を延期する案を採決する。

メイ首相は、離脱日の延期は短期間に留めるべきで、長くとも6月末までとし、また、延期は1回限りになるだろう、としている。5月に実施される選挙を経て、7月には新たな欧州議会が開かれる。その時点で、英国がEU離脱を決めていなければ、EUに残留しながらも欧州議会に参加しないなど、大幅に権限を削がれた状態に英国が置かれることになるという点をメイ首相は警戒しているのではないか。

EU側では長期延期を支持する声も

合意なき離脱が、経済や金融市場に与える悪影響を強く警戒しているのは、英国だけでない。EU側も全く同様である。25日にトゥスクEU大統領は、離脱条件を巡る議論が滞る中で、欧州経済や社会に混乱を招きかねない合意なき離脱を回避するために、離脱日の延期は合理的な解決方法である、と発言した。そして、24日のメイ首相との会談で、離脱を延期する可能性を議論したことを明らかにした。この会談が、メイ首相に離脱延期を選択肢とすることを決断させるきっかけの一つになった可能性はある。

EU基本条約、いわゆるリスボン条約は、加盟国の離脱通知から2年後と定められている離脱日を延期するには、全EU加盟国の承認が必要である、と規定している。ただし、全会一致で離脱日延期が承認される可能性は、比較的高いのではないか。それでも、延期期間については、なお議論の余地はありそうだ。直ぐに期限が近づき、再び混乱を招くことを回避するために、メイ首相が想定する期間よりも長い延期をEU側が望む可能性はあるかもしれない。実際、長期延期を主張する声も、EU内に出てきている。

2回目の国民投票の可能性

離脱日延期後のシナリオはなお不透明だが、英国が、EU離脱の是非を問う国民投票を再度実施する蓋然性は、それなりに高まっているのではないか。最大野党・労働党のコービン党首は、従来の政策方針を転換して、英国のEU離脱の是非を問う2回目の国民投票を支持すると発言している。

2回目の国民投票が実施される場合、その結果に不確実性を残しながらも、EU残留が多数となる可能性は相応にあるだろう。そうした結果となれば、英国がEU離脱を撤回することは、比較的容易だ。昨年12月にEU司法裁判所は、英国がEU離脱の決定を覆す際に、他の27加盟国の許可は必要ない、との判断を下している。

他方、国民投票を実施するには、その準備に4か月以上かかるとされる。メイ首相が主張するような、3か月程度の離脱日の短期延期では、国民投票が実施できるかどうかは微妙だ。仮に、離脱日延期が短期にとどまれば、合意なき離脱のリスクは金融市場に燻り続けることになろう。他方で、長期の延期となれば、2回目の国民投票実施の可能性とともに、合意なき離脱のリスクはかなり低下する、と金融市場は読み込むことになるのではないか。この点から、離脱日延期の期間を巡る英国議会での議論、EU側の議論には今後も注目しておきたい。

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