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日本での新型肺炎の拡大が円売りを招いているのか

2020/02/21

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円安の背景は日本銀行の追加緩和期待ではない

足もとの為替市場では、円安ドル高がにわかに進み、1ドル112円台と昨年4月以来10か月ぶりの水準となっている。

国内では新型肺炎の拡大が続くなか、先行きの景気動向に対する慎重論が徐々に強まっている。また世界的にも、新型肺炎の影響でアジア地域の経済が悪化し、それが世界に波及していくことも警戒されている。

このように景気情勢に対して悲観論が高まるなど、金融市場でリスクが意識される、いわゆるリスクオフの局面では、円安が進行するのが通例であった。この経験則に照らすと、足もとでの円安進行は不可解な動きと映る。しかし、こうした動きが為替市場の構造変化を反映したもの、と考えるのは早計だろう。

円安進行の背景には、3月の金融政策決定会合で日本銀行が政策金利の引下げを行うとの観測が浮上しているから、と指摘する向きもある。しかし、そうした期待の高まりは、金融市場には明確には見られない。政策金利の先行きに関する市場の期待を反映する翌日物金利スワップ(OIS)を見る限り、近い将来の利下げ期待が強まっているようには見えない。

日本銀行の金融政策は実際には、為替動向に大きく振られると考えられる。現在の為替の水準の下では、金融政策は維持される可能性が高いだろう。

他方で、米国のFF(フェデラルファンズ)金利先物では、新型肺炎の拡大を受けて追加緩和期待が明確に強まった状態が続いている。日米の短期金利差の観点からは、むしろ円高ドル安が進んでもおかしくない状況である。

海外投資家による円売りの可能性

リスクオンの局面で円安が進み、リスクオフの局面では円高が進む、その背景については様々な解釈がなされているが、日本の金融機関の海外投資姿勢の変化で説明するのが、最も妥当ではないかと思われる。

日本の金融機関は国内、国外に関わらず何らかのリスク要因が高まる場合には、リスク回避を狙って為替リスクのある海外資産、特にドル資産を国内の安全資産へと移す傾向を強める。その結果、リスクオフの局面では円高ドル安となりやすい。逆にリスクオンの局面では、日本の金融機関のリスク許容度が高まり、海外資産、特にドル資産の保有を増やすため、資金流出から円安ドル高が生じやすい。

政府は足もとで生じているのは円安ではなくドル高、と説明しているが、実際には、円が売られているという側面が強いのではないか。そして円を売っているのは、海外の投資家と考えられる。通常は、日本の金融機関の海外投資姿勢の変化が、円ドルレートに大きな影響を与えるが、現在は海外の投資家が円資産を引き上げていることが、例外的に、為替市場に大きな影響力を発揮しているのではないか。

新型肺炎対策での日本の対応への不信感を反映か

海外投資家が積極的に円を売る背景として考えられるのは、日本での新型肺炎対策、あるいは新型肺炎による経済悪化などへの警戒である。こうした警戒は、日本の金融機関も抱いているとはいえ、その程度は海外の投資家の方がより強いのではないか。こうした温度差があるがゆえに、リスクオフの局面で例外的に円安に振れている面があるとも考えられる。

海外投資家の間で、日本悲観論が強まる大きなきっかけとなったのは、クルーズ船における新型肺炎に対する日本側の対応である。海外からは、日本の政策対応が不適切であったことが、クルーズ船上での新型肺炎の拡大を許してしまったとの批判も出ている。

こうした海外での見方には、正しい部分と誤った部分が混在していると見られるが、日本の対応が適切でない結果として、国内における新型肺炎の拡大を許してしまう、そしてそれが、日本が中国に次ぐ新型肺炎の蔓延地となり、経済活動も著しく悪化させてしまう、との見方が海外では広がっているのではないか。

こうして考えると、足もとで進行する不可解な円安は、海外から見た日本の新型肺炎対策への不信感の表れ、という側面があるだろう。ただし、こうした見方は実際には悲観的過ぎであり、このまま円安が進行し続けると考えるのは妥当ではないだろう。リスクオフの円高という経験則が崩れてしまった訳ではない。

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