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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

中国製造2025の旗は降ろさず

2019/03/07

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李首相は「中国製造2025」という言葉を封印したが

3月5日から開かれている中国の全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は初日に、100分近くにわたって政府活動報告を行った。李首相はその中で、「リスク」という言葉を24回も使っている。「厳しさが増す今年は予測可能なリスク、予測不能なリスクがさらに増える。しっかり備えるべきだ」といった具合だ。その「リスク」の中核を占めるのが、米中貿易戦争だろう。そして、そのリスク回避の一環として政府活動報告でなされたのが、米国が強く修正を求めているハイテク関連など製造業の育成策である「中国製造2025」という言葉を用いなかった、いわば封印したことだ。米中貿易協議が大詰めを迎える中、米国政府を過度に刺激しないための配慮だろう。李首相が過去3年に行った政府活動報告では、「中国製造2025」がその中核を占めていた。

しかし、これをもって米国政府が、「中国製造2025」が大きく見直されることを強く期待することにはならないだろう。なぜなら、「中国製造2025」という言葉こそ使わなかったものの、政府活動報告の中で李首相は、先端産業を強く推進する方針を強調しているためだ。

李首相は、政府の育成対象となる新興産業として、次世代の情報技術(IT)や高性能機器、生体臨床医学、新エネルギー車などを挙げた。これらは「中国製造2025」で重点産業として盛り込まれているものだ。また李首相は、政府は「中国の製造業強化を目指す取り組みを加速する」とも明言している。

中国は小出しの譲歩で時間稼ぎか

今回、「中国製造2025」という言葉を封印したのは、今後、その名称を変える布石であるかもしれない。しかし、政策の中身を変えずに名称だけ変えることで、米国政府が満足するはずはない。

中国が、エネルギー関連、農産物の米国からの輸入を大幅に拡大させる方針を示した時点で、米中間での貿易不均衡是正を巡る協議は実質的に合意に至ったのだ、と言えるだろう。しかし、米国政府の最大の関心は、貿易不均衡是正ではなく、中国が経済、先端産業、軍事力で米国の優位を脅かすことをいかに防ぐかである。この点から、「中国製造2025」のもとで、中国政府が企業に強く関与する、特に巨額の補助金を投入する政策に対して、米国政府は強く修正、あるいは撤回を中国政府に求め続けるだろう。米中貿易協議が仮に一時的な合意を見ることがあるとしても、米中間の覇権争いに終わりはない。

今後、中国政府は、巨額の補助金投入を見直すなどの譲歩を米国側に示す可能性はあるだろう。しかし、それは、時間稼ぎに過ぎないのではないか。巨額の補助金投入を見直す、との方針を米国政府に示した後も、外からは見えない形で、中国政府が国内企業に補助金を与え、強く支援し続けることは十分に可能だろう。

こうした譲歩案を小出しにしている間に、トランプ政権が終了するのを、習近平国家主席は待つ戦略なのかもしれない。習近平国家主席の任期は撤廃されたが、トランプ大統領は最長でも2選までだ。時間を味方に付ける戦略をとれば、中国側が優位に立てる。

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