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バブル崩壊後以来の長期景気後退を示唆する景気動向指数

2020/05/13

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一致指数は2018年10月以降下落トレンドを続ける

内閣府は5月12日、3月分景気動向指数を公表した。先行指数(CI)は前月差8.1ポイント、一致指数(CI)は前月差4.9ポイントと、それぞれ大幅な下落となった。一致指数の悪化の程度は、東日本大震災が起きた2011年3月以来、9年振りの大きさだった。

2008年のリーマンショック時との比較で見ると、今回の一致指数の悪化は驚くほどではないが、問題は、一致指数の採用系列の動きから後に判断される景気後退の期間は、当時と比べてかなり長くなることが予想されるという点だ。

振れの大きい一致指数のトレンドを示す7か月後方移動平均値は、3月で17か月連続での下落となった。一致指数の7か月後方移動平均値がピークを付けたのは、2018年10月だった。これは、中国や欧州を中心に世界経済が減速を始め、日本の輸出が鈍化し始めたタイミングだ。

3つの要因が重なり20か月超の景気後退期間か

また2019年10月には、消費増税率引き上げ前の駆け込み購入の反動が生じた。さらに、今年の年明け以降は、新型コロナウイルス問題の影響で、内外経済は急激な悪化に見舞われたのである。これら3つの要因が重なったことで、今回は、比較的長い景気後退となる可能性が高まっている。

ところで、景気一致指数は、鉱工業生産の動きに大きく左右される傾向がある。今年4-6月期の鉱工業生産は、大幅なマイナスとなる可能性が高い。また、国内での消費抑制の影響は徐々に薄れていくものの、輸出の悪化継続や在庫調整のための生産抑制の影響が残ること等から、7-9月期の鉱工業生産も小幅なマイナスになる可能性がある。

仮に、今年8月まで一致指数が下落トレンドを続け、一致指数の7か月後方移動平均値がピークを付けた2018年10月から2020年8月まで景気後退期間と後に判定される場合には、その期間は22か月に達する。

バブル崩壊以来の長期景気後退は企業や雇用に大きな打撃

リーマンショック後の景気後退期間は、13か月であった。景気後退期間が今回仮に22か月となれば、1991年2月から1993年10月までの32か月以来、即ちバブル崩壊後以来の長さとなる。

戦後の景気後退期間の平均は15.3か月であるから、今回はそれよりも長いことになる。さらに近年は、景気拡張期が長くなる一方、景気後退期が短くなる傾向が明らかに強まっていたことから、それを踏まえると、これは例外的な長期景気後退と言えるだろう。

景気の調整期間が長くなればなるほど、持ちこたえられなくなった企業の倒産や廃業は増える。それは、失業者の増加など雇用情勢の悪化にもつながりやすい。さらに、不動産市況の下落などによっても助長された銀行の不良債権問題の深刻化などにもつながるだろう。

景気の落ち込みの程度で見ても、今回のコロナショックはリーマンショックをかなり上回る可能性が高いが、景気後退の長さで見た場合には、その悪化の程度はより際立つことになる。この点からも、コロナショックが日本の経済や社会の安定を脅かすリスクの大きさが伺い知れよう。

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