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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

消費増税後の経済政策を占う

2019/09/09

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消費増税後に財政環境はさらに悪化する可能性

来月10月に実施される消費増税が、国内経済に直接与える悪影響は大きくないだろう。ただし、2014年の前回の消費増税実施の際と比べればかなり小さいとは言え、増税前の駆け込み購入とその反動は少なからず生じる。それは、個人消費を中心に見かけ上、経済指標を下振れさせる。これに、海外景気の減速が加わると、国内経済の先行きに不安が広がることになるだろう。

そうした場合には、政府が既に実施を決めている2兆円の消費税対策の規模を、かなり上積みする可能性が出てくる。6月に閣議決定された骨太方針(経済財政運営の基本方針)では、「海外発の下方リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ政策を躊躇なく実行する」とされた。消費増税の影響、海外景気減速の影響を打ち消すために、政府は10月からの臨時国会で補正予算を組み、そこで消費税対策を上積みするかもしれない。

野党やメディアなどから「改憲論議よりも景気安定化を優先すべき」といった批判に応えるため、そして、消費増税が景気を悪化させたとの国民の認識が、次の衆院選挙に悪影響を与えることを回避するため、できる限りのことをやった、との証拠を残しておくことが政府にとって重要となるのではないか。

しかし、2兆円の消費税対策に上積みすれば、消費増税実施のタイミングで政府の財政環境が逆に悪化するという異例の事態となってしまう。何のための消費増税だったのか、となってしまうだろう。消費増税の財政健全化を台無しにしてしまう消費税対策の上積みは、安易に実施するべきではない。

安易な政府、日銀頼みの姿勢も問題

ところで、消費税対策の上積み規模が大きくなれば、日本銀行もそれに巻き込まれる形で、年内にも追加緩和策の実施を強いられる可能性がある。確率的には半分ぐらいだろうか。政府が巨額の景気対策を実施する局面では、日本銀行も協調策としての政策対応を迫られるのが通例であるからだ。

景気情勢の悪化ではなく、1ドル100円に接近する、あるいはそれを超える円高が生じても、同様な金融・財政政策がとられる可能性があるだろう。日本銀行にとっては、景気悪化あるいは円高進行時に、政府が積極対応をするなかで日本銀行が静観を続けていると、政府や国民から強い批判を浴びることを強く恐れているのだ。従って、日本銀行が追加緩和措置を実施する場合には、それが効果を表すかどうかは2の次であり、対応したという証拠を作り政府や国民からの強い批判をかわす、一種の組織防衛策となるのではないか。

このように、消費増税後に経済、金融情勢が悪化した場合には、政府も日本銀行も、証拠づくりの追加財政拡大・金融緩和措置を実施する可能性がある。しかしそれらは、更なる政府債務増加、将来世代への負担増加を通じた経済の潜在力低下、金融仲介機能の一段の低下、日本銀行の財務悪化と独立性低下、などといった大きな副作用を生んでしまうだろう。

景気減速、円高進行が生じた際に、安易に政府や日銀に対応を求める国民の姿勢にも問題があるのではないか。世界経済が後退局面に陥るような場合には、政府の景気対策によって国内経済の悪化を回避することはほぼ不可能だ。また、円高進行を政策的に食い止めることも難しい。

海外要因によって経済、金融情勢が一時的に悪化しても、経済の潜在力を高め、また金融市場・金融システムの健全性に配慮した骨太の政策をしっかりと維持していくことが重要である。しかし、実際にはそうした政策運営を難しくしている要因の一つは、目先の利益に目が奪われてしまう、あるいは政府、日本銀行を安易に頼みとしてしまう国民の姿勢である。それこそが、ポピュリズム(大衆迎合)勢力が国民に付け入ることを助けてしまっている面もあるのではないか。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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