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コラム 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

マイナス金利深掘りの副作用軽減を模索するECBと日銀

2019/09/09

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ECBは金利引下げへ

欧州中央銀行(ECB)は9月12日に開かれる理事会で、政策金利(正式には中銀当座預金金利)を0.1%程度引き下げる緩和措置を実施する可能性が高い。金利引き下げとなれば、2016年以来のことである。一方で、金利引下げが銀行の収益環境を悪化させ、それを通じて経済に逆に悪影響を与えることが懸念されている。

欧州の銀行は、マイナス金利が適用される超過準備に対して、年間75億ユーロ程度の利払い費を負担している。最近、米国財務省が発表した論文では、マイナス金利政策を導入した国では、貸出増加率が高まるどころか逆に低くなるという明確な証拠が見られた、とされている。

欧州の銀行は、マイナス金利政策による収益悪化への対応として、顧客に対する手数料を引き上げる、あるいは新たに手数料を導入しているが、マイナス金利政策の影響のごく一部しか緩和できていない。

ECBの次期総裁ラガルド氏も、「政策金利の引き下げは限界に達したとは思わないが、一般的には低金利政策は、銀行や金融システムの安定に悪影響を与える可能性がある。ECBは、低金利が長期化した際に、そうした弊害が生じないかどうかをしっかりとモニターしなくてはならない」と発言している。

銀行収益悪化を軽減する3つの選択肢

金利をさらに引き下げる、つまりマイナス金利の深掘りを実施する際に、それが銀行の収益に与える悪影響を軽減する措置を併せて実施することが、ECB内では議論されている。その一つの選択肢は、日本、スイス、デンマークで既に採用されている階層型当座預金制度を導入し、マイナス金利が適用される超過準備を一部に限定することだ。ドラギ総裁自身は、金利引下げともにこの措置を導入することを検討しているように見える。

軽減措置として2つ目の選択肢となるのは、ECBが銀行に貸出す際の金利、まさに政策金利をさらに引き下げて、マイナスとすることだ。そして3番目の選択肢は、2番目も含まれるが、ECBが今月から始める銀行貸出支援策、TLTRO第3弾の各条件をさらに緩めることだ。

しかし、現段階では妥当な軽減措置に関するコンセンサスがECB理事会メンバー内で成立していない模様だ。今月は、マイナス金利の深掘りだけが実施され、軽減措置については継続審議、とアナウンスされるかもしれない。

日本銀行も12月にも金利引下げか

ところで、9月7日の日本経済新聞に掲載されたインタビューで黒田日銀総裁は、「マイナス金利の深掘りは追加緩和策の選択肢に必ず入ってくる」と発言している。

比較的安定した国内経済、為替情勢を踏まえれば、9月の決定会合で日本銀行が追加緩和措置を実施する可能性は低いが、12月の会合前後で実施される可能性は50%程度の確率であるのではないか(筆者はあらゆる追加緩和措置に反対ではあるが)。その際に、追加緩和措置としては金利引下げが最も有力と考えられるが、日本銀行も銀行の収益に与える悪影響を軽減する措置を併せて検討する可能性があるだろう。

しかし、日本銀行はそうした狙いの下で、既に階層型当座預金制度を導入している。また、現在0%である貸出金利(固定金利オペ、貸出支援オペなどの金利)をマイナスにすることは、選択肢に入らないのではないか。それを実施すれば、銀行は貸出先からさらなる貸出金利の引下げを要求され、むしろ利鞘、収益環境は悪化してしまうからだ。

日本銀行が金利を-0.1%から-0.2%に引き下げても、その措置が必ずしも長期化するものではない、と市場の期待を誘導することも考えられる。それを通じて長期金利の低下を抑え、短期金利と長期金利の金利差、特に地域金融機関の収益に大きく影響する3~4年ゾーンの金利との金利差を縮小させない、あるいは拡大させることが狙いだ。

執筆者情報

木内 登英

エグゼクティブ・エコノミスト

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