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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

米中首脳会談まで貿易協議は進展しない可能性

2019/05/15

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米中は再び報復関税の応酬に

中国政府は13日、米国による追加関税率引き上げに対する報復措置として、600億ドル相当の米国製品への関税率を、現在の5~10%から最大25%へと引き上げる報復措置を発表した。発動は6月1日となる。引き上げ幅は品目によってまちまちであり、液化天然ガスなど2,493品目は10%から25%へ引上げられ、工業用ロボットなど1,078品目は10%から20%へ引上げられる。また、医療器具など974品目は5%から10%へ引上げられる。タイヤなど5%のまま据え置かれる品目もある。

他方、米国政府も約3,000億ドル相当の中国からの輸入品に、最大で25%の関税を上乗せする考えを示していたが、米通商代表部(USTR)は13日、その原案を発表した。対象となるのは約3,800品目であり、消費財が4割程度を占めると見られる。アップルのスマートフォン「iPhone」なども含まれる。他方、生活や産業への影響が大きい一部の医薬品やレアアースは除外された。

この約3,000億ドル相当の対中追加関税導入の日程については、まだ公表されていない。公表された原案を基に、消費者や米国企業への影響を最小限に抑える観点から、今後対象品目を絞り込んでいく。6月17日から、そのための公聴会が開かれる。

トランプ大統領は、6月28・29日に日本で開催されるG20サミット(20か国・地域首脳会議)にあわせて、中国の習近平国家主席と会談する意向であることを明らかにしている。トランプ政権は、この米中首脳会談で貿易協議の合意に達することを想定しているのだろう。トランプ政権は、約3,000億ドル相当の対中追加関税導入の日程を確定したうえで、それを交渉材料に使って、習近平国家主席から譲歩を引き出す戦略ではないか。その場合、7月1日あるいは8月1日などに、追加関税発動の日程を設定することが予想される。

交渉が決裂すれば、米中及び世界経済に深刻な打撃となりかねない追加関税の対象拡大が、そのタイミングで実施されるだろう。米中共に、妥協しない強い姿勢を示しており、米中首脳会談までは、閣僚級協議でもほとんど進展が見られない可能性もある。

米国内は対中強硬一色に

ところで、トランプ政権が対中貿易協議で今回、強硬策に出たことは、米国内では党派を超えて概ね支持されているようだ。2020年の米大統領選に出馬表明した民主党のバイデン前副大統領は、トランプ大統領が中国に制裁関税を課して対決姿勢を強めていることについて、「代償を払っているのは農家と労働者だ。間違いだらけだ」と批判している。しかし、こうした主張は、民主党内でも支持を集めていない。

トランプ大統領は、「中国は眠そうで活気のないジョー・バイデンや他の(民主党)候補らが2020年(の大統領選)に当選することを夢見ている。連中は米国からカネをだまし取るのが大好きだから」とツイッターに投稿した。

ただし、貿易政策で対中強硬姿勢を支持する民主党も、追加関税によって経済的な打撃が米国に生じた場合には、トランプ大統領の失策を問う声を高める可能性はある。民主党は、トランプ大統領が中国側に譲歩する場合には、「弱腰外交」と批判する一方、強硬姿勢を続けることで米国経済に悪影響が及べば、「交渉失敗」と批判するのだろう。

世界は、米中貿易摩擦によって経済に打撃が及ぶことを強く警戒する一方、今後米国経済に悪影響が見られ始めることで、トランプ政権の強硬姿勢が緩和され、それが米中合意に至ることで、世界経済へのリスクが軽減されることも同時に期待している。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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