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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

2国間の貿易不均衡は問題か

2019/04/24

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2国間交渉にこだわるトランプ政権

米国第一主義を前面に掲げるトランプ政権は、貿易政策では世界貿易機関(WTO)のもと、多国間で貿易自由化を推進し、多国間で貿易紛争の解消を図るという既存の国際的な枠組みを無視し、2国間での貿易不均衡是正を目指して2国間貿易交渉を進めている。また、貿易不均衡是正の手段として、追加関税の導入を重ねてきた。

2018年末からは米中貿易協議を行っている。さらに、米国は欧州連合(EU)、日本との間でも2国・地域間での貿易交渉を志向しており、実際、2019年4月には日米貿易協議が正式に始められた。

こうしたトランプ政権の貿易政策は、WTOの多国間主義のもとで、米国は大きな不利益を被ってきたという意識と、米国の貿易赤字は米国のGDPと雇用を奪うもの、との意識に強く根差すものだ。

米国の貿易赤字、経常赤字全体の拡大は、世界へのドル供給拡大を意味することから、それは、ドルに対する信認低下あるいは実際にドル安を招き、米国及び世界の金融市場を不安定にさせるなど、深刻な問題を生じさせるという側面は確かにある。

しかし、2間での貿易不均衡をことさら問題視するトランプ政権の姿勢には、首をかしげざるを得ない。2国間の貿易不均衡は、自由貿易のメリットが発揮されていることの反映、という側面があるからだ。自由貿易のメリットとは、それぞれの国が、それぞれの得意分野(機会費用が少なく、利益や収益性を最大化できる)に特化して生産活動を行う、いわゆる国際分業を推進することで、世界全体の所得をより拡大させることができる、ということであり、それは自由貿易理論の基調にある考えでもある。

ところが、トランプ政権は、こうした考えを持ち合わせていないようだ。貿易赤字は米国の所得を奪うものであり、それは、貿易相手国の不公正貿易や不当な通貨切り下げによってもたらされている、といったトランプ大統領の認識は、通商担当大統領補佐官のピーター・ナバロ氏の影響を強く受けている。

不均衡拡大の最大の理由はマクロ経済要因

国際通貨基金(IMF)は、最新の世界経済見通しの中で、米国と中国について、それぞれ主要国との間の貿易収支の変化(1995年~2015年)をもたらした要因を、①マクロ経済要因、②貿易コスト、③セクター別需給要因、の3つに分けて寄与度を試算している。①マクロ経済要因とは、貿易黒字国の供給超過、貿易赤字国の需要超過、などだ。②貿易コストは、地理的条件に基づく輸送コストや、関税率などだ。そして、③セクター別需給要因は、国際分業に基づく、セクター毎の需要と供給(生産)の差である。

この分析では、米国の対中貿易収支の悪化、及び、中国の対中貿易収支の改善は、①マクロ経済要因で説明できる部分が大きいことが示されている。このことは、米国での超過需要の抑制あるいは供給力の拡大、中国では超過供給力の抑制、あるいは内需拡大といった両国でのマクロ経済政策の調整が、有効な不均衡是正策(仮に是正策が必要であるとした場合)となる。

ところが、米国は、中国の補助金などミクロ産業政策、貿易コストを変化させる為替政策などを強く批判するとともに、追加関税の導入を通じて2国間貿易の不均是正を図るといった、誤った処方箋を講じているのである。

さらに同様の考え方、戦略に基づいて、トランプ政権は今後対日貿易協議を本格化させることになる。簡単なことではないが、大型減税や巨額のインフラ投資など、米国の過剰な財政拡張策こそが、米国の貿易赤字拡大の主因であるということを、協議を通じて日本政府はなんとかトランプ大統領に理解させて欲しいところだ。

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