フリーワード検索


タグ検索

  • 注目キーワード
    業種
    目的・課題
    専門家
    国・地域

NRI トップ ナレッジ・インサイト コラム コラム一覧 新型コロナ緊急対策第2弾の評価

新型コロナ緊急対策第2弾の評価

2020/03/10

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

緊急対策第1弾から環境は大きく変化

政府は3月10日に、新型コロナ緊急対策を閣議決定する。政府は2月13日にも緊急対策を閣議決定したが、今回の措置はその第2弾に相当するものだ。この間わずか1か月弱のうちに、日本経済あるいは企業経営を取り巻く環境は大きく変わっている。

第1弾では、新型コロナの感染拡大阻止のための施策に大半の資金が振り向けられる一方、企業への支援策としては、インバウンド需要の落ち込みの影響を大きく受ける観光業に対して、日本政策金融公庫等による緊急貸付・保証枠5,000億円の設定がなされた。

しかしこの後、政府は2月26日にスポーツやコンサートなどイベントの自粛を要請し、さらに27日には、全国一律に小中学校および高等学校の休校を要請している。これらの要請によって、多くの企業が国内消費者の自粛行動の悪影響を新たに受け、また臨時休校の影響から、多くの親が勤務を続けられなくなることで収入減となり、また企業は働き手を失っている。

それに加えて、新型コロナの感染拡大を受けた円高、株安の進行は、それ自体が先行きの日本経済や、大企業も含めた多くの企業の経営環境を損ねる可能性もある。

このように、緊急対策第1弾以降の大きな環境変化に的確に対応する緊急対策第2弾となったかどうかが、その評価のポイントである。対策は、ミクロ(企業)対策とマクロ(経済)対策、中小企業対策と大企業対策、インバウンド需要減少への対策と、消費自粛や臨時休校への対策といった形で、求められる政策は非常に多岐にわたっているのが現状だ。

企業への資金繰り支援策が大幅に拡充

緊急対策第2弾では、企業への資金繰り支援策が大幅に拡充される。中小企業を対象に日本政策金融公庫による実質無利子、無担保で融資する5千億円超の特別貸付枠が新たに創設される。

新型コロナの影響で売上高が5%以上減少した中小企業・小規模事業者やフリーランスなど個人事業主は、業種に限らず、今後最大で3年間、金利が0%台で融資を受けられるようにする。合わせて特別利子補給制度も設けられ、売上高が中小企業で20%減、小規模事業者で同15%減となった事業者への融資は事実上、無利子とする。その原資は財政資金だ。こうした金融支援の総枠は1.6兆円となり、第1弾と比べて3倍以上に拡充される。

こうした金融支援策は、中小・零細企業、個人事業者の破綻を回避することを狙った、セーフティーネット策である。企業の資金繰りが急激に悪化するもとでは、返済猶予、借り換え(肩代わり融資)、新規の借入れなどが企業の破綻を回避する。日本政策金融公庫の特別貸付枠が、そうした役割を一定程度果たすことになるのだろう。

入国規制や自粛要請の緩和・解除のタイミング

しかしそれらの特別融資が、民間銀行の企業向け融資を肩代わりする形で進められるのであれば、民業圧迫となり、民間銀行の経営悪化にもつながりかねない点には十分な注意が必要だろう。金融支援は最大3年続けられるというが、それでは、民間銀行の業務圧迫が長期化し、また対象となる企業が同制度に過度に依存する、いわゆるモラルハザードのリスクも生じてしまうのではないか。

民間銀行が、既存の融資条件の見直し、追加融資で対応できる場合には、それを優先させる仕組みは必要となるのではないか。そして、緊急対策は、新型コロナの影響でまさに足もとで生じている危機への有効かつ短期的な対応策であるべきだろう。

さらに、企業経営を圧迫しているのは、政府による入国規制や自粛要請の結果である。企業は、いわば官製不況の犠牲となっている。それらの施策は、新型コロナウイルスの拡大を防ぐためには必要な施策ではあることは確かだが、不必要に長く続けることは企業経営や経済活動に与える悪影響の観点から、当然ながら妥当ではない。

企業が本当に望んでいるのは、緊急対策に盛り込まれた無利子融資ではなく、1日でも早く顧客が戻ってくることだ。そのためには、緊急対策を実施すると同時に、政府は、入国規制や自粛要請といった施策を段階的に緩和あるいは解除できるタイミングを、しっかりと見定めていくことが求められる。

執筆者情報

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

新着コンテンツ