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ECBの12月政策理事会のAccounts-Steady handed

2020/01/20

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はじめに

ECBによる今回(12月)の政策理事会では、海外経済に関する下方リスクが若干低下したことや、実体経済の指標に下げ止まりの兆しがみられたこともあって、メンバーの間には幾分かの安堵感が共有されたようだ。

経済情勢の評価

レーン理事は、執行部の立場から、ユーロ圏経済を取り巻く状況が内外ともに依然として厳しい点を認めつつも、安定化の兆しがみられると総括した。

このうち、海外経済については、貿易摩擦やBrexitに関する不透明性が幾分低下したことに加えて、一部の新興国では財政刺激の効果によって経済成長に安定化の兆しがみられると指摘した。また、2019年第3四半期の輸出も、アジア向けの減速を米国向けの増加が補う状況にあったと説明した。

一方、域内経済のうちで個人消費は、所得の伸びに支えられて堅調さを維持しているほか、住宅投資も、建設業のコンフィデンスなどの点で一部に減速の兆しはあるが、引続き底堅いと評価した。もっとも、設備投資は、鉱工業生産の状況などから見て、短期的にはさらに下押しするリスクがあるほか、域内の貿易が中間財を中心に低調である点も懸念材料として指摘した。

政策理事会メンバーも、レーン理事によるこうした評価に幅広く(broadly)合意した。

つまり、海外経済は、地政学的リスクや貿易摩擦の不透明性、新興国の脆弱性といった要因のため、リスクは依然として下方に傾いているとしたほか、貿易摩擦がグローバルなサプライチェーンを通じてもたらす複雑な影響への懸念などを表明した。もっとも、米国内でのセンチメントの好転が、米中摩擦に関する不透明性の低下を反映していると評価した。

また、域内経済も引き続き低調であるが、最近の指標の一部には好転の兆しもみられるとし、製造業への打撃が域内で本格的に波及する以前に、鉱工業生産に底打ちの兆しがみられる点を歓迎した。もっとも、現在は堅調なサービス業の業況に波及しないか注視する必要も指摘された。

政策理事会メンバーは、こうした議論を総括する形で、これまで繰り返してきた経済見通しの下方修正が今回(12月)は不要になったことを確認するとともに、執行部が新たに示した緩やかな景気回復見通しに対するより強い自信を示した。

物価情勢の評価

レーン理事は、執行部が物価見通しを概ね不変に据え置いた点について、ユーロ相場の軟化や原油価格の反発といった加速要因と、海外経済での低調な物価や域内の物価形成に関する慎重な見方といった減速要因が打ち消しあった結果であると説明した。

その上で、賃金上昇率は、足元でやや減速しつつも長期水準並みの上昇を維持している一方、企業のマージンは2018年よりも若干改善したが依然として低位であると指摘し、賃金上昇圧力が物価に波及しにくい状況が続いていることを示唆した。

政策理事会メンバーも、こうした評価に幅広く(broadly)合意した。つまり、設備稼働率や雇用の強さを背景に、インフレの基調には好転の兆しもみられるが、景気見通しが総じて軟調である下で、企業は賃金上昇を物価に転嫁しにくい点を指摘した。

金融システムの評価

執行部の立場からクーレ理事は、長期金利の反発が限定的に止まった背景について、景気見通しの改善が限定的であることに加え、ECBによる追加緩和が効果を発揮しているとの理解を示した。一方で、(ターム物の)イールドカーブの形状から見る限り、市場では2020年中の利下げ期待が顕著に後退したことを指摘した。

また、レーン理事は、銀行貸出が堅調な拡大を続けている点を指摘するとともに、追加緩和の効果が貸出金利の低下を通じて着実に波及しているとの見方を示した。

政策理事会メンバーも、こうした見方に幅広く(broadly)同意し、金融政策が意図通りの効果を挙げているとの理解を示したほか、長期金利が実質ではなお極めて低位である点を指摘した。一方で、貸出金利や預金金利への影響には国ごとに違いが残る点も認め、法制面の枠組みや資金需要、銀行間の競争状況などの違いが作用しているとの理解を示した。

政策判断

レーン理事は、現時点ではインフレの推移と追加緩和の効果を注視することが適当として、金融政策の現状維持を提案した。同時に、フォワードガイダンスを維持するとともに、必要があればすべての政策手段を発動する用意がある点を強調することの重要性も確認し、緩和的な金融環境の維持に向けて、安定したコミュニケーションが必要と指摘した。

政策理事会メンバーも、幅広く(widely)これに同意した。

なお、金融緩和による金融仲介への副作用について、レーン理事は、銀行が法人向け預金の金利をマイナス方向へシフトさせていると説明したほか、預貸利鞘の低下も銀行債の利回り低下によって補われている点もあると指摘した。さらに、銀行貸出が総じて堅調であるため、グロスの利益力は維持されているとした。

政策理事会メンバーも、こうした議論に沿って、ユーロ圏では政策金利がリバーサルレートにまだ達していないと主張し、銀行は保有債券のキャピタルゲインの実現や貸倒引当金の減少によるメリットを享受できていると指摘した。

その上で、数名(some)のメンバーは、金融緩和が銀行貸出や資産価格、域外向け投資の過熱につながるという意味での副作用のリスクを提起し、状況を注視することの重要性を指摘した。この点に関しては、マクロ・プルーデンス政策が最初の防衛線(first line of defense)であるとの指摘がみられた一方、金融政策の運営面でも配慮が必要との指摘もあった。

なお、当座預金の階層構造の導入についても、政策理事会メンバーは、銀行の負担を軽減しただけでなく、クロスボーダーを含む裁定取引を促進する効果を発揮したと評価した。もっとも、促進された裁定取引の殆どは有担物に止まり、無担物の大半は依然として国内取引に占められているとの指摘もみられ、この点はクーレ理事も同様な理解を示した。

執筆者情報

  • 井上 哲也

    金融イノベーション研究部

    主席研究員

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