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首相の後任選びに向けた動きが一気に進む

2020/08/31

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14日に自民党総裁選実施の方向

先週末の安倍首相の辞任表明を受けて、週明け後に、後継者選びに向けた動きが一気に進んでいる。総裁選の方式や日程については、9月1日の自民党総務会で正式に決まるが、14日午後に東京都内のホテルで実施されることが固まったとの報道がなされている。自民党新総裁の選出を受けて、17日にも召集される臨時国会の冒頭で新しい総理大臣が指名される見通しとなってきた。

総裁選出の方式については、政治空白を作らないためとして、党員・党友による投票を省略して、両院議員総会を開いて総裁を選出する方向で、党執行部は調整している。9月1日の自民党総務会で正式に決まるとみられる。

自民党の党則によると、総裁が任期中に欠けた場合でも、党員・党友による投票を実施するのが原則だが、「特に緊急を要するとき」には、党大会に代わる両院議員総会で後任の総裁を選出できると規定されている。その場合には、地方の党員・党友票の比率が下がり、国会議員票の比重が高まる。

菅官房長官の流れが徐々に形成

日本経済新聞が8月31日に公表した世論調査の結果によると、「次の首相にふさわしい人」で首位は石破元幹事長の28%、それに続くのが河野防衛相の15%、小泉環境相の14%、菅官房長官の11%、岸田政調会長の6%、となっている。国民の人気では石破元幹事長が群を抜いているが、両院議員総会のよる選出方式が決まると劣勢に立たされる、との見方が多い。その場合には、派閥間での事前の調整で投票結果が決まる傾向が強まるからだ。

無派閥議員有志は、同じく無派閥の菅官房長官に立候補を要請している。既に二階派は菅官房長官支持を表明している。一部の報道では、麻生派も菅官房長官支持を固めたという。

菅官房長官は9月1日に正式に次期総裁に立候補する見通しだ。大派閥で安倍首相が属する細田派の行方などまだ不確定要素はあるが、現時点では、菅官房長官が新総裁そして新首相に選出される流れが徐々に形作られつつあるように見える。もちろんまだ確定ではない。

政治空白を回避し政策の継続性を重視

国民の人気では他の候補に劣っている菅官房長官が新首相に選出される流れが形作られつつあるのは、突然の安倍首相の辞任表明を受けて、政治空白が生じないようにする、との配慮が自民党内にあるためだろう。安倍首相を2012年12月の第二次安倍政権発足時から長らく支えてきた菅官房長官であれば、政策の継続性は保たれ、コロナショックという国難の時期に、政治的な混乱が避けられる、との判断があるのだろう。

加えて、無派閥の菅官房長官であれば、派閥間の妥協が成立しやすいという事情もあるだろう。さらに、安倍首相の総裁の任期が切れる2021年9月、つまり1年後には再び総裁選が実施されるため、菅官房長官は短期の中継ぎとしては適任、との判断もあるのではないか。

平成以降では初めてのケース

平成以降の官房長官経験者で首相になったのは、小渕恵三氏、安倍晋三氏、福田康夫氏の3名だ。ただし、小渕氏、福田氏は、首相の直前に官房長官であった訳ではない。官房長官から首相に横滑りしたのは、現在の安倍首相だけである。しかし第一次安倍首相は、小泉首相の政策を継承したとは言えない。

仮に、菅官房長官が首相となる場合には、安倍政権の政策を継承することが自民党内では広く期待されると見られ、また自身もそれを強調する可能性が高い。前政権を支えた官房長官が首相となり、かつ前政権の政策の継承を強く掲げるのは、平成以降では初めてのケースとなる。

経済政策の転換を検討して欲しいが。。。

この機会に、安倍政権の経済政策の問題点を検証し、財政の健全化方針を再確認した上で、経済効率、生産性向上を優先するサプライサイド政策へと大きく転換して欲しいと筆者は考えている(コラム「歴史的長期政権はコロナショックを機に経済政策の大幅転換を」、2020年8月19日)。しかし、その実現は少なくとも直ぐには難しいかもしれない。二階派の影響力が高まることで、財政拡張路線がより強まる可能性がある点も懸念されるところだ。

ただし、金融市場、特に株式市場は、菅新政権の下で安倍政権の経済政策が継続されていくことを好意的に受け止める傾向が強い。市場の力が政策を変えるのではなく、市場が政策の継続を後押しする構図となりそうだ。

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