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南北統一は成長戦略となりえるか

2019/11/28

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日本は韓国の将来の姿

27日に筆者は香港から移動し、現在、韓国・ソウルに滞在している。昨日と本日(28日)は、投資家との面談と講演会を行った。面談では例外なく、「日本は〇年先の韓国の将来の姿」という言葉が出てくる。この〇年は人によって異なる。人口減少をイメージした場合、日本では2016年に人口減少が始まったが、韓国では2020年から始まる見通しである。この際には、日本は4年先の韓国の将来の姿、となる。他方、不動産バブルの崩壊をイメージした場合には、日本は30年(あるいはそれ以上)先の韓国の将来の姿、となるだろう。

本日面談したある投資家は、日韓両国の成長モデルが似ている点を指摘していた。両国ともに自動車、電機メーカーは海外市場で販路を拡大させてきたが、共に伸び悩んでいる面がある。電機あるいはITセクターでの日本の退潮は、韓国での同セクターの将来の姿とも映るようだ。

また、国内市場については、日本よりも韓国の方が限られ、そうした中で、今後は日本以上のペースで急速に人口減少が進む。他方、中国経済が失速する、あるいは政治・社会情勢が変調をきたせば、中国経済に対する過度な依存度の高さが、韓国経済の発展の妨げともなってしまう。

南北統一に活路を見出す

このように、内外共に閉塞感が強まる中、韓国経済が再び勢いを取り戻すための成長戦略、いわば秘策の一つとしてこの投資家が指摘したのが、朝鮮半島の南北統一だ。南北統一は、北朝鮮によっては所得水準が急速に高まるきっかけとなる一方、韓国にとっても市場のフロンティアの拡大となる。彼は、民族統一といった理念ではなく、経済的なメリットから南北統一を評価しているのだ。

近い将来に統一が実現する可能性は低いが、いずれは実現する可能性が高い、あるいは実現させなければならない、と指摘していた。勿論、韓国の中でも意見は大きく分かれており、慎重意見も根強くあることを強調していた。

南北統一となれば、北朝鮮の経済を救済するための韓国側のコストは大きくなることは避けられない。しかし、かつてのドイツ統一と比較すれば、コストは小さい、つまり安い買い物である点を彼は強調していた。また、ドイツ統一との違いは、国際社会が統一コストの一部を負担してくれることが期待されること、中国経済といった強い成長のエンジンが、北朝鮮経済の成長を助けてくれること、も指摘していた。そして、南北統一によって、韓国が人口減少という人口動態上の深刻な問題を克服できるのだという。

しかし、南北統一となった場合に、現在の北朝鮮の政治体制はどうなるのか、といった深刻な問題は残されたままだ。また、統一に伴う国民の統合という社会的な問題は克服できるのか。ドイツ統一の後にも、旧西ドイツ市民と旧東ドイツ市民の間の対立は際立ったのである。

韓国の成長戦略としての南北統一は相応にリスクが高い秘策、との印象は拭えない。

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