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ウォーレン vs.フェイスブック

2019/10/24

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逆風強まるトランプ大統領

筆者は昨日まで米国(ワシントン、ニューヨーク)に滞在していたが、ホテルのテレビには常に、トランプ大統領に対する下院での弾劾調査のニュースが流れていた。以下で見るように、ウクライナ疑惑に関連して、トランプ大統領が強く批判してきた民主党大統領候補のバイデン氏の支持率が持ち直していることは、この問題でトランプ大統領に対する国民の反感が高まってきていることの反映なのだろう。同氏の側近がウクライナへの軍事支援と政敵であるバイデン氏の調査との関連をいったん認めた後、それを訂正する事態になったことも、国民の不信感を強めている。

それ以外にも、来年予定されるG7サミット(主要7か国首脳会議)をフロリダ州マイアミに所有する自身のゴルフリゾート施設「トランプ・ナショナル・ドラル」で開催する計画を発表し、その後、民主党のみならず共和党内部から公私混同との強い批判を受けて撤回せざるを得なくなった。また、シリア北部からの米軍撤退を決めたことが、同地域でISと長らく共に戦ってきたクルド人民兵を見捨てたとして、共和・民主両党の議員からトランプ氏への非難が巻き起こっている。こうした足もとでの一連のニュースは、来年の大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領にとって、逆風となっている。

他方、ウクライナ疑惑が浮上した際に一時支持率を落とし、ウォーレン上院議員に首位を奪われたバイデン氏が、再び巻き返している。ロイター通信と調査会社イプソスが18日に発表した民主党大統領候補者の世論調査によると、バイデン氏の支持率が前月末比3%ポイント上昇の21%となり、ウォーレン氏の15%に再び6ポイントの差をつけた。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した各種世論調査の平均値でも、バイデン氏はウォーレン氏に6ポイント近い差を付けている。

中西部オハイオ州で15日に4回目の民主党候補者討論会が行われた際に、バイデン氏が、ウクライナ企業で役員を務めていた息子に関する疑惑をトランプ大統領が追及していた問題を明確に否定したことが、支持率挽回のきっかけになったようだ。

ウォーレン氏の挽回策はフェイスブック攻撃

ウォーレン氏は、破産法などを専門とする著名な法学者だ。金融規制強化を訴えてきたことから、ウォール・ストリートでは非常に嫌われている。また、大企業や富裕層の優遇に反対して増税を主張し、それを公的国民皆保険の財源に充てるとしている。また、環境政策では再生可能エネルギーに巨額投資し、温室効果ガス排出ゼロを目指す「グリーン・ニューディール」を支持している。ウォーレン氏は、女性やマイノリティーから一定の支持を得ているものの、その左派色の強さが支持の広がりを妨げて、中道のバイデン氏に支持が流れる構図となっている。

そうしたウォーレン氏にとって、支持率挽回の一手となり得るのが、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)への規制強化であろう。今年3月には、独占状態が消費者の利益を損ねているとして、GAFAの解体を主張した。グーグルについては、ネット検索とオンライン広告販売とを別会社にすること、アップルについては、アップストアを切り離すこと、そしてフェイスブックについては、インスタグラムやワッツアップを別会社にすることを主張した。

分割、解体に反対して、ウォーレン氏との対立を特に先鋭化しているのがフェイスブックのザッカーバーグCEO(最高経営責任者)だ。10月1日に米メディアが報じたところでは、同氏は社内会議で、「ウォーレン氏が大統領に選ばれたら法廷闘争に挑む。われわれは勝つだろう」と発言した。これに対してウォーレン氏は、「フェイスブックのような巨大企業が違法な反競争的行為を行い、消費者のプライバシーを踏みにじっている」と批判し、「腐敗したシステムの修理に取り組まなければならない」と強調している。

GAFA解体の議論は、フェイスブックが主導する新デジタル通貨リブラの批判とも結びつく。ウォーレン氏は今後、リブラが個人データの流出を通じてプライバシー侵害のリスクを高めるとして、発行に反対する姿勢を強めることだろう。

GAFA解体の議論は、民主党大統領候補選挙の大きな争点になるとともに、大統領選挙本選でも重要な論点の一つとなろう。

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