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大統領のFRB議長解任は法律上のハードルが高い

2019/06/20

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予防的利下げ実施が近づく

6月18、19日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利下げ(政策金利引下げ)などの政策変更は見送られたが、米連邦準備制度理事会(FRB)近い将来の利下げ実施にが傾いているとのメッセージを、市場に明確に送るものとなった。

今回の声明文の中で、FRBが利下げに前のめりの姿勢であることを示した箇所は2点ある。第1は、政策金利の判断で「委員会は辛抱強くなる(the Committee will be patient)」との文言が削除されたこと、第2は、「景気拡大を維持するために適切な行動をとる(will act as appropriate to sustain the expansion)」との文言が加わったことだ。

さらに、ブラード・セントルイス連銀総裁は、0.25%の利下げを求めて現状維持の議長案に反対票を投じた。パウエル議長が就任した後で反対票が投じられたのは、初めてのことだ。また、いわゆるドット・チャートでは、17人の参加者のうち7人が、今年年末までに政策金利は0.5%ポイント低下する、との見通しを示した。

記者会見でパウエル議長は、予防的措置の有効性を強調している。これは、次回の利下げが予防的措置との位置づけが強くなることを示唆していよう。その場合、景気・物価の下振れが必ずしも明確にならない段階で、その兆候に対して行動を起こす考えを意味しているのだろう。

こうした点を踏まえると、景気減速の追加的なデータや金融市場の動揺などをきっかけに、FRBが比較的近い将来に利下げに踏み切る可能性は高まっていると考えられる。7月5日に発表される6月分雇用統計が2か月連続で弱くなれば、それが7月のFOMCでの利下げを後押しする可能性もあるだろう。

トランプ大統領はパウエル議長解任を検討か

ブルームバーグは、トランプ大統領は今年早い時期に、パウエル議長を解任する選択肢を模索するよう、ホワイトハウスの法律顧問に指示した、と報じた。FOMC直前に出てきたこの観測を、トランプ大統領は敢えて否定しないことで、FRBに利下げ実施の圧力をかけた可能性もある。

記者会見の中でパウエル議長は「法律上、私の任期が4年であることは明らかであり、私は任期を全うするつもりだ」と話した。この強気の発言は、トランプ大統領がパウエル議長を解任するのは法律上難しい、とFRBが最終的に判断したことを反映しているではないか。解任の正当な理由があることを証明できなければ、大統領はFRB議長を解任できない。自身の望む政策を実施しなかったというのは、当然のことながら、その正当な理由とはならない。

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