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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

リブラ議論で防戦を迫られるフェイスブック

2019/07/17

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米公聴会ではフェイスブックに対する強い不信感が示された

16日に米上院銀行委員会では、フェイスブックが2020年のサービス開始を計画するデジタル通貨「リブラ」についての公聴会が開かれた。証言に応じたフェイスブック幹部でリブラ事業を担う子会社「カリブラ」代表のデビッド・マーカス氏は、事前に提出した書面で「規制をめぐる懸念に完全に対処して適切な許可を受けるまで、フェイスブックはリブラを発行しないことを明確にしたい」、「金融当局による監督に協力する」とし、当局に協力する姿勢を最大限示したが、それでも議会内でのリブラ及びフェイスブックに対する不信感は非常に強く、マーカス氏は議員からの強い批判に晒されることとなった。米上院銀行委員会は、リブラの発行を阻む方向で動いているように感じられる。

シェロッド・ブラウン上院議員(民主、オハイオ州)は、フェイスブックが独占的な地位を築いたこと、個人データ流出問題を起こしたこと、SNSで不適切なコンテンツをコントロールできなかったことなど、過去の実績に照らせば、仮想通貨を運営する権限は与えられない、との見方を示した。また同氏は、「フェイスブックはマッチを手にした子どものように次から次へと家に火をつけておいて、放火を全て学習体験だと称した」と厳しく非難した。

他方、マイク・クラポ委員長(共和、アイダホ州)は、リブラ計画は、個人データの利用に関して個人の権限をより高める方向で、米国で法整備を進める必要を浮き彫りにしたとし、また、フェイスブックが個人データをどれほど分析できるのか、あらためて確認する必要があるとの主旨の発言をした。

また、議員からは、リブラ協会をスイス・ジュネーブに置くことで、米国の金融当局の規制を免れる意図があるのではないかとの疑問も示されたが、マーカス氏は、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)がリブラ協会を監督するが、米国当局の規制、監督も受けるとし、資金洗浄対策として米財務省の「資金犯罪取り締まりネットワーク(FinCEN)」に登録し、米国や各国の規制にも従うと説明した。さらに、国家の通貨発行権を脅かし、また為替を不安定にさせるとの議員からの懸念について、マーカス氏は、リブラ協会は国家と競合したり、干渉したりする立場にはなく、また金融政策を行なうことはないと説明した。

このように、フェイスブックのマーカス氏は、米議会公聴会ではリブラに懐疑的あるいは否定的な議員からの攻撃への防戦を強いられ、リブラが社会に与える好影響などを十分にアピールすることはできなかったようだ。

ユーザー側の支持を集められるか

同日に、米下院反トラスト小委員会では、フェイスブックを含む大手プラットフォーマー、いわゆるGAFAに対する公聴会も開かれていた。ここでも、議員からはGAFAの影響力に対する懸念が噴出し、規制当局による監視を強めるべきとの声が上がった。

下院反トラスト小委員会のデービッド・シシリー二委員長(民主、ロードアイランド州)は「このニューエコノミーを促進・継続させるため、議会や反トラスト執行当局は、こうした企業による自主的な規制を許容し、ほとんど監視してこなかった」と指摘した。その結果、インターネット分野の集中が進んで以前ほどオープンではなくなり、イノベーションと起業家精神に敵対的な環境になってしまったと述べた。

17日・18日にフランスで開かれるG7(主要7カ国)財務相・中央銀行総裁会議でも、リブラは議論の対象となる。ここでも、リブラに対する強い警戒感が示されるだろう。欧州の当局者からは、リブラが欧州中央銀行(ECB)の影響力を低下させ、通貨を不安定にさせ、また金融システムを不安定にさせる、との懸念が示されている。ドイツの財務大臣は、リブラがユーロにとって代わることがないように、政府は対応すべきだとしている。また、ECBのクーレ理事は、G7にリブラに関する報告書を提出する見込みだという。

国際通貨基金(IMF)は15日に公表したデジタル通貨の報告書で、「新サービス普及を後押しするネットワークの力を過小評価すべきではない」と、リブラを念頭に警鐘を発している。具体的には、プラットフォーマーが金融業界で独占的な地位を築くこと、通貨の信認が低い国で通貨の安定や銀行制度に大きな打撃を与えること、金融政策の効果を低下させること、等の懸念が示された。この報告書も、G7での議論のたたき台にされる見込みだ。

このように、リブラを巡るフェイスブックの当局や政府、議会との議論は、その緒戦では、フェイスブックが防戦一色の状況を強いられている。今後は、フェイスブック側が、金融サービスの利用コストの低下、ユーザーの利便性向上、金融包摂の観点からの環境改善など、メリットを受けるユーザー側の支持をどの程度集め、それを後ろ盾にリブラのプラス面をどの程度強くアピールできるかに、議論の行方は大きく左右されるだろう。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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