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新型肺炎でGAFAがフェイクニュース対策

2020/02/04

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人々を誤った新型肺炎対策に誘導するフェイクニュース

新型コロナウイルスの感染者が世界的に急増を続ける中、同ウイルスや新型肺炎に関する誤った情報、いわゆるフェイクニュースも蔓延している。それらは、新型肺炎に対する誤った対応を人々に促すことで混乱を加速させ、また、必要以上に個人の活動を過度に制約することで、経済への打撃を増幅してしまう。これは、決して看過できない問題である。

SNSを通じて、新型肺炎関連のフェイクニュースは世界中に多数広まっているが、日本における代表的なフェイクニュースは、ツイッターで拡散した「関西空港から入国した発熱やせきの症状がある中国人観光客が、検疫検査を振り切って逃げた」との投稿や、「感染拡大の影響で東京五輪中止」といった投稿などである。

そうしたなか、フェイスブックやグーグル、ツイッターといった米プラットフォーマーは、ソーシャルメディアで虚偽の情報が拡散するのを防ぐ取り組みを次々と打ち出している(以下共同通信などによる)。

フェイスブックは、新型コロナウイルスの治療法や予防法について、誤った情報を流す投稿を削除する措置を講じた。また傘下の写真共有アプリであるインスタグラムでは、デマを拡散するために使われるハッシュタグをブロックまたは制限する。さらに、虚偽と判断される新型ウイルス関連の内容を共有しているユーザーに対しては、警告を発するという。

ツイッターは、ユーザーが新型コロナウイルス関連の用語を検索すると、各国の保健当局の情報が表示されるように設定した。また検索の際に、信頼できない情報に誘導される用語は、検索の予測候補に表示されないようにするという。

グーグルも、新型コロナウイルス関連の用語を検索すると、世界保健機関(WHO)による安全情報などが、検索結果の上位に表示されるように設定するとしている。動画投稿サイトのユーチューブでは、専門家や報道機関の動画を表示されやすくする措置を講じた。

各国政府もフェイクニュースの取り締まりに動く

中国のプラットフォーマーのテンセントも、ユーザーが10億人を超える「微信(ウィーチャット)」で、新型肺炎に関する情報の真偽を確認できる特設サイトを設けている。

さらに、各国政府による新型肺炎に関するフェイクニュースの取り締まりも進められている。国内で感染者が確認されたシンガポールでは、SNS上での偽情報の投稿に対して、昨年成立したフェイクニュースの拡散を禁じる法律を適用して、SNSの運営会社に誤った情報だと認めるように命令した。

マレーシアでもSNSで、刑務所に収監されていた男が新型のコロナウイルスに感染して死亡したとの偽情報が出回ったが、現地の保健相が虚偽の情報だという声明を発表している。

台湾でもSNSなどに誤った情報が出回り、当局が注意を呼びかけている。台湾では、感染症をめぐってデマや誤った情報を拡散した人々に損害を与えた場合、日本円で最大1,000万円余りの罰金が科される。

「有益な情報」発信の重要性

SNSを運営するプラットフォーマーや各国政府によるこうした取り組みは、フェイクニュースの拡散に一定程度の歯止めとなるだろうが、終息させることはできない。フェイクニュースが広がる背景には、新型肺炎の蔓延に強い不安をいだく人々が情報に飢えており、また、公的機関によって示される情報が十分でないと感じていることなどがあるだろう。また、公的機関が情報を隠しているのではないかとの疑念もある。

当局は極力正確な情報の発信を心掛けるが、それと人々が本当に知りたい情報との間に乖離も生じているのではないか。例えば感染者数は、厳格な検査を通じて医師が確認できた数字のみを公表しているが、感染していても症状が軽く、検査を受けていない潜在的な感染者は相当数に上る可能性もある。そうした症状がない、あるいは軽い感染者が、気が付かないうちに感染を広げてしまう可能性もある。

この場合、正確には分からないとはいえ、症状に関わらず感染している人の数の予測を公的機関が推計レンジなどで示す方が、人々が感染リスクを減らすためにより適切な方策を講じることを助ける面もあるかもしれない。

当局が情報の正確さに強くこだわり情報発信全体に慎重となる場合、確かにそれは「正確な情報」ではあるものの、人々が行動をとるのに「有益な情報」とは必ずしもならない可能性があるのではないか。

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