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7-9月期GDPの大幅上方修正と今後の見通し

2019/12/09

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7-9月期GDP成長率は2次速報で予想外の大幅上方修正

12月9日に内閣府が発表した7-9月期GDP2次速報値で、実質GDP成長率は前期比+0.4%、前期比年率+1.8%と1次速報のそれぞれ同+0.1%、同+0.2%から大幅に上方修正された。事前予想の平均値である前期比年率+0.6%程度も大幅に上回った。プラス成長はこれで4四半期連続となる。

すべての主要需要項目の増加率は上方修正となった(輸入の上方修正は成長率全体を押し下げた)が、特に際立ったのが設備投資だ。前期比+0.9%から同+1.8%へと大幅上方修正となった。軟調な外需にも関わらず、内需の柱の一つである設備投資は、予想外の堅調を維持している。良好な製品需給関係が長期化する中、更新及び能力増強投資が、設備投資全体を牽引していよう。

2019年度成長率は前年度を上回る見通しに

遡及改定により、2018年度の実質GDP成長率は+0.7%から+0.3%へと下方修正されたが、2019年に入ってからの四半期実質GDP成長率は、逆に上方修正となった。2019年10-12月期以降が仮に前期比でゼロ成長であっても、2019年度の実質GDP成長率は+1.2%となる見込みだ。

実際には10-12月期の実質GDP成長率は、消費税率引き上げ前の駆け込みの反動により、大幅マイナス成長となることが避けられない。そのため、2020年1-3月期に成長率が持ち直すとしても、2019年度の実質GDP成長率は+1.2%には達しないだろう。

それでも、潜在成長率である1%弱程度の安定成長ペースには達することが見込まれる。さらに、2018年度の成長率を上回ることになるだろう。

消費税率引き上げの悪影響は比較的短期

10月の個人消費関連指標や鉱工業生産、景気動向指数が予想外に下振れたことを受けて、「消費税率引き上げによる経済への悪影響が予想以上に深刻」との見方も浮上してきている。確かに、9月には日用品を中心に消費税率引き上げ前の駆け込み購入は相応に発生したと見られるが、その反動減は10月が中心であり、比較的短期間にとどまることが予想される。

GDP統計の個人消費と近い動きを見せる日本銀行の消費活動指数に注目すると、2019年9月に前月比+3.6%と大幅に増加した。これは、前回の消費税率引き上げ前の2014年3月の同+4.4%に匹敵する高い増加率だ。この点から、今回の消費税率引き上げの直前には、前回と比べても遜色ない規模で駆け込み購入が生じた可能性が確かに考えられる。

しかし、実質消費活動指数を四半期平均で見ると、2019年7-9期は前期比+0.7%と、前回の消費税率引き上げ直前の2014年1-3月期の同+1.8%を大きく下回っている。今回の駆け込み購入は直前に集中的に生じており、四半期ベースで見ると駆け込み購入の動きは前回よりも相当分小さい。その結果、反動減もより短期で軽微となるだろう。消費税率引き上げ後の経済の持ち直しは、前回と比べてより早めとなりやすい。

海外需要に持ち直しの兆し

予想外の大幅下落となった10月分鉱工業生産統計が示すように、製造業の活動は引き続き弱い動きを続けている。しかし、その先行指標である財輸出には、下げ止まり傾向が見られる。日本銀行が公表している実質財輸出は、7-9月期に前期比+1.8%と大幅に増加した。

さらに足もとの主要な海外経済指標を見ると、11月の中国の製造業景況感は大幅に改善し、景気底打ちの兆しを見せている。また、日本と同様に製造業は調整局面にある米国でも、クリスマス商戦で楽観的な見通しが強まっている。11月雇用統計でも、雇用者増加数は予想を上回る増加となった。さらに、今年春先以降の長期金利の大幅低下は、年末から年明けの時期を中心に、自動車・住宅といった金利変動に敏感なセクターを中心に、米国の家計支出を刺激するだろう。

こうした海外情勢のもとでは、消費税率引き上げなどの国内要因によって、日本経済が本格的な景気後退局面に陥る可能性は高くなく、年明け後には、現在弱さが目立つ製造業も含め、経済全体に緩やかな持ち直し傾向が見られるようになるのではないか。

こうした経済環境を踏まえると、12月5日に政府が閣議決定した事業総額26兆円規模の経済対策は、明らかに過大である。

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