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首都東京の経済を直撃した新型コロナウイルス

2020/03/10

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飲食関連を中心に企業の景況感は大幅に悪化

新型コロナウイルスの経済への影響は、徐々に経済指標で確認できるようになってきた。その一つが、内閣府が3月9日に発表した「景気ウォッチャー調査(2月調査)」だ。調査期間は2月25日から29日であるから、政府が2月26日にスポーツやコンサートなどイベントの自粛を要請したことの影響も、相当程度はこの調査結果に反映されているはずだ。

今回の調査結果は、消費関連を中心に、企業の景況感が急速に悪化したことを示している。しかし、総じて想定の範囲内だったとも言えるのではないか。

景気の現状判断DI(季節調整値)は合計で、前月差-14.5の大幅悪化となった。これは、2014年4月の前々回の消費税率引き上げ時の同-15.6(前回2019年10月は同-9.7)に近い下落幅だった。他方、2011年3月の東日本大震災の際の同-25.1と比べれば小さめだ。ただし、現状判断DIは3月あるいはそれ以降まで続くと見られ、東日本大震災後よりも調整が長引きそうだ。

同DIを分野ごとに見ると、レストランなど飲食関連分野のDIが前月差-23.8と最大の下落となった。日本の消費者の外出自粛の影響と、インバウンド需要の悪化の影響が重なったものだ。先行き判断DIについても、飲食関連のDIの下落幅が最大となっている。

飲食関連分野の次に下落幅が大きいのは、サービス関連分野の同-17.0だ。ここには観光業、宿泊業、アミューズメント関連などが含まれ、やはり国内消費者の自粛とインバウンド需要の悪化の影響を受けている。

東京都で企業景況感の悪化が最大に

現状判断DI(季節調整値)を地域別に見ると、東京都が前月差-21.7と最大の落ち込みだ。さらに、前回1月調査時点での先行き判断DI、つまり1か月ほど前に想定されていた先行きの景況感との比較で計算しても、最も悪化したのは、この東京都である。

1月調査の先行き判断DIで最も悪化していたのは、北海道、2番目が沖縄だった。ところが、1月調査の先行き判断DIとの比較で、最も悪化幅が小さかった地域はこの北海道であり、また沖縄も小さめだった。

1月調査と2月調査の間の1か月間で、日本経済に悪影響をもたらす原因は、インバウンド需要の落ち込みから、国内消費者の自粛行動へとその比重が移った。それとともに、経済活動への打撃は、外国人観光客が多く訪れる地方から、大都市、特に東京へと、その地理的な比重を移したのである。

東京都の現状判断DI(季節調整値)の下落幅は、東日本大震災時の2011年3月の前月差-36.6以来となった。ただし当時はDIの下落は1か月にとどまったが、今回はなお下落が続く見通しであり、下落幅の合計では東日本大震災時を上回る可能性があるだろう。

新型コロナウイルスは、首都東京の経済活動に、まさに未曽有の大打撃を与えているのである。

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