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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

「質の高いインフラ投資」とは何か?

2019/06/13

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質の高いインフラ投資に関するG20原則を承認

先般開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、新興国のインフラ建設に関して、資金借入れ国の返済能力に配慮することなどを求めた、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が承認された。議長国である日本がこのテーマを取り上げた背景には、米国と歩調を合わせて、新興国に過剰債務問題を引き起こしているとされる中国の「一帯一路構想」を牽制する狙いがある。

この原則は、①持続可能な成長、②経済性、③環境への配慮、④自然災害などへの強靱性、⑤社会への配慮、⑥ガバナンス、の6項目からなるという(注)。

日本は2016年5月のG7伊勢志摩サミットで、現地雇用の創出、経済性の確保など順守事項を盛り込んだ「質の高いインフラ投資」の原則づくりを主導した。それは、2016年9月に中国・杭州で開かれたG20サミットの首脳宣言にも引き継がれている。今回の「質の高いインフラ投資に関するG20原則」は、これを発展させたものだ。

原則には、「調達の開放性・透明性、腐敗防止などに向けた努力、国レベルの債務の持続可能性などが重要」、「インフラ施設の利用の開放性、安全性などへの配慮が重要」といった文言が盛り込まれた。これは、日本が主導したものと考えられる。

また、原則には、ガバナンス(管理)という項目が新たに設けられた。ここには、日本が重視してきた「透明性」、「開放性」、「債務の持続可能性」が盛り込まれている。「透明性」では、中国を念頭に、自国企業の受注や労働者の活用を条件としないよう、業者選定での透明性が掲げられた。「開放性」では、建設された施設を誰でも使うことができる開放性が謳われた。また、「債務の持続可能性」については、個別の事業ごとではなく、借入国全体の債務膨張を避けることを重視する方針が示された。

質の高さを追及するだけで良いのか

他方、各国は、インフラ投資に関する新興国向け融資の実態について、自主点検結果を報告することになっていたが、中国は、その提出を見送ったという。日本は、今後も中国に対して適切な情報開示を働きかける。

一方、中国政府自身が、融資やインフラ投資の実態を把握できていないともしばしば言われている。また、この原則は違反に対する制裁がないため、その実効性については疑問視する向きも多い。

「質の高いインフラ投資」というテーマは、G20サミットでも取り上げられ、日米を中心に、中国の「一帯一路構想」をさらに牽制することになるだろう。ただし、米国が「借金漬け外交」と強く批判する中国のインフラ関連融資では、港湾整備のために中国から借入れた借金の返済に行き詰ったスリランカが、港湾の運営権を中国国有企業に譲渡する、という一例だけを取り上げて議論されてきた感も強い。この点から、「借金漬け外交」との批判はやや行き過ぎの面もあるだろう。

また、先進国側が従来から主張しているような、新興国向けの厳しい融資条件では、新興国側が借り入れをすることが難しく、結果的に、インフラ整備が十分に進まないという面もあるのではないか。それゆえに、相対的に条件が緩い中国の資金に依存してきた面もあるのだろう。

国際機関による新興国向け融資に適用されていた「質の高い」、言い換えれば「厳しい条件」の融資が、新興国側の事情にそぐわない面があるのであれば、それも含めて世界経済の発展に資するような、新たな「インフラ投資」のルール作りをG20等の場で議論していく必要があるのではないか。

(注)「『質高いインフラ』中国念頭」、産経新聞、2019年6月11日

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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