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従来から日本銀行の国債買入れに制限はない

2020/04/24

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欧米とは異なる日本の国債買入れ策の枠組み

新型コロナウイルイス対策のため、当初の2日間の開催予定を4月27日の1日へと短縮して開かれる日本銀行の金融政策決定会合では、CP、社債の買入れ増額を実施する、との報道が多くみられる。

また、4月24日付の日本経済新聞は、長期国債の買入れオペで、現在80兆円としている年間買入れ増加ペースのめどを撤廃して、「無制限」とする可能性を報じている。実際に、こうした資産買入れの拡大が、追加緩和措置として決定される可能性は高いのだろう。

ところで、国債買入れ目標額を撤廃し、買入れ額を無制限とする措置は、既に米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が実施している。しかし、国債買入れに明確な目標額を設定し、それを政策目標(操作目標)と位置付けてきたFRB、ECBと日本銀行の国債買入れ策の枠組みは、そもそも異なる。

長期国債買入れを無制限とすることに実質的な意味はない

日本銀行は、2016年9月に長期国債の利回りを新たに操作目標とする、イールドカーブ・コントロールの枠組みを導入した。その際に、国債買入れ目標は撤廃している。「年間80兆円のめど」は示されたが、そのもとで最近までは年間10兆円台程度まで長期国債の買入れ増加額は大幅に縮小されてきたのである。この80兆円のめどは有名無実であり、目標の役割は全く果たしてこなかったことは明らかだ。

従って、今回の会合で「年間80兆円のめど」を撤廃しても、政策変更の意味合いはないのである。前回3月の会合で、国債買入れについても「一層潤沢な資金供給」を実施する方針が既に示されている。実質的には、その方針を再確認することにとどまる。

また、国債買入れ増加ペースを高めても、年間80兆円のペースを超える可能性は、現状ではかなり低いだろう。長期国債の買入れ策がもたらす、様々な副作用、弊害について、日本銀行は十分に認識しているからである。

日本銀行は、国債買入れを無制限で行うと敢えて表明することで、欧米に続いて大胆な措置を打ち出した、と対外的に強くアピールしたいだけだろう。

変質した国債買入れ策の狙い

銀行は、手持ちの円の流動性は既に十分に確保しているが、保有する国債を売却し、売却益を得るなどの場を提供する日本銀行の長期国債オペを、積極的に利用してきた。そのため、日本銀行にとってこの国債買入れ策は、取引先の銀行の当座預金の額を増やす、流動性供給を拡大するための安定した手段となっているのである。

2013年に導入された量的・質的金融緩和策の下では、国債買入れの拡大と、その結果としてのマネタリーベースの拡大は、2%の物価安定目標を達成するためのマクロ金融政策と位置付けられた。しかし、現在の買入れ増加ペースの拡大は、金融システムの安定・維持を目的とするプルーデンス政策の性格が強い。

日本銀行の政策の中心は、物価安定を狙ったマクロ金融政策から、金融システムの安定・維持を目的とするプルーデンス政策へと、既に、歴史的な転換を遂げていると考えられる(当コラム、「日本銀行の政策の軸足は物価安定から金融システム安定へ」、2020年4月21日、「形骸化が加速する物価目標と日本銀行の新たな責務」、2020年4月22日)。

企業金融支援の拡充も選択肢に

様々な格付けと残存期間の銘柄をまとめて買入れる日本銀行のCP、社債の買入れオペは、以前より市場をかなり歪めてきた。オペの増額によって利回りが一段と下がれば、発行条件を改善させることで、企業の資金調達を助けることになる。しかし、その余地は既にかなり限られているのではないか。

また、CP、社債が発行できるのは比較的規模が大きい企業に限られることから、現在、新型コロナウイルス問題で最も大きな打撃を受けている中小・零細企業の資金繰りを助ける効果は大きくない。この点、CP、社債を買い入れることで、企業の資金調達を助け、またそれらに投資する投資ファンドなどノンバンクの経営安定を狙う米国とは、環境が大きく異なるのである。

間接金融が主体の日本では、企業の資金繰りを助けるためには、銀行が企業向けの貸出を拡大させやすい環境を作ることが、中央銀行の役割だ。この点に照らすと、今回の決定会合で追加緩和策を実施するのであれば、3月に導入した「新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペレーション」をさらに強化することの方がより自然だろう(当コラム、「形骸化が加速する物価目標と日本銀行の新たな責務」、2020年4月22日)。

今回の会合では、資産買入れの拡大とともに、こうした企業金融支援の拡充策も併せて検討されるかもしれない。あるいは、それは将来の追加策として、温存されるのだろうか。

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