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長期国債利回りの急低下と金価格高騰

2019/06/21

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日本の10年国債利回りは変動レンジの下限に

主要国では、長期国債利回りの低下傾向が一段と強まっている。米国では19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、近い将来の利下げ(政策金利の引下げ)が強く示唆されたことを受けて、20日には指標となる財務省証券10年利回りが、節目の2%を割り込んだ。

また日本では21日に、10年国債利回りは-0.195%まで低下し、日本銀行がイールドカーブ・コントロールのもとで変動許容レンジの下限としている-0.2%の水準にほぼ達した。20日の金融政策決定会合後の記者会見で総裁が、0%程度を中心とする上下0.2%のレンジは、それほど厳格なものではない、との主旨の発言をしたことで、日本銀行がさらなる利回り低下を牽制する措置を講じるとの懸念が薄れるとともに、下限を試す動きが市場で強まってしまったのである。

さらに、翌21日には、日本銀行が国債買入れを減額することで利回り低下をけん制する措置をとらなかったことが、さらなる利回り低下を許すことになった。日本銀行が国債買入れを減額しなかったのは、利回り低下を警戒しなかったからではないだろう。そうした措置をとれば、1ドル106円台入りをうかがう為替市場で、さらなる円高を生じさせてしまうためだ。

日本銀行は、下限まで達した10年国債利回りと円高リスクとの間で、立ちすくんでしまっている状況だ。最終的には、円高回避を優先して、下限を下回る10年国債利回りの水準を容認せざるを得ないだろう。しかし、それが長期化すれば、イールドカーブ・コントロール及び政策全体に対する信認は低下してしまう。

そこで、日本銀行が変動許容レンジをなくして、事実上イールドカーブ・コントロールを止めてしまう時期は近付いているのではないか。

利下げモードのなか金価格は高騰

ところで、安全資産とされる金の価格が足もとで急騰し、約6年ぶりの高値を付けている。金価格は、インフレリスクが高まる際や、金融市場でストレスが高まる際に、リスクを回避しようとする資金の受け皿となりやすい。

しかし、今回の急騰は、世界の中央銀行が一気に利下げモードに入ったことがきっかけだ。特に近い将来の利下げ実施を強く示唆している米連邦準備制度理事会(FRB)の影響が大きいだろう。そうした政策姿勢のもと、長い目で見たドルの価値に対する不安が広がり、ドルからの逃避資金が金価格を押し上げているのではないか。

景気の減速を受けて、あるいはそれに先手を打つ形でFRBが利下げをするのであれば、ドルへの信認は必ずしも低下しない。しかし、大幅利下げの実施を強く迫るトランプ大統領の強い影響下で、FRBが利下げを強いられるのであれば、中央銀行の独立性が揺らぐなかで、長い目で見た通貨価値の安定に大きな不安をもたらすことになる。ドルの価値に対する不安がさらに強まれば、ドル資産から資金が海外に逃避することで、米国株の下落や、足もとでは大幅に低下している国債利回りの反転上昇をもたらすことも考えられる。これは悪い利回り上昇だ。

このように、足もとの金価格高騰は、悪いドル安への警戒を反映する、悪い金価格の上昇という性格が強いのではないか。

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