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拡大されるまん延防止措置の経済損失

2021/04/09

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1週間でまん延防止措置の適用対象を拡大

4月9日朝に政府は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に準じた対策が可能となる「まん延防止等重点措置(まん延防止措置)」を、来週12日から東京都と京都府、沖縄県に適用する案を、専門家でつくる基本的対処方針分科会に示した。同日夜に対策本部を開いて、正式に決定する。

改正新型インフルエンザ対策特別措置法で新設されたまん延防止措置は、今月5日から大阪と兵庫、宮城の3府県に初めて適用された(コラム「初めて適用される『まん防』による経済損失試算」、2021年4月1日)。それからわずか1週間で、対象区域が拡大されることになる。

まん延防止措置が新たに適用されるのは、東京都23区、武蔵野市、立川市、八王子市、町田市、調布市、府中市の6市と京都府京都市、沖縄県本島の9市となる。東京都への適用は4月12日から5月11日までの1か月間、京都府、沖縄県への適用は、4月12日から5月5日までの3週間となる。

まん延防止措置が適用されれば、対象となる都道府県知事は、飲食店に時短を命令することができ、それを拒否した場合には20万円以下の過料を科すなど、強い対策をとることができる。実効性の観点からは、まん延防止措置は緊急事態宣言と比べて大きな差はなく、まん延防止措置は実質的には、名を変えた緊急事態宣言と言っても過言ではないだろう。従ってその適用は、対象区域の経済活動に相応の影響を与える。

まん延防止措置の経済損失は合計で5,540億円

時短命令に従わない事業者への過料の金額の違い等に基づき、まん延防止措置による経済損失の規模は、同じ対象区域・期間の緊急事態宣言の3分の2であると仮定し、以下ではその試算を行った。対象区域による経済損失の推定には県民所得統計を用いているが、市の所得は人口統計からの推計である。

それによると、東京都23区・6市でのまん延防止措置適用は、日本全体のGDP(個人消費)を3,650億円減少させる。また、京都府京都市、沖縄県本島9市での適用は、日本全体のGDP(個人消費)を350億円減少させる。先行する関西・東北6都市での1,550億円と合わせると、5,540億円となる。これは、1年間の名目GDPの0.1%に相当し、失業者を2万2千人増加させる計算となる(図表1)。

(図表1)まん延防止措置による経済損失の試算

日本経済に「三番底」の懸念も

この経済損失は、今年1月から3月にかけて実施された緊急事態宣言による経済損失推定額の6.3兆円と比べれば、まだ10分の1以下の規模にとどまる(図表2)。

しかし、今後も感染拡大に歯止めがかからない場合には、まん延防止措置はさらに適用範囲が拡大され、また期間が延長されるだろう。さらに、まん延防止措置が、第3回の緊急事態宣言の発令へとつながっていく可能性も相応にある。その場合には、昨年春、今年年初に続いて、日本経済がいわゆる「三番底」に陥いる可能性も視野に入ってくるのである。

(図表2)緊急事態宣言発令による経済損失の試算

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