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遅れる外国介護人材の確保

2020/02/28

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外国介護人材受け入れの取り組み

介護分野での深刻な人手不足への対応として、介護サービスの生産性向上の取り組みがなされているが(当コラム、「介護分野の深刻な人手不足にどう対応するか」、2020年2月27日)、それ以外に、以前より外国人人材の活用が叫ばれてきた。外国人介護人材について政府は、今まで4つのチャネルを通じて、その受け入れを進めてきた。

第1は、2国間経済連携協定(EPA)に基づいて、2008年度からインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国から、介護福祉候補者を受け入れている。2019年度時点でその数は累計で5,063人となっている。

第2は、介護福祉資格を取得した留学生の受け入れである。これは2016年11月の入管法改正によって可能となった。2019年6月時点で、その数は499人である。

第3は、2016年11月に実施された、技術実習制度への介護職種の追加(2017年)である。その数は累計で7,695人である。

第4は、介護分野における特定技能の在留資格に基づく受け入れである。これは、2018年12月の入管法改正によって、介護分野も含む在留資格「特定技能」が新たに創設されたことで可能となった。2019年12月時点で、その数は19人である。

外国介護人材受け入れ拡大が急務

2022年からは団塊の世代が75歳以上になり始め、また2040年には団塊ジュニアが65歳以上の前期高齢者となるなど、急速に進む高齢化を背景にした介護ニーズの高まりに、介護職員の増加が追い付いていないのが現状だ。先行きは、介護職員不足がより強まる可能性がある。

既に議論した介護サービスの効率化だけでは、介護職員不足を解消するのは到底無理なのではないか。処遇改善加算のさらなる拡大を通じて、賃金水準を引き上げ、国内で人材確保に努めることは重要である。それに加えて、外国介護人材受け入れ拡大もますます急務となってきた。

既に見た4つのチャネルを通じて確保された外国人介護人材を単純に合計すると、1万3,276人となる。これは、2017年度の介護職員総数195万人と比べると、わずか0.7%にとどまる。さらに、外国人介護人材の数字には累計値も含まれる、つまり、既に帰国した者も含まれているのである。この点から、外国人介護職員の比率は、実際にはさらに小さいはずだ。

特定技能制度での受け入れが進まない

外国人介護人材確保で特にこの先期待されるのが、昨年4月に新設された外国人在留資格「特定技能」を通じた受け入れである。しかし既に見たように、2019年12月時点でその数はわずか19人と、今のところ期待外れとなっている。

受け入れが進んでいないのは、介護分野に限らない。特定技能制度を通じた外国人労働者の受け入れ全体が、進んでいないのである。

この特定技能制度は、少子高齢化や人口減少に伴う人手不足に対応するため、政府が昨年4月1日施行の改正入管難民法で新設した、外国人の新たな在留資格のことだ。介護や建設、農業など14業種が対象となっている。特定技能の在留資格が与えられるのは、海外での試験合格者、日本で3年間の技能実習を修了して特定技能に切り替えた外国人、日本での試験に合格した外国人、の3つのケースである。出入国在留管理庁によると、特定技能で日本に在留する外国人は2019年末時点で1,621人だが、そのうち9割超が技能実習からの切り替えだった。

一方、日本経済新聞の集計では、海外での試験で2月中旬までに合格が判明したのは2,400人強である。こうした外国人は今後、特定技能の在留資格を得ていくことになるが、それを考慮しても、4万7,550人としていた政府の2019年度の受け入れ見通し数を、大幅に下回ることは必至だ。

特定技能制度の準備不足は否めない

介護分野では2019年4月のフィリピンに続いてカンボジア、インドネシア、ネパール、モンゴルでも試験が実施され、約3千人が受験した。合格者のうち85%をフィリピンが占めている。

昨年4月に資格試験が始まったフィリピンでは、日本側の受け入れ機関の審査方法や雇用契約書の内容を定めるのに手間取り、12月にようやく受け入れ機関の審査手続きを始められたという。試験に合格したフィリピン人も、ビザ(査証)発給までに数か月かかるため、訪日は少なくとも今春以降となる。

多くの人材が期待できる中国とベトナムでは、この資格試験は未だ始まってもいない。ベトナムでは、送り出し機関が得られる仲介手数料の上限額など、制度の運用を巡るベトナム側のルール作りが遅れていることが背景にあるという。

送り出し国との調整を十分に行う前に、政府が見切り発車で特定技能制度を始めたことのいわばつけが、外国人人材の受入れの遅れという形で今回ってきている面があることは否めない。

問題を抱える技能実習制度を長らく放置したつけも

従来、外国人人材の受け入れの中心は、技能実習制度を通じたものであった。しかしこの制度の下では、高額な手数料をとる悪質な仲介ブローカーの存在、不当な低賃金労働、技能実習生の失踪など、多くの問題が生じた。政府は、こうした多くの問題を抱える技能実習生を、特定技能の外国人労働者へと移行させていくことを狙っている。そもそも、それこそが特定技能制度創設の大きな目的であったと考えられる。

しかし、技能実習制度の様々な問題を踏まえてかなり厳格な制度設計としていることが、特定技能の外国人労働者受け入れを遅らせている面があるだろう。これには、政府が、多くの問題を抱える技能実習制度を長らく放置してきたことのつけが回ってきた、という側面もあるのではないか。

他方、介護事業者側にも、特定技能制度の下での外国人人材を受け入れることにためらう部分もある。例えば、受入れに必要な書類が非常に膨大であり、事務コストが高いことなどが制約となっている。また、特定技能制度の下では賃金水準は日本人と同水準となるため、2017年から介護分野で解禁された技能実習生と比べて、人件費がかなり高くなってしまう。

さらに、技能実習生とは異なり、特定技能制度の下では転職が可能となるため、外国人人材を確保しても、転職されてしまうリスクがある。

さらなる制度の見直しも必要に

介護分野での深刻な人手不足への対応策としては、生産性向上の取り組みは重要であるが、それだけでは今後一段と強まる介護職員の不足を緩和、解消するには力不足である。処遇改善などを通じた国内人材の確保に加えて、やはり外国人人材の確保は不可欠だ。その受け皿となるのは、新たに創設された特定技能制度である。

同制度はやや拙速に始められたこともあり、ここにきて制度上の問題点も浮き彫りになっている。随時制度を柔軟に見直し、外国人人材の確保に努めることが政府に求められるだろう。

特定技能制度のもとで外国人労働者の受け入れが進まない現状を受けて、出入国在留管理庁は1月末に、国内試験の受験資格を見直し、何らかの在留資格を取得すれば受験を認めることを決めた。現行は、日本に中長期(3か月超)の滞在経験があることなどが必要条件だったが、これを緩和することで受験者を増やすことを狙うものだ。

こうした制度の見直し、規制緩和を進めていくことで、一時的ではない構造的な人材不足に見舞われる介護分野等での深刻な人手不足への対応を、この先しっかりと進めていくことが極めて重要となる。

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